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韓国は、簡単に借金する気風が強い国である。「消費は美徳」を地で行くのだが、その影には多数の多重債務者(金融機関3カ所以上からの借入れ)を生んでいる。金利が低い時は、何とか回っていても、利上げ期になると利払いの負担で首が回らなくなるのだ。

 

現在が、まさにその時期を迎えている。特に20~30代と中低所得者など低信用者が相対的に金利の高い貯蓄銀行から借り入れていることが分った。多重債務者の総数は446万人で、過去最高となっている。借入残高の31.9%も占めるのは、金融危機へ発展する温床になろう。

 


『中央日報』(8月16日付)は、「韓国、『金融時限爆弾』多重債務者446万人で過去最多」と題する記事を掲載した。

 

家計負債のアキレス腱がさらに危険になっている。金融会社3社以上からの借入がある多重債務者の割合が2012年に集計を取り始めてから最高水準に高まった。特に20~30代と中低所得者など低信用者が相対的に金利の高い貯蓄銀行から借り入れるケースが増え懸念は大きくなっている。市場金利などが急騰する中で金融安定を揺さぶりかねない信管の爆発力が大きくなる様相だ。

 

(1)「韓国銀行(中央銀行)が15日に国会政務委員会所属の「国民の力」尹暢賢(ユン・チャンヒョン)議員に提出した資料によると、3月末現在で個人向け融資を受けた人のうち22.4%が多重債務者だ。昨年末の22.1%より0.3ポイント増え、関連統計集計を取り始めた2012年以降で最高水準だ。借入者数ではなく借入残高基準でみれば多重債務の割合は31.9%だ。これは韓国銀行が家計負債データベースパネル約100万人の信用情報を分析した結果だ。この割合を昨年末基準の債務者1989万4000人に適用すれば445万6000人が多重債務者と推定される」

 


家計借入残高の31.9%は多重債務という。人数では446万人だ。これは驚くべき事実である。貸すにも貸したり、である。個人借入情報があれば、事前にチェックもできるだろうが、後になって騒ぐのは効率的でない。

 

(2)「多重債務者数と残高が増えるよりも心配なことは、低信用者で目立つ多重債務者の割合増加傾向だ。3月末基準で多重債務者の借入残高を年齢帯別に見ると、40代の割合が32.6%で最も高かった。50代が28.0%、30代以下が26.8%、60代以上が12.6%の順だ。このうち30代以下の多重債務者の割合は昨年末より0.6ポイント増え他の年齢帯と比較して最も急激に増加した。

 

多重債務者の年齢層では、40代の割合が最も高くなっている。家計の責任が重くなる時期だ。マイホーム・子どもの教育費など、ずしりと負担が増える。文政権による不動産高騰が一層、負担を重くしたであろう。恨むべきは、文政権の愚策である。

 


(3)「3月末の多重債務者の貸付残高のうち76.8%が貯蓄銀行に集中した。昨年末と比較して銀行と相互金融、保険会社、与信会社(カード会社)などの3月末の多重債務者向け貸付残高はいずれも減少したが、貯蓄銀行だけ0.9ポイント増えた。信用度が低いため金利は高いが相対的に敷居が低い貯蓄銀行に多重債務者が向かったという意味だ。問題は金利負担だ。韓国銀行によると、6月基準で家計向け貸付の加重平均金利は都市銀行が年4.23%、貯蓄銀行が年9.79%だ。都市銀行より金利が2倍以上高い」

 

貯蓄銀行とは、小規模で個人貯蓄を主に扱っている。貸出も個人主体となれば、金融コストが最も嵩むものだ。銀行経営は、信用創造機能によって大口融資で利益を上げ、コストを切下げられる。貯蓄銀行には、そういう装置が働かない仕組みになっている。宿命的な限界である。

 

(4)「多重債務者の負担を減らすため都市銀行も積極的に乗り出している。新韓銀行は15日、「信用貸付金利が年7%を超過する多重債務者の金利を1年間年7%(最大1.5%)に下げる」と発表した。支援対象は先月末基準で金利年7%を超える信用貸付がある多重債務者だ。例えば信用貸付金利が年9%の場合、1.5%の金利引き下げを適用して年7.5%に下げ、年8%の金利が適用される多重債務者の場合は年7%に引き下げられる。新韓銀行は「新韓銀行を利用する顧客のうち多重債務者約7万2000人が7500億ウォン規模の恩恵を受けることになる」と明らかにした」

 

多重債務で困難に陥る層は、自営業者、青年、低所得層である。都市銀行も救済に乗り出している。信用貸付金利が、年7%を超過する多重債務者の金利は年間7%(最大1.5%)に下げるというもの。この軽減される「1.5%」分が、どれだけ多重債務者の負担を軽くするかは不明だ。最大の問題は、所得が減少しているからだ。



(5)「ウリィ銀行は、8月1日から延滞せず負債を返済してきた多重債務者の元金を減免する恩恵を導入した。金利年6%を超える貸付を償還中の多重債務者が延滞せずに負債を返せば6%を超過した利子分だけ元金を減免する方式だ。ウリィ銀行は「低所得債務者の軟着陸誘導と借主のモラルハザードを防止するためにこうした方式を考案した」と明らかにした」

 

ウリィ銀行は、金利6%以上の債務者に対して超過分を元金返済分に回すというもの。これで、単純な金利軽減よりもモラルハザードを防げるとしている。銀行側にも「貸倒引当金」を積増さずにプラスになるのだ。一挙両得かも知れない。