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中国は、米下院議長ペロシ訪台に抗議して、台湾を全面封鎖する戦術を早々と明らかにする軍事演習を始めた。これまで、中国軍の台湾侵攻作戦ではいくつかのルートが想定されてきた。中国沿海部に近い金門や馬祖を占領して、台湾との和平交渉を要求する案から、今回の台湾全島封鎖まで6種類が上げられてきた。

 

中国軍は、台湾全島封鎖によって、日米援軍を撃破するという「マル秘戦術」を惜しげもなく公開したのだ。台湾東部の海上に陣を敷き、日米の援軍を迎えつつ戦術も想定されていたが、このようにあからさまに示されると、驚くほかない。日米が裏をかくことを忘れているような戦術公開である。

 


中国軍は台湾空襲を開戦と同時に始めると、半導体工場へ甚大な影響が出て、自らも大きな損害を被る。そこで、全島封鎖によって台湾の戦意を喪失させて、和平交渉を要求する戦術と見られる。だが、全島封鎖目的で出撃する中国海軍は、潜水艦攻撃を最も受けやすいのだ。日米潜水艦部隊は常時、台湾近海で展開している。そこへ、中国艦船が姿を見せればどうなるか。子どもでも想像がつくはずである。今回の中国海軍の作戦は、米軍にとっと絶好の作戦準備をさせる機会となった。また、次のような案も指摘されている。

 

米国と同盟国は、全面衝突に繋がる恐れがあることから、空爆とミサイルで中国本土を攻撃して防空システムを破壊するよりも、経済的な報復で対抗するのだ。原油や原料を積んでインド洋のシーレーンやインドネシアの狭い海峡を通過する中国船を足止めし、「逆封鎖」すると警告することである。中国は、食糧の自給率(カロリー・ベース)が70%台へ落ちているので、逆封鎖は確実に効く。さらに、ロシアに行なった全面的な経済封鎖の実行だ。中国には、こうして弱点がいくつもあるのだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(8月4日付)は、「
中国軍事演習『台湾東部でも』与那国島から60キロ」と題する記事を掲載した。

 

中国人民解放軍が台湾周辺の6カ所の空・海域で実施する軍事演習が4日始まった。期間は7日まで4日間。演習エリアは沖縄県の与那国島や波照間島からわずか60キロメートルの距離に設定され、中国軍が発射した弾道ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。台湾を巡る緊張が日本にも波及した。

 

(1)「演習は台北に近い2カ所や南部の都市・高雄の沖合のほか、台湾海峡や台湾東部の空・海域で実施する。演習エリアの一部には日本のEEZも含まれる。日本政府の指摘に対し、中国外務省の華春瑩報道局長は3日の記者会見で「中日は関係する海域でまだ境界線を画定していない。日本のいうEEZの見解を中国は受け入れない」と反論した。与那国島は南北を演習エリアに挟まれており、それぞれ約60キロしか離れていない至近距離にある。国防省によると、4日に中国軍が発射したミサイルのうち、日本に最も近い場所に落下したのは与那国島から80キロメートルの地点だった。EEZ内ではなかった」

 

日本のEEZ近くで演習を始めたのは、日本への警告である。つい10年前までODA(政府開発援助)で支援してきた中国が、日本を脅迫するまでになった。増長も甚だしい。すべて、不動産バブルによる土地販売収入を軍事費に注ぎ込んだ結果である。バブル崩壊で、土地販売収入は激減する。軍事費にはピンチとなるのだ。いまが、最も「幸運」な時期だろう。

 


(2)「台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は4日にビデオメッセージを発表し、「台湾だけでなく国際社会にとって無責任なやり方だ。中国に理性と自制心を持つことを強く求める」と述べた。中国国営中央テレビ(CCTV)は軍の専門家の話として、台湾上空をミサイルが通過したのは初めてと指摘した。国防部によると、3日に続き4日も中国軍機22機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を越えて台湾側に入った」

 

中国軍は、こういう脅迫行為を行なえば、その後にどういう結果が待っているか分らないのか。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は4日、中国はペロシ米下院議長の台湾訪問に過剰反応すべきでないという認識を示した。

 

ストルテンベルグ事務総長は、ロイターに対し「ペロシ氏の訪台は、中国の過剰反応や台湾への脅威、脅しのレトリックの理由にはならない」とし、「米国や他のNATOの同盟国の高官は長年にわたり、定期的に台湾に訪問しており、中国が過剰反応する理由はない」と述べた。NATOは、新戦略概念で中国を「危険国」に名指ししている。中国はますます、不利な状況に追込まれるのだ。

 


(3)「今回の軍事演習には、中国が開発した新型の空中給油機「運油20」も投入された。同機の運用により中国の戦闘機や爆撃機の作戦範囲は3割程度広がるとみられている。台湾東側の広範な空域をおさえ、台湾の救援に向かう米軍を迎え撃つ体制が強化される。ミサイル駆逐艦が台湾東部に回ったとの報道もあり、台湾の「海上封鎖」に向けた演習との見方も出ている。日本政府内には「台湾有事は日本にとっても有事だ」という認識が広がりつつある。EEZへのミサイル落下でその懸念がさらに強まった。中国の軍事力は飛躍的に増強した」

 

米海軍の原子力潜水艦部隊が常時、台湾近海をパトロールしている。開戦となれば、いち早く米潜水艦が中国艦船を「一網打尽」で、撃沈することは確実だ。また、「AUKUS」(米英豪)の潜水艦部隊は、台湾防衛を明白にしている。中国海軍による全島封鎖は、事実上、不可能であろう。潜水艦部隊が先制攻撃するからだ。