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半導体は、短期間で好不況を繰り返すことで知られる業界である。世界の半導体メーカー各社は、今後数カ月で深刻な需要後退期を迎えると予想している。過去に例を見ない好況から一転して、十数年ぶりの大幅な売り上げ減少に陥る恐れがあるというのだ。『ブルームバーグ』が報じた。

 

米国株価は、こうした半導体不況の到来について全く関心を持たずに「ダンス」に興じている格好である。この数十年間、半導体売上高の3カ月移動平均は世界経済のパフォーマンスと高い相関関係を示してきた。現在は世界的なリセッション(景気後退)懸念により半導体メーカーは投資計画の縮小を検討しているほどだ。これまで、半導体好況がなお数年続くと期待する向きもあったが、現在はいつものパターンである在庫増と需要後退に直面している。夢は、ながく続かなかった。

 


世界経済は、乗用車やスマートフォン、コンピューターなどの製造に欠かせない半導体に依存している。世界経済の先行きを予測する上で、この半導体の需要動向は重要な鍵となる。この動きから眼を逸らしてはならないのだ。

 

『ブルームバーグ』(8月23日付)は、「半導体市場の成長見通し下方修正、世界的な景気後退懸念でー業界団体」と題する記事を掲載した。

 

今年の半導体の売り上げは従来予想よりも減速する見通しだ。急速な利上げや地政学的リスクの高まりが国際経済の重石となり、世界的なリセッション(景気後退)懸念が強まっている。

 




(1)「非営利の業界団体、世界半導体市場統計(WSTS)は、今年の半導体市場の成長率見通しを13.9%と、従来予想の16.3%から引き下げた。2023年の成長率予測は4.6%にとどまり、19年以降で最も低い伸びにとどまる見通しだ。WSTSによると、半導体市場の規模は今年も6000億ドル(82兆3900億円)を上回ると依然として予想されている。来年の成長率は、米中貿易戦争のさなかの19年(マイナス12%)以降で最も低い水準になる見通しだ」

 

米カリフォルニア州を拠点とするWSTSは、テキサス・インスツルメンツ(TI)、サムスン電子、ソニーセミコンダクタソリューションズなど、世界主要半導体企業によって運営されている。それだけに、世界の半導体情報は最も早く正確に集まる機構だ。そこがまとめる半導体情報ゆえに、無視できない重みを持っている。

 

世界の半導体売上高は、4カ月連続で伸びが鈍化した。利上げと地政学的リスク増大で、世界経済が圧迫されていることを示す新たな証拠となった。米半導体工業会(SIA)のデータによると、6月の半導体売上高は前年同月比13.3%増と、5月の18%増から鈍化した。4カ月連続の鈍化は、米中貿易摩擦が激化した2018年以来最長となった。

 


こうした需要鈍化によって、今年の半導体市場の成長率見通しは13.9%と、従来予想の16.3%から下方修正されている。2023年の成長率予測は、さらに低下して4.6%にとどまり、19年以降で最も低い伸びにとどまる。来年は、今年の3分の1程度に世界市場の成長率が鈍化するのだ。

 

(2)「WSTSによれば、来年の売り上げの伸びは日本が5%と地域別で最高となる見通しで、米州が4.8%、アジア太平洋が4.7%と続くと予想されている。ロシアのウクライナ侵攻が大陸全体の経済に波及している欧州の伸びは3.2%にとどまる見通しという。

 

世界の地域的な半導体の伸び率は、日本が5%で世界トップという。日本は、システム半導体の需要増加が見込めるのであろう。これは、世界主要半導体企業の提供するデータであるから、単なる「計算式」から弾き出した抽象的な予測と質が異なる。中身が濃いのだ。欧州は、ウクライナ侵攻が障害になっている。対ロシア経済制裁が、欧州のエネルギー価格を押上げるなどの影響を受けるのであろう。