テイカカズラ
   

先のペロシ米下院議長の訪台は、中国の事前予告通りペロシ氏の搭乗機への妨害工作があったことが判明した。ただ、何らの事態も発生せずにペロシ氏は台湾へ到着した裏に、米軍機による中国機追跡を電波妨害工作で防いでいたのである。

 

『朝鮮日報』(8月17日付)は、「米軍の電磁波妨害を受けた中国の戦闘機『ペロシ議長搭乗機の追跡に失敗』」と題する記事を掲載した。

 

中国軍が最新の駆逐艦と戦闘機を投入し、今月2日に台湾へ向かったナンシー・ペロシ米国連邦議会下院議長の乗る飛行機を追跡しようとしたが、米軍の妨害で失敗したという。香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)が最近報じた。

 


(1)「SCMP紙は、中国軍に近い匿名の関係者の話を引用し、「中国は殲16D(J16D)電子戦機や055型駆逐艦などを投入して、ペロシ議長を乗せた米空軍所属のボーイングC40を追跡したが、米空母機動部隊から出撃した軍用機の電子的妨害で中国側の電子戦装備がきちんと作動しなかった」と伝えた。J16戦闘機に電子戦装備を追加したJ16Dは、艦載型のJ15Dと共に中国軍の電子戦の最先鋒兵器に挙げられる。055型駆逐艦は2019年に1番艦が就役した最新型の駆逐艦で、現在は「南昌」「拉薩」「大連」の3隻を運用している。中国の軍艦の中では最先端のレーダーを搭載している」

 

中国軍は、最新鋭の電子機器を使ってペロシ搭乗機を追跡したが、結果は電子戦装備がきちんと作動せず失敗した。米中近代戦を象徴するような話だ。中国が他国の技術を盗用して、装備だけは「金ピカ」になっても、世界最先端を行く米軍を阻むことの困難さを示している。

 

世上では、中国軍の戦闘機や艦船の数だけ取り上げて、米軍のそれと比較して議論している。米国の戦略家エドワーク・ルトワック氏は、こういう単純な比較を嗤っている。戦争で威力を発揮するのは、戦略と同盟国の有無の2点を上げる。中国は、これらの点で米国に及ばないことを自ら証明したようなものだ。

 


(2)「中国のある軍事専門家は、「055型駆逐艦に搭載されたレーダーの探知範囲は500キロ以上といわれるが、実際はこれに到底届かなかっただろう」とし、「探知範囲が広く、比較的新型の055型駆逐艦にあまり慣れていない乗組員のことを考慮すると、ペロシ議長の乗った飛行機の位置を特定できなかったのは驚くべきことではない」と語った。先に中国政府は、ペロシ議長が台湾を訪問したら「黙ってはいないだろう」と軍事的対応を公言し、米国は南シナ海にいた空母「ロナルド・レーガン」機動部隊を台湾南東部のフィリピン海に展開させて万一の事態に備えた」

 

中国機は、ペロシ搭乗機を追跡して強制着陸させる目的であったのだろう。米軍が、こういう事態を招けば著しい「権威失墜」になる。これを回避するには、中国機への電波妨害工作しかない。技術面でも米軍がはるか上を行っていることが分る。

 


(3)「今月2日から3日にかけて行われたペロシ議長の台湾訪問と、その後1週間以上も続いた中国の台湾包囲演習の過程で、米中は偵察、電子戦などの分野で「見えない戦争」を行ったものとみられる。中国のシンクタンク「南海戦略態勢感知計画」は、米軍が今月5日だけでも少なくとも7機の偵察機と早期警戒機を台湾近辺へ送り込んだと主張した。韓国を飛び立ったU2高高度偵察機も中国軍の訓練監視に動員されたという」

 

中国軍は、電子戦で弱点を抱えていることが判明した。これは、近代戦において致命的である。電子分野では、優秀な日本技術が米軍に貢献しているとされている。日米の合作で、中国軍の横暴を防がねばならない。