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中国は、相手国の無知を利用して返済不能を見込んで過大融資をしてきた。この結果、2020年のパンデミックで返済不能が続出している。中国は、自己資金を融資するのでなく、借入資金の「又貸し」である。それだけに、貸付金利も高く新興国には大きな負担となっている。

 

中国は、こういう状況から新興国の「巣」であるアフリカへの融資で慎重姿勢に転じた。2020年は、前年比77%減と思い切ってブレーキを踏んでいる。中国の懐具合が厳しくなっていることの裏返しである。

 


『日本経済新聞 電子版』(8月18日付)は、「中国、対アフリカ巨額融資を見直し『一帯一路』曲がり角」と題する記事を掲載した。

 

中国が、アフリカのインフラ整備をけん引してきた巨額融資を軸とする経済協力の見直しに着手した。ケニアでは官民協力の手法で高速道路を建設し、ザンビアでは債務再編の交渉に応じる。返済能力を超える貸し付けを巡る国際社会の批判をかわす狙いだ。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」は曲がり角を迎えた。

 

(1)「アフリカは、「一帯一路」の途上にある。中国は、高い経済成長に必要なエネルギーや鉱物資源の供給地としてアフリカを重視し、国有の銀行や企業を通じた巨額融資で道路、鉄道、港の建設を助けた。主に先進国が資金を拠出する国際金融機関は融資の条件として環境保全、人権尊重を厳しく求めるが、中国の2国間融資が求める要件は比較的緩い。工期は短く、アフリカの指導者は中国を歓迎した」

 

中国は、新興国へ野放図な融資を行なってきた。「一帯一路」の名目で政治的な思惑先行であった。それが、「債務漬け」である。返済不能を見込んで貸付け、担保を取り上げるという国際高利貸しである。このあくどいビジネスも終焉を迎える。資金が続かないのだ。

 


(2)「中国は多くのアフリカ諸国に対して最大の債権国になったが、2016年をピークに融資は減少傾向をたどる。米ボストン大のグローバル開発政策センターによると、中国の対アフリカ融資は20年が計19億ドル(約2600億円)で、前年より77%減った。中国が「焦げ付きリスク」を警戒し、アフリカ側の返済能力を慎重に見極め始めたというのが同センターの見立てだ」

 

20年の対アフリカ融資は、前年比77%減である。「金の切れ目が縁の切れ目」というドライな振る舞いである。中国が、アフリカから甘い汁を吸える環境でなくなってきたことの証明である。

 

(3)「アフリカ諸国の財政は、新型コロナウイルスの感染拡大で悪化している。国際通貨基金(IMF)によると、サハラ砂漠以南の国の約6割が債務危機の状態にあるか、そのリスクが高い。中国は21年に開いたアフリカ側との国際会議、第8回中国アフリカ協力フォーラムで「融資の革新的な手法」の模索を打ち出し、支援の見直しを示唆した」

 

中国は、融資見直しでも元金削減に応じることがない。せいぜい返済期間の延長程度である。貸付け条件を絶対に公表させないが、これは暴利を貪っていることの露見を恐れている結果だ。ともかく、秘密主義である。

 


(4)「中国は国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2の経済大国になったが、成長率は次第に鈍化。19年までは資金流出も続いた。無計画に「チャイナマネー」の力を見せつける余裕はなくなった。中国は7月末、ザンビアに対しフランスなどほかの債権国とともに債務再編の交渉開始で合意した。中国はこれまで融資先と「一対一」の交渉を好むとされていたが、外国と足並みをそろえた債務減免が実現する可能性がある。ザンビアの対外債務残高は21年末時点で約170億ドル、このうち対中債務は60億ドルと推計される。中国共産党の関係者は「外交関係が良好な債務国に対しては債務再編の交渉に応じる余地はある」と語る」

 

一世を風靡した「チャイナマネー」という言葉も、もはや再び聞かれるまい。中国国内が、不動産バブル崩壊で深刻な信用危機に落込んでいるからだ。他国へ融資する余裕を失っているのが現状である。

 


(5)「中国の対アフリカ融資には、汚職の疑惑がつきまとう。アフリカ諸国の中で対中債務残高が最も多いアンゴラは、ドスサントス前政権が中国企業を優遇したとされる。中国が、返済に窮した融資先から建設した港や道路の運営権を奪う「債務のわな」を仕掛けているとの非難も根強い。中国はこれを米欧の「冷戦思考に基づく偏見だ」と否定してみせる。だが、一定の配慮を示している可能性はある」

 

中国が、いかに鉄面皮でも「債務漬け」の事実が次々に明らかにされており、冷酷は高利貸し稼業を続けられる筈がない。路線修正は当然である。

 

(6)「中国の経済支援の修正が「本物」ならば、なお若年人口が多く、生産拠点や市場として成長が見込めるアフリカを巡る各国の競争にも影響を与えそうだ。アフリカ諸国に対しては旧宗主国の英国が東側、フランスが西側に大きな影響力を維持してきた。旧英領のインドは東アフリカに商業ネットワークを広げる。最近ではトルコが建設業を中心に浸透し、ロシアも原子力協力や兵器輸出で影響力を強める」

 

西側諸国は、新興国への融資に乗り出す。中国の「一人舞台」でなくなるのは確実である。こういう意味でも、「中国の時代」終わるのだ。