ブリンケン米国務長官と中国の王毅外相は7月9日、G20(20カ国・地域)外相会合に合わせ、訪問中のインドネシア・バリ島で会談した。話合いは、5時間余りにわたって行われた。ブリンケン長官は会談後、ウクライナに侵攻したロシアを支援する中国の姿勢を非難したと発言した。
5時間もの間、ウクライナ問題を巡る中国の姿勢が議題になったわけでない。匿名で語った米国務省高官によると、会談は極めて率直な雰囲気で、双方とも主張を自制することはなかったものの、口調はプロフェッショナルなものだったという。同高官によると、ブリンケン長官は王外相に、米国は対中関係について大部分は競争的と見なしていると語り、競争が意味するものと意味しないものを米側の観点から説明した。
米国が、「対中関係について大部分は競争的と見なしている」と指摘した部分は、中国のウイークポイントを突いたに違いない。中国が、これに対して次のような提案をしたことが分った。
米通信社『ブルームバーグ』(7月11日付)は、「アジア太平洋で米中共存を、中国が『ルール』提案ーバリでの外相会談」と題する記事を掲載した。
中国の王毅外相は週末、インドネシアのバリ島で約5時間にわたりブリンケン米国務長官と会談し、アジア太平洋における米中共存に関する提案を行った。王外相が述べた。
(1)「王外相とブリンケン長官は20カ国・地域(G20)外相会合のためバリ島を訪問。王外相は11日、東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局長にあいさつした際、「アジア太平洋における前向きな交流のルール確立について双方が話し合うことを検討し、開かれた地域主義を共同で支持するべきだと私は米国側に極めて真剣に伝えた」と明らかにし、「中国の提案に対する米国側の見解を楽しみにしている」と話した」
この提案は、数週間以内に開催予定のバイデン・習の両首脳のオンライン会談に合わせたものである。かつて、中国は米国に対して太平洋の分割統治を提案し、米国から即時に拒否された経緯がある。今回も、その類いであろう。
中国が、こういう提案をした背景は、今秋の中国共産党大会前、米中で「休戦」して習氏の国家主席3選を実現したいという野望によるものだ。中国共産党の歴史を見ると、苦境に立った時は一時的に「休戦=妥協」する戦術を取ってきた。蔣介石との内戦時には、「国共合作」なる演出を行なったのだ。今度は、その「米国版」であろう。油断させて、相手の寝首をかく。始皇帝得意の「合従連衡」策である。
NATO(北大西洋条約機構)は、中国を「体制への挑戦」と位置づけ警戒を呼びかけている。中国は、この包囲網を解かせる目的で適当な出任せを言い出したと言える。中国が、世界覇権の野望を簡単に降ろすはずがない。中国経済が、さらに追込まれることが前提になる。
(2)「王外相は、中国が提案した「ルール」について、ASEANの中心性を支え、既存の地域協力の枠組みを支持するとともに、アジア太平洋における互いの正当な権利と利益を尊重するものだと説明。地域に「より多くの公共財」を提供しながら、安定を促進するとしている。王外相は、「中国と米国がアジア太平洋で健全な交流を行うことができれば、前向きなエネルギーを解き放ち、地域の全ての国の期待に応えることに寄与する可能性がある」と主張した」
下線部分は、中国が南シナ海の権益を米国に認めさせようとしている。その、見返りに尖閣諸島の権益を放棄するというバーター取引を出したのであろう。台湾は、「平和的解決」とご託を並べたのか。中国の約束は信用できない。香港の「一国二制度」は2020年に、中国によって一方的に破棄されたからだ。
中国は、クセ玉を米国に投げてその反応を見ているに違いない。米国は、いったん外交方針を決めると右顧左眄しない特質がある。注意深く、中国の意図を見抜く作業を始めていると思われる。


コメント
コメントする