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中国は、台湾が「独立論」を掲げない限り、平和的統一を原則とする旗印を掲げてきた。だが、米下院議長ペロシ氏の訪台をこじつけて、台湾全島を封鎖する形で4日間もの威嚇演習を始めた。これは、明らかに平和統一論に反する行動だ。中国が、ついに本音丸出しの軍事行動に踏み切る意思を内外に示すことになった現れであろう。最短で、18ヶ月以内に軍事行動の危険性も指摘されている。

 

米国は、頻りと中国の挑発に乗らないと冷静な対応をしている。だが、中国の常軌を逸した今回の台湾封鎖の大演習は、これまでの米国のとってきた台湾政策の変更を迫るものだ。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月2日付社説「ナンシー・ペロシ氏の台湾海峡」)で、次のように論じている。

 


「米中相互の理解は過去50年間にわたり、中国が平和的な再統一の実現を待つ一方、米国は一つの中国という主張を受け入れ、台湾防衛について曖昧にしておくというものだった。それはもはや、通用しない。習氏は自らの任期中に中国を統一したいと考えており、中国政府の発言と軍の配置はますます好戦的になっている」

 

中国が平和統一論を捨てて、軍事による統一方針を示した以上、米国もこれに応じて「一つの中国論」に拘らず、台湾防衛を明確にせよ、という主張である。

 


米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月3日付)は、「ペロシ氏の台湾訪問後、待ち受ける試練」と題する記事を掲載した。

 

ナンシー・ペロシ米下院議長は、トラブルに巻き込まれることなく、現地時間の2日夜に空路台北に到着した。そのこと自体は、喜ばしい。しかし、もっと大きな試練は、訪問終了後に訪れる。そして、中国がどんな対応を取るかということだけが試練の要因になるのではない。

 

(1)「ペロシ氏の台北訪問の情報が(無益にも)リークされたことで、中国が脅しをかけてきた。それでもペロシ氏が訪問をやり遂げたのは正しかった。訪問の時期が「悪い」と発言した者たちは、中国政府が許容する「正しい」時期がいつなのか、われわれに示すことができないだろう。米バイデン政権が、トラブルに備えて台湾の近くに戦力を展開していたのも、賢明な対応だった」

 

米第7艦隊は、台湾近海を警戒中であった。これが、ペロシ氏搭乗機の台湾着陸を阻止するという中国による妨害を防いだのかも知れない。中国へ対抗するには、残念ながら正論ではなく軍事力を背景にしなければならない環境になってきたと言える。中国が、自己の軍事力を過信する状況になっている証拠だ。

 


(2)「中国政府は2日、怒りの言葉と、内容の明示がないままの軍事的脅しという反応を示したが、直接的な軍事衝突は起きなかった。しかし、中国外務省の声明で示された主要な抗議内容が、ペロシ氏の訪台は「台湾当局と米国による(台湾問題での)現状変更」の試みであるというものだった。この現状を変えようとしている人物がいるとすれば、それは中国の習近平国家主席だ。習氏は自身の任期中に台湾と中国を統一することに集中しているように見える。中国は過去50年間の多数の公式発表で、いかなる再統一も平和的でなければならないことに同意している。しかし、中国は今、あらゆるシグナルを送り、必要とあれば、武力で台湾を取り戻す用意があることを示している」

 

下線のように、中国は「平和統一論」というこれまでの主張を捨てて、軍事力に依存し始めている。これまでの中国外交からは、大きく外れたものだ。中国がこうなった以上、米国も台湾防衛を明確にして中国をけん制すべきだろう。

 


(3)「習氏にとっての問題は、同氏が国内外で独裁的になればなるほど、台湾の人々が中国本土に加わりたくなくなることだ。中国が英国と結んだ合意に違反し、香港に対して約束していた自治を押しつぶすという習氏の判断は、台湾の重大な分岐点だった。これにより、台湾では、本土との関係強化を望む野党国民党に反対する人々が過半数になった」

 

習氏は、香港と結んだ「一国二制度」を破棄した。香港へ強引に「国家安全維持法」を導入させて、民主化活動を弾圧している。台湾での中国との一体論は、こうして急速に萎んでしまったのだ。平和統一論を踏みにじったのは、習近平氏本人である。

 


(4)「ペロシ氏の台湾訪問に対する中国の反応を受け、台湾と米国は台湾の防衛強化のために緊急に行動することに注意を集中させなければならない。兵器の供与を一層迅速に行う必要があり、その供給は侵攻の可能性を最大限に阻止できる類いのものでなければならない。米国と同盟諸国はまた、中国が段階的な経済的締め付け、あるいは包囲・遮断戦略を開始する場合に備える必要がある。そのためには創造的な思考と不屈の精神が求められる。中国がその意図をあまりにも明確にしつつあるためだ。台湾危機が迫っている

 

米国と同盟国は、台湾の自由と民主主義を守り、中国の世界挑戦への野望を阻止しなければならなくなった。米当局者によれば、習氏は台湾統一の目標時期を2020年代後半から、おそらく最短で今後18カ月以内へと早めたとみられるという。台湾、米国および同盟諸国は戦争を阻止したいと望むのであれば、待っている時間はない、と切迫感を示すほどになっている。中国軍の抱える弱点を一挙に突く戦術を整えて置かなければならない。早急な、潜水艦部隊の集結が必要であろう。