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中国人富裕層は、昔から危険察知能力がピカイチである。1938年、ノーベル文学賞に輝いた『大地』(パール・バック著)は、革命前の中国社会を克明に描いた小説である。中国富裕層は、当時から莫大な富を宝石で保有したが現在、再び社債・株式・住宅の投資から

宝石へ向かっている。中でも、ヒスイが大人気という。富裕層は、中国社会の先行きに変動の兆しを読み取っているようだ。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(8月8月8日付)は、「不動産を見限りヒスイ買い、中国人投資家がシフト」と題する記事を掲載した。

 

中国の株式、債券相場の急落と同国不動産市場で相次ぐデフォルト(債務不履行)を受け、裕福な投資家がアジアで最も伝統的な投資形態の一つを見直している。対象となるのが、ヒスイの一種ジェイダイト(硬玉)だ。

 


(1)「ミャンマーでの軍事クーデター、米国による制裁、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)といったことがすべて重なり、原石のままのヒスイの供給が事実上滞り、ジェイダイトが使われる宝飾品の価格が急騰している。ジェイダイトは、ヒスイとして知られる化学組成が異なる2種類の石のうち、より希少かつ価値が高いもので、高品質なジェイダイトについてはミャンマーが世界の供給量の70~90%を生産している。こうしたヒスイの大半が中国と東南アジアの買い手に売られている」

 

ジェイダイトは、ヒスイでも希少価値の高い宝石として珍重されている。ミャンマーが、世界供給量の70~90%を生産するが現在、国内は大混乱でジェイダイトの生産どころでない。値上り条件を備えているのだ。

 


(2)「中国が、感染を完全に封じ込める「ゼロコロナ」政策を厳格に行っていることや、米中当局が繰り広げる衝突についてトレーダーたちが懸念を抱き、中国の株価指数は2022年、大きく打撃を受けた。上海・深圳の主要銘柄で構成されるCSI300指数は年初から15%以上下げており、香港ハンセン指数は13%下落した。中国の社債市場も不動産業界で相次ぐデフォルトによって大きく揺らいだ。一方、政策立案者が21年、不動産デベロッパーの債務水準の抑制と住宅ローン融資の制限に乗り出した後、何十年間も富を生む原動力となってきた住宅価格は10カ月連続で下落している」

 

中国は、米中対立を背景に株式・社債の相場は大きく崩れている。住宅価格も11ヶ月連続値下がりである。富裕層が、不動産投機から手を引いているのだ。代わって登場したのがヒスイ投資である。

 


(3)「世界的にインフレが急激に進み、ウクライナ紛争が引き起こした欧米制裁は中国などへの潜在的リスクを高めるという世界的なトレンドを受け、投資家は代替的な安全資産としてヒスイやその他の高級宝飾品に向かうようになっている。シンガポールの大手銀行DBSの上級投資ストラテジスト、ダリル・ホー氏は、ロシアに対する欧米諸国の制裁によって、投資家が銀行などの第三者に頼らずに個人として保有することができる「無記名資産」の魅力が高まったと話す。対ロ制裁について、同氏は「制裁が科されるや否や、人々が正味財産の半分を失うのを目の当たりにした」と語る」

 

下線部分は、重要な指摘である。ウクライナ侵攻後、中国を取り巻く潜在的なリスクが高まっている。最近は、「台湾封鎖演習」という新たな不安材料が持ち上がっている。投資対象は、従来から一変して宝石へ向かう環境になってきたのだ。

 


(4)「業界団体「香港珠宝玉石廠商会(HKJJA)」のキティ・チャン理事によると、ジェイダイトは爬虫(はちゅう)類のようでザラザラしている外観に加え、市場が対面でのオークションに大きく依存しているために、初心者が質の高い石を選ぶのはほぼ不可能で、投資家は代わりに加工済みの宝飾品を購入している。21年12月に公表された「2021年版中国ジェイダイト産業消費白書」は、富裕層の中国人投資家の間では、ジェイダイトと宝飾品が腕時計や高級車、高級ワイン、絵画に勝るお気に入りの収集品となり、27%が購入に関心を示していると推計していた」

 

ヒスイでも高価なジェイダイトは、原石での購入が難しく宝飾品で売買されている。

 


(5)「21年2月のミャンマーのクーデターとその後の騒乱は、すでに限られていたジェイダイトの供給を混乱させた。規制当局であるミャンマー宝石公社(MGE)を含め、軍と関係がある一連のヒスイ関係組織に米国が制裁を科したことで、供給がさらに停滞している。1990年から2000年にかけては大抵、ジェイダイト市場に行って手持ちの石や宝飾品を売ると、通常、価格が元値の1.5倍か2倍になるのがせいぜいだった」とチャン氏は話す。「だが今では、質が高いものを持っていたら、10倍に跳ね上がることもある」と指摘」

 

ジェイダイトは、21年2月のミャンマーのクーデター後、10倍にも値上りしているという。中国富裕層は、住宅投機から足を洗いヒスイ投資へと資金を動かしているのだろう。