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中国は、NATO(北大西洋条約機構)から「要注意国」として名指しの警戒を受けているだけでない。アジア諸国からも同様に「侵略危険国」としてマークされ始めた。よほど国家としての「品格」に欠ける点が嫌気されているのだろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(7月7日付)は、「ベトナム、インドと防衛協定 基地を相互利用 対中警戒」と題する記事を掲載した。

 

南シナ海の領有権を中国と争うベトナムが、インドとの防衛協力を強化する。両国は6月、兵器を含む軍の装備品の補修や補給で軍事基地を相互に利用する協定を結んだ。インド国防省によると、ベトナムが外国とこうした協定を結ぶのは初めて。インドも中国とは係争地を巡り対立する。対中国で利害が一致するベトナムとインドの接近が目立つ。

 


(1)「ベトナムとインドは、包括的戦略パートナーシップを締結済み。2030年までに防衛協力を拡大する共同声明にも署名した。インドが提唱する「インド太平洋海洋イニシアチブ」とベトナムが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)が採択した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」に沿った関係拡大にも取り組んでいく。ベトナムとインドは共通の安全保障上の「脅威」だとみなす中国を警戒する。ベトナムは南シナ海を巡り、同国と対中国で共通の利害を持つ国々が集まる必要があると考えているようだ」

 

ベトナムとインドが、反中国の立場で「共闘関係」を強化している。この両国は、日本とも密接な関係を築いている。

 


(2)「インドは、ヒマラヤの山岳地帯で中国との係争地を抱える。南シナ海ではインド国営の石油天然ガス公社(ONGC)が関連会社を通じて資源採掘を進め、中国の抗議をしばしば受けてきた。中国は南シナ海のほぼ全域で、事実上の主権である「管轄権」の保有を主張している。インドのシン国防相は6月上旬、ベトナムを訪問した。その際、インドの融資で製造された12隻の高速巡視船を引き渡した。インドはベトナムの防衛力強化のため新たに5億ドル(約680億円)の融資枠を提供すると発表した。シン氏は、ベトナムのファン・バン・ザン国防相と会談後、「両国の防衛・安保に関する密接な協力はインド太平洋地域の安定に欠かせない」とツイートした」

 

 

中国とインドは、国境線で長いこと紛争を続けている。2020年6月には両軍の紛争によりインド兵20名が死亡した。これを契機に、インドの中国へ対抗意識が一段と燃え上がっている。ベトナムは、中国に南シナ海の島嶼を占領されている。インドとベトナムは、中国が共通の敵である。

 


(3)「ベトナム国防省の声明によると、同国とインドはシン氏の訪問中、南シナ海における海上や上空飛行の安全確保などが重要だとの認識で一致した。さらに国連海洋法条約を含む国際法に基づく紛争の解決を支持した。インドとベトナムが6月に結んだ後方支援の協定が発効すれば、双方の軍事基地への艦船、航空機、人員の手配が容易になる。食料、燃料、兵器の補給やメンテナンスも可能になる。インドは同様の協定を日本、米国などとも締結済みだ

 

インドとベトナムは、軍事の後方支援の協定を結んだ。インドはすでに、日米と同様の協定を結んでいる。こうして、インド・ベトナム・日本・米国は一つの輪でつながり始めた。

 


(4)「実際に、インドが南シナ海の領有権問題に介入するかどうかは不透明だ。シンガポールのシンクタンクの専門家は「インドが南シナ海の安保の一端を担うことになるのか、この海域をどれほど重視しているのかはわからない」と説明した。インドはモディ首相が就任した14年から、東南アジア諸国への関与に力を入れてきた。インドの大学の専門家によれば、ASEANに加盟するシンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピンと軍事演習を実施してきた。この事実はASEAN諸国にとっても、中国に対抗するうえで重要だが「それだけでは十分でない」と、この専門家は話す」

 

インドは、中国への対抗軸を作るべく、ASEANへ接近している。ASEANは、中国との貿易関係が強まっているが、軍事的な脅威を強く受けている。インドが、そこで「反中」のテコ入れに動いている。