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日米両政府は29日、外務・経済担当閣僚会合(経済版2プラス2)を開いた。ロシアのウクライナ侵攻に伴う混乱や中国に対抗することが狙いだ。萩生田光一経産相は、日米が次世代半導体の共同研究センターを新設することで合意したと発表。これに強く刺激されたのが韓国である。

 

韓国は、米国から「チップ4」(日米台韓)への参加を求められている。回答期限8月末まで。8割方、参加へ気持ちは固まったが、中国の報復を恐れて未だ最終的な決断を先延ばしにしている。だが、ロウエンド(低級品)半導体では、いずれ中国の国産化が進む。韓国からの輸出はそれだけ減る運命だ。韓国は、先を読んで動くべき時期である。

 


『朝鮮日報』(7月30日付)は、「米国の『半導体同盟』に積極的な日本と台湾、時機を逃せば韓国は危機に陥る」と題する社説を掲載した。

 

米国が量子コンピュータなどに使用される最先端の次世代半導体の大量生産に向けた共同研究パートナーに日本を選択した。これを受け日本は年内に次世代半導体開発センターを立ち上げ、今後10年間に1兆円を投資し製造ラインを構築する計画だという。日本の複数のメディアが一斉に報じた。29日に開催された米日経済政策協議会で合意したこのプロジェクトには米国立半導体技術センター(NSTC)も参加する予定だという。

 

(1)「米国は、自国を中心とする半導体サプライチェーン構築に向け韓国、日本、台湾にいわゆる「チップ4」と呼ばれる半導体同盟を呼びかけたが、その中で日本と最初にパートナーシップを結んだのだ。米国中心の半導体サプライチェーン再構築に協力的な日本に対し、米国が先端技術協力でこれに応えたのだ。日本は40年前に米国の圧力で半導体の主導権を韓国などに奪われたが、今度は「チップ4」を半導体産業復活のまたとないチャンスと考え積極的に参加する動きを示している。チップ4に加入する意向を示した台湾も米国の半導体工場に追加で投資を行うと同時に、日本にも半導体工場や研究開発センターを設置するなど米国、日本との三角協力体制構築に向け意欲的に動いている」


日本は年末までに新たな研究機関「次世代半導体製造技術開発センター(仮称)」を立ち上げる。産業技術総合研究所や理化学研究所、東大などと協力して拠点を整えるのだ。米国のNSTCの設備や人材を活用して開発に取り組む。日米が研究するのは幅が2ナノ(ナノは10億分の1)メートル相当の半導体だ。スマートフォンなどに使う10ナノ未満の半導体の生産能力は現在、台湾が世界シェアの9割を占めている。こうなると、韓国は脅威に感じて当然だ。

 

(2)「韓国は、サムスン電子が米国にファウンドリー工場を追加で建設し、SKハイニックスが半導体の研究・開発に向けた共同投資を約束するなど、企業単位では積極的に取り組んでいる。ところが、韓国政府次元では中国の反発を意識し現時点でチップ4への参加表明を行っていない。その間にメモリー分野で世界トップの韓国半導体の技術面での優位を脅かすニュースが相次いで飛び込んできた。米国のマイクロン社が、世界で初めて232層NANDメモリーの大量生産に成功し、中国の半導体メーカーSMICが7ナノ半導体工程を完成したというニュースも報じられた」

 

韓国の半導体は、日本技術の窃取に始まっている。それだけにメモリー半導体では強いが、非メモリー半導体(システム半導体)は弱点である。この部分をいかに補強するかが問われている。いくら、中国を振り向いても解決策は見つかるはずがない。

 


(3)「米国は、半導体の開発・設計分野で圧倒的な技術力を持ち、これによって今なお世界の半導体産業で主導権を握っている。台湾はファウンドリー(半導体受託生産)分野で世界一位、日本は半導体の素材や製造設備の分野で世界トップの競争力を持つ。韓国はこれらの国々と協力せずしては半導体産業の未来を描くことはできない。韓国にとって弱点の半導体設計、システム半導体などの分野は米国と協力して競争力を高め、汎用メモリー半導体は日本との提携を検討することも可能だ

 

下線部は、韓国半導体の弱点を言い当てている。「チップ4」に参加して、この弱点を補強しなければ、韓国経済の未来はないのだ。

 


(4)「韓国政府は、メーカーと深く連携し国として半導体戦略を取りまとめねばならない。半導体輸出先の60%を占める中国(香港を含む)の報復を受けないよう、さまざまなルートを通じて中国と共存する落としどころを見いだすことも政府が取り組むべき課題だ。慎重を期すべきだが、あまりに右顧左眄して時を逃す愚を犯してはならない」

 

半導体輸出では、中国向が香港を含めて60%も占めている。だが、中国のロウエンド半導体の国産化が進めば、この輸出は減る運命である。こういう先行きを見通せば、「チップ4」で新たな出発をする時期だろう。