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韓国安保政策を誤らせる

台湾が中国に落ちれば?

チャイナは瀕死の重傷へ

中国依存への幻想を絶て

 

韓国は、台湾問題についてほとんど沈黙を貫いてきた。中国との関係悪化を危惧した結果である。これにより、国内でも台湾問題は「対岸の火事」として捉える偏った見方を広めることになった。だが、先のペロシ米下院議長の訪台後に起こった、中国軍の台湾を取り囲む大演習によって、台湾海峡を封鎖する事態が現実化する恐れを抱かせるにいたった。

 

台湾海峡は、韓国貿易にとって欠かせない海上交通路である。ここが、封鎖され戦争状態に陥れば、韓国の国益は大きく損ねる。こうして台湾有事は、韓国有事になり得ることを否応なく認識させたのである。

 


これまで韓国有力メディアは、日本が台湾有事を利用し防衛力増加に動き出していると批判的トーンであった。日本は、太平洋戦争で近隣諸国を戦火に巻き込んだ反省が足りないと非難。平和憲法を維持せよと迫っていたのである。これに対して、私はドイツの例を持出し国際情勢急変の現在、日本もやむを得ない措置であると主張した。

 

ドイツは、NATO(北大西洋条約機構)の中で、防衛費が対GDP比で1%見当に止まっている。NATOの申し合わせでは、2%達成が目標である。ドイツは、2月のロシアによるウクライナ侵攻を機に、これまでの消極的姿勢を改め、防衛費の2%達成を公約に掲げた。ロシアの軍事侵攻へ対抗する姿勢を明確にしたのだ。

 

日本の防衛費増大は、ドイツと同様に対GDP比1%を2%に引上げるものだ。これについて韓国メディアは、近隣諸国の了解が必要だとしている。具体的には、韓国の了承が必要という高飛車な態度に出ている。日本の防衛費増額は、日米同盟の中で行なわれるものだ。ドイツとNATOの関係と同じである。日本が、単独で防衛費を増やすという問題でない。

 

韓国安保政策を誤らせる

韓国文政権は、意図的に台湾問題への言及を避けてきた。それは、本質的に「反米思想」の根強い「86世代」(1960年代生まれで80年代に学生生活を送り軍事政権と対決した50代)によって、文政権が動かされてきたことと関係する。彼らは、台湾問題が不安定な原因は米国にある、という先入観に支配されてきた。具体的には、次のようなものだった。

 

根強い反米感情と、朝鮮半島にだけは飛び火しないことを望む「フリーライディング(ただ乗り)」への願望に支配されてきたのだ。この二つの要因は、朝鮮李朝末期の偏狭な外交感覚と瓜二つである。李朝は、ロシアへの支援を求めていたが、英米の外交方針と大きく食い違っていた。英米は、ロシアの南下を食止める策を巡らしていた。日英同盟は、そういう英米の世界戦略から生まれたものだ。

 

李朝は、英米の世界戦略から外れた外交選択をしようとして結局、歴史は日韓併合へ流れることになった。文政権の外交戦略は、中国接近である。李朝はロシアを頼り、文政権は中国へなびいたのである。世界の大勢を読めない盲目的選択という点では、李朝も文政権も何ら変わりなかった。

 


文政権が、中国へなびいていた証拠は、自衛問題である「三不一限」で不当は譲歩をしたことである。「三不一限」とは何かをもう一度振り返って起きたい。

 

中国外務省は最近、韓国のTHAAD(在韓米軍の超高高度ミサイル網)配備について「韓国政府(文政権)は対外的に『三不一限』政策を宣示(広く宣布して伝える)した」と主張している。三不一限とは次のような内容だ。

三不は:

1)THAADを追加配備しない

2)米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない

3)韓米日軍事同盟に参加しない

一限は:

4)THAADレーダーに中国方向に遮断幕を設置するなど運用を制限する

 

三不は、今後追加の措置はしないという意味である。一限は、すでに配備したTHAADの運用にまで中国の意向に従うもので、韓国自体が思い通りできないことを意味する。こうして、一限は三不以上に深刻な安保主権の放棄と指摘される。世界で自国の軍事装備使用について、他国から干渉されるとは前代未聞だ。文政権は、こういう異例の事態を唯々諾々と受入れる雰囲気であった。

 


「三不一限」は、国家存立の基盤である自衛権の根幹に関わる問題である。李朝末期では、ロシアへ依存した外交であった。文政権は、中国依存という米韓同盟を結ぶ国家の安保政策としてあり得ないことを行なったのだ。先に挙げたように、文政権は「反米思想」と朝鮮半島へ飛び火しなければ、中国の言分に何でも従う敗北主義を明確にしていた。文政権の描く世界は、朝鮮半島しか視野になかったのである。

 

台湾が中国に落ちれば?

韓国は日本から独立後、民主主義と市場経済をベースにする国家システムによって発展した。韓国メディアの言葉を借りれば現在、「G10」(世界主要10ヶ国)になったと自画自賛するまでになっている。だが、ここで中国が台湾を軍事力で解放した場合、韓国は38度線で対峙する北朝鮮との関係が一段と厳しいものになろう。共産主義圏が拡大するのだ。

 

台湾海峡が、中国に支配される事態となれば、貿易上で大きな障害になる。日本も全く同じ悪条件に追込まれるのだ。台湾有事は、韓国有事であり日本有事であるという論理が、ここに成立するのだ。(つづく)

 

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