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二転三転していた旧徴用工賠償問題は結局、2019年に韓国国会議長であった文喜相氏の提案に舞戻ることになった。文喜相案によると、関係した日韓企業の資金拠出と国民からの寄付金によって賠償資金を作るというもの。この案は、文在寅大統領(当時)が、難色を示して廃案になった。当時の与野党が合意していただけに、ここでも文氏の「反日」がブレーキを掛けたのだ。

 

韓国政府は来月、日韓企業による資金拠出案を日本政府へ提案するという。もともと、この案には安倍政権(当時)も「了承」意向を韓国へ伝えていたとされる。

 


韓国紙『東亞日報』(9月7日付)は、「日本に来月にも解決策提示へ、元徴用工問題で韓国政府が方針」と題する記事を掲載した。

 

韓国政府が来月、戦時中の元徴用工の訴訟をめぐる問題の解決策を日本政府に提示する方針だ。政府は既存の財団を活用するが、日本の政府や企業も賠償主体として参加して被害者に賠償する案を優先的に考慮するという。

(1)「政府が韓日関係改善の支障となっている元徴用工問題の解決に向けてスピードを出すのは、大法院(最高裁判所)が決定した、日本企業の韓国内資産の売却手続きが近づいているためだ。6日、東亜(トンア)日報の取材を総合すると、政府は2014年に設立された「日帝強制動員被害者支援財団」を活用し、元徴用工に賠償することをまず検討する。政府関係者は、同紙の電話取材に対し、「新たな基金の新設など手続きを踏むには時間がないのが事実」とし、「(日帝強制動員被害者支援)財団が正常化しているので、これを主体にすることに障害はない」と話した」

 


韓国政府は5日、4回目の徴用被害者の賠償問題解決のための民官協議会を開いた。韓国政府と被害者側はこの会議で、日本企業が徴用被害者らに賠償すべき額を韓国政府の予算で先に支払い、後で日本側に請求するという方式の、いわゆる「代位弁済」は望ましくないということで同意したと伝えられる。こうして、2019年に韓国国会議長が提案した「募金案」に舞戻ることになった。

 

韓国政府は、2014年に設立された「日帝強制動員被害者支援財団」を活用し、元徴用工に賠償することをまず検討するという。ここで、日韓企業の募金による賠償案が取り上げられる見通しのようだ。

 


(2)「政府は、日本に韓国がまとめた解決策を伝え、日本も賠償にある程度貢献するよう要請するものとみられる。元徴用工らが日本企業の賠償参加を強く主張しているためだ。日本の政府や企業の謝罪をどのように取りつけるかが鍵だ」

韓国政府は、被害者の高齢化などを考慮して、速やかに解決案を整備したい方針だ。外交部は「放置しておけない問題で、真剣に日本と話をしている」としている。ただ、日本政府が韓国側の「誠意ある対応」に対して、何の反応もしていないと、韓国メディアは報じている。

 

韓国企業側の拠出金には、1965年の日韓基本条約の恩恵を受けたポスコが拠出した60億ウォン(約6億円)を活用できる。この資金は現在、強制動員被害者支援財団で管理している。カギは、日本側で三菱重工業と日本製鉄などの企業が、資金拠出に参加するかどうかである。



旧徴用工側は、日本企業による基金への拠出を代位弁済の必須条件としている。これに対し日本側は、1965年の日韓基本条約ですべての賠償が完了している、日本企業に拠出を強制すべきではないという立場だ。韓国政府は、日本企業を財源確保の必要上、ぜひ参加して貰いたいが「自発的参加」を求めているという。これを通じて、旧徴用工側が第三者による代位弁済を受け入れる「名分」をつくるとしている。

 

日本側としては、1965年に日韓基本条約で無償3億ドルを払って旧徴用工問題を解決している。それにも関わらず、韓国政府がこの資金の一部を徴用工に支払わず、高速道路と製鉄所建設の資金に回してしまったのである。韓国大法院(最高裁判所)は、こういう実態を知りつつ、無償3億ドルの支払い名目が「賠償金」でなく「経済協力金」であるから、もう一度払えという、理不尽な判決を下したのだ。文在寅大統領(当時)の強い意志を反映したことは間違いない。政治的な判決である。