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習の3期目は危険ゾーン

中国不利な戦いどうする

米国は冷戦への準備万端

古典的スパイ作戦で対抗

 

中国は、ロシアのウクライナ侵攻作戦を最大の関心を以て見詰めている筈だ。中国の台湾侵攻作戦に応用する目的である。中国にとって不運なことは、自国の最大の武器輸入国であるロシアが、予想外の劣勢に立たされていることであろう。ロシア製武器が、西側諸国製武器の威力の前に顔色なしの状況に追込まれているのだ。

 

この決定的な差は、ロシア製武器に西側製半導体が使用されていることに現れている。ロシア製半導体がゼロであった。ロシア軍が戦場に放棄した武器を解体して判明したものだ。これは、西側が半導体など戦略物資を輸出禁止にすれば、ロシアの武器生産がたちどころにストップせざるを得ない理由である。ロシアでは、すでに戦車の生産がストップしていると報じられている。

 


習の3期目は危険ゾーン

中国はこの10月、習近平氏の国家主席3期目を決めると見られている。これまでの「2期10年」という憲法規定を改めて、習氏を国家主席3期目に選出するのだ。なぜ、習氏に3期目が必要なのか。ざっくり言えば、台湾侵攻を目的にしているのであろう。誰も、こういう危険な決定に関わりたくない。侵攻が失敗すれば、「戦犯」の身である。国内では、敢えて汚れ役を買って出ている習近平氏に任せよう、というのだろう。習氏には、「英雄」か「戦犯」かの危険な選択になる。

 

もっとも、習氏が全権を握れば、開戦するかしないかは習氏の判断一つにかかる。最も狡い方法は、「開戦」の構えを見せながらズルズルと先延ばしすることである。そうこうしているうちに、客観情勢から見て「開戦不利」と判断して、取り止める方法もあるのだ。習氏は、巧妙に立ち回りながら、自らの生命を守ることを最大の目標にして政権を運営するであろう。

 


米国が、中国の台湾侵攻作戦を止めさせるには、開戦しても勝てない状況をいかにしてつくり上げるかだ。その意味で、ウクライナ侵攻に走ったロシア軍の分析が、極めて貴重な材料となろう。米国は、ロシア軍と真逆の戦法を構築しておくことだ。

 

1)ロシア軍の戦略的な失敗。特に、兵站線がゼロ同然であり、兵士の士気を引下げた。

2)前近代的な兵器体系の上に、第二次世界大戦当時の戦い方に固執している。

前記2点について、私のコメントを付したい。

 

1)ロシア軍は、開戦前にウクライナの最新情報を持たなかったことが、致命的失敗である。ウクライナ政府が、国民の支持を得ておらず、ロシア侵攻によって簡単に崩壊すると見ていたのだ。ロシア兵は、ウクライナで歓迎されると考えていたが、国民から「帰れ」と罵声を浴びせられて衝撃を受けた。

 

短期で片が付く戦いと想定したので、武器弾薬・食糧の供給を全く考慮せずに開戦した。隣国のウクライナの状況を全く知らないで開戦したという意味で、無謀な戦争であった。旧日本軍で言えば、インド攻略の「インパール作戦」と同様で無知そのものの戦いだ。

 


2)ロシア軍は、77年前の第二次世界大戦当時の戦い方である。第一線の兵士には、自ら戦い方を考えさせず、指揮官が最前線に立っていた。ウクライナ軍が、この弱点を突いてロシア軍将官クラスを相次いで戦死させ、指揮命令系統を大混乱に陥れた。ウクライナ軍は、NATO(北大西洋条約機構)軍の訓練を受けていたので、兵士一人一人の判断を重んじる戦術で成功した。

 

ロシアに、長距離砲のないことも致命的になった。米国は、高機動ロケット砲システム「ハイマース」(77キロメートル)で、ロシア軍の後方支援(兵站)施設を攻撃し、無力化することに成功している。ロシア軍が最近、ウクライナ全戦線で劣勢に立たされているのは、この「ハイマース」の威力とされている。

 


中国不利な戦いどうする

中国にとって、台湾侵攻が国運を掛けた戦いになることは間違いない。しかも、台湾海峡(最短幅で130キロメートル)を挟んでおり、中国にはロシア軍以上の不利な条件である。大軍を台湾へ送るには、この台湾海峡で「藻屑」に消える大きなリスクがある。さらに、台湾防衛では、米同盟国が参加する可能性が高い。北朝鮮を除けば同盟国を持たない中国が、米同盟国とどのように戦うのか。これも疑問符である。

 

このように数え上げれば切りのないほど、中国の勝算は薄くなるのだが、習氏は異例の国家主席3期に挑戦している。その理由は、武力による「台湾統一」の筈だ。これほど危険なことに、自らの命を賭けて挑むというのである。中国社会は、決して一枚岩でない。反習近平派がゴマンといる。台湾侵攻に失敗すればどうなるか。長年、蔭に追いやられてきた反対派が一挙に権力を握る。それは、どこの国家でも起こっている現象である。(つづく)

 

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