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短期間で好不況を繰り返すことで知られる半導体業界にあっても、特に深刻な需要後退期を今後数カ月で迎えると半導体メーカー各社は予想している。過去に例を見ない好況から一転して十数年ぶりの大幅な売り上げ減少に陥る恐れがあると警戒信号が上がった。

 

特に、韓国が得意とするメモリー半導体市況の落込みが予想されている。韓国の輸出は世界貿易の増減と密接に絡むので、これからも貿易赤字が続くと悲観的な見方が出てきたのだ。

 

『ブルームバーグ』(8月17日付)は、「半導体業界の状況悪化 チャートに顕在化ー世界経済にさらなる黄信号」と題する記事を掲載した。

 

半導体需要を巡る懸念の高まりを受け、アジアのハイテク輸出企業に動揺が走っている。これらの企業は歴史的に国際経済の先行指標の役割を果たしてきた。大手韓国企業のサムスン電子SKハイニックスは投資を抑制する方針を示唆しているほか、半導体の受託生産世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)も同様の見通しを示している。

 


(1)「半導体メモリーは、5000億ドル(約67兆円)規模の半導体市場の中で世界経済の影響を最も受けやすい分野の一つで、サムスンとSKハイニックスのDRAM販売は、韓国の貿易の中心となっている。来年のDRAM需要の伸びは8.3%と、過去最低のビット成長率となる公算が大きいと、テクノロジー調査会社トレンドフォースが指摘。供給の伸びは14.1%になると同社は予想している。ビット成長率は記録容量ベースの成長率を意味し、世界市場の需要の重要なバロメーターとなっている。来年は供給が需要の2倍近くのペースで増加する可能性が高いため、韓国の輸出は深刻な低迷に向かっている可能性がある」

 

DRAMの世界需給は23年、大幅な供給超過になる見込みである。需要が8.3%増に対して、供給は14.1%増が見込める。約7割もの需給ギャップが起こる以上、市況急落は不可避である。こうして来年の韓国輸出は、大きな打撃を受けそうだ。

 


(2)「既に貿易が悪化し始めている兆候が強まっている。韓国のテクノロジー輸出は7月に約2年ぶりに減少し、メモリーが落ち込みの中心となった。6月の半導体在庫はここ6年余りで最も速いペースでみ上がっている世界最大の半導体メモリーメーカーで、貿易依存度が高い韓国経済の要であるサムスンが、犠牲者の一つとなる可能性がある。供給と比較して需要が強かった時期には、サムスンの売り上げは急増していた。半導体見通しが悪化する中、サムスンの株価は今年に入り下落傾向にあるが、利益が予想を上回ったことを受けて時折反発することもある」

 

下線のように、半導体メモリーメーカーの中で、輸出依存度の高いサムスンの業績が大きな打撃をうける。

 


(3)「韓国の輸出は、長期にわたり世界の貿易と相関関係にある。そのため、同国の輸出減少は、地政学的リスクから借り入れコスト上昇などの逆風に直面する世界経済が、さらなる問題を抱えることを示唆している。韓国の株式市場は同国の貿易動向の先行指標の一つだ。輸出低迷のかなり前に株が売られる傾向にある

 

下線部は、韓国経済がサムスンの動向に大きく左右されている状況を示している。この底の浅さは、韓国経済が自称「G10」になったというプライドを根底から揺さぶるはずだ。

 

(4)「ナティクシスのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレーロ氏は、「アジアの景気サイクルはテクノロジー輸出に大きく依存しているため、こうした傾向は地域にとって重要だ」と指摘。「新規受注が減少し、大量の在庫が積み上がっていることは、アジアのテクノロジー業界が長期的な在庫圧縮サイクルや利益率の縮小に直面することを意味する」と分析した」

 

アジアの景気サイクルは、テクノロジー輸出に大きく依存している。半導体は振幅の激しい産業だけにこれからの落込みは激しくなろう。韓国経済が、揺さぶられるのは不可避だ。