中国政府は、コロナ感染者が出ると目の色を変えてPCR検査を行なう。だが、住宅ローンを払い続けも住宅が手に入らない人たちには、いたって冷淡だ。「命に関わりがない」という判断であろう。だが、住宅ローン返済拒否によって信用不安が高まれば、中国経済の心臓部を止めるという危険性が高まるのだ。
『日本経済新聞 電子版』(9月5日付)は、「中国、住宅融資50兆円に不払いリスク 債務依存のツケ」と題する記事を掲載した。
世界各地でマネー膨張が限界に達し、市場に亀裂が入り始めている。「私たちはだまされた」。8月30日、香港の行政監視機関のオフィスに約40人が集まった。中国本土の住宅を購入したものの、約束の期日を1年以上過ぎても物件が引き渡されていないと訴えた。
(1)「中国では恒大など資金繰りが厳しい不動産会社が相次いでマンションの工事を中断し、未完成のまま放置された「爛尾楼」が社会問題化している。住宅完成前に契約し代金を払い込むケースが多く、7月に突如、購入者が住宅ローンの返済を拒否する動きが広がった。S&Pグローバルは0.97兆~2.44兆元(約20~50兆円)の住宅ローンが不払いリスクにさらされると推計。引き渡し遅れへの不安から22年の住宅販売額が前年比28~33%減少すると予想した。同社の廖美珊氏は「資金繰りが厳しい業者から家を買う人が減り、業者はますます苦境から抜け出すのが難しくなる」と話す」
住宅ローン拒否は、約20~50兆円と推計されている。こういう厳しい現実を見せつけられれば、新規に住宅購入する人は尻込みするはずだ。住宅不況は、こうやって拡大再生産されて行くのだ。
(2)「中国当局は、住宅ローン金利下げにつながる利下げを決めたものの、個人の不安解消にはほど遠い。1~7月の住宅販売面積は前年同期比27%減だった。オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)の謝棟銘氏は「当局の政策緩和に市場の反応が鈍い。こんなことは初めてだ。不動産セクターは悪循環に陥っている」と指摘する。問題の根っこには過剰債務に依存して無理な開発を進めてきた構造がある。国際決済銀行(ビス)によると、21年末の中国の非金融部門の民間債務は国内総生産(GDP)の214.4%と、日本のピーク(1994年末、214.2%)を上回る」
中央政府は、初めは地方政府に対策を命じた。次は、国家資金を投入すると発表したが、その後の動きはない。要するに、事態の重大さに気付いていないようなのだ。中国経済の核は、不動産開発である。ここで大きなトラブルが起こっても放置しているのは、余りにも鈍感である。
(3)「日本のバブル崩壊の引き金を引いたのは、旧大蔵省による不動産融資の総量規制だった。中国も当局が不動産会社に厳しい財務指針「3つのレッドライン」を課し、資金繰り悪化と市場低迷を招いた。日本総合研究所の関辰一・主任研究員は、中国の債務について「極めて深刻な状況が続いており、大きな調整を余儀なくされる可能性がある」と警鐘を鳴らす。中国の商業銀行の不良債権比率は6月末に1.67%と、1年前に比べて0.09ポイント低下した。ただ、中国の銀行は資産査定が甘く、公式データは実態を反映していないとの指摘が根強い。関氏は上場企業の財務データから20年末の潜在的な不良債権比率を8%と試算し「金融機関の連鎖的な破綻が起きてもおかしくない」と話す」
中国商業銀行の不良債権比率は6月末で1.67%という。これは、実態を隠している。これだけ低ければ、貸出リスクは少ないのだから積極的な貸出が行なわれる筈だ。現実は、「流動性リスク」に陥っている。高い不良債権比率に達している結果である。
(4)「中国経済は不動産不況の様相を呈する。UBSウェルス・マネジメントによると、不動産投資は中国のGDPの25~30%を占め、土地売却に伴う収入は地方歳入の30~40%に上る。住宅ローンの支払い拒否が続き、銀行の不良債権が急増する同社の悲観的なシナリオでは、22年の成長率が3%未満に落ち込む。世界的な利上げの中で、大胆な金融緩和に踏み切れば、元安や資金流出を招きかねないジレンマも抱える。金融大手のDBSの中国担当エコノミスト、梁兆基氏は「中国は利下げによって不動産業界を支えるのが難しい。このリスクはすぐには消えない」と語る」
住宅不況は、構造的な問題になっている。もはや、中国経済を支える力を失った。22年のGDP成長率は3%未満というのは、内外予測機関のコンセンサスになっている。
(5)「大和キャピタル・マーケッツ香港の頼志文氏は、中国が資産の投げ売りが始まる「ミンスキー・モーメント」に直面していると断じる。「不動産価格が右肩上がりで、成長率が6~8%だった時代には高水準の債務比率を維持できた。成長が続かず、住宅市場が崩壊し、一般企業、不動産会社、個人のいずれも返済能力が十分でない」と説明する。「目の前でバブルがはじけるのを見て、誰が市場に飛び込むだろうか」。頼氏の問いかけは中国の債務問題の根深さを物語る」
もはや、住宅値上り期待は完全に消えた。となると、投機筋は一斉に住宅売却に出ても不思議はない。住宅総崩れが起るのだ。それに気付かないのは、中国政府だけである。


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