a0960_005041_m
   

ウクライナ軍は、北東部で迅速な反転攻勢を進めている。ロシア軍に占領された北東部全域の解放を目指す勢いだ。さらなる米国の軍事支援が、行われることも示唆されており、目標達成は確実な情勢である。

 

こういう情報は、ロシアが2014年に占領したクリミア半島のロシア系住民の耳にも入っている。現地では、厳しい情報管理がされているものの、クリミア在住の動画ブロガー、ユーリー・ポドリャカ氏によって、状況が伝えられている。「正直に言わねばなるまい。われわれは戦いに敗れた。以上」と憤る。同氏は戦況を毎日更新し、テレグラムで約240万人のフォロワーを集めている。『フィナンシャル・タイムズ電子版』(9月13日付)が報じた。

 


『ニューズウィーク 日本語版』(9月14日付)は、「
ひそかに家を売り、クリミアからロシア人が逃げ出しはじめた」と題する記事を掲載した。

 

ロシアが併合した南部クリミア半島を、ウクライナ軍がまもなく反攻の標的にするという報道を受け、ロシア系住民は逃げ出しはじめている。ウクライナ南部から黒海に突き出たクリミア半島は、ウクライナとの長年の紛争のあげく、2014年にロシアに併合された。ウクライナはそれ以来、併合を強く非難しており、ほとんどの国が今も同地域をウクライナ領と認めている。

 

(1)「ウクライナ軍は98日、北東部ハルキウの重要戦略拠点からロシア軍を追い出し、領土奪還に成功した。ウクライナ軍指導者たちはさらにクリミア半島奪還を目指し、同様の作戦を遂行するとほのめかしている。ウクライナ国防省の13日の報告によれば、ロシア政府はクリミアのロシア系住民に安全を確約したものの、クリミア自治政府の指導者たちは家族をこの地域から脱出させようとし始めたという」

 

米ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報調整官は13日、バイデン政権がウクライナに対する追加軍事支援策を「近いうちに」発表する可能性が高いと発表した。これは、勢いに乗ったウクライナ軍にさらなる強力火砲を供与して、ロシア軍追撃の手を緩めないと言う宣言でもあろう。クリミア自治政府の指導者達は、家族の脱出に取りかかっているという。

 


(2)「ウクライナ語で書かれたこの報告書によれば、「ウクライナを防衛する軍事作戦の成功によって、一時的にロシアが占領してきたクリミア及びウクライナ南部のいわゆる自治政府は、ロシア連邦の領土に家族を緊急に移転させざるをえなくなっている」。「半島に滞在するのは安全だと当局が保証しているにもかかわらず、クリミアを占領する行政機関の代表者やロシア連邦保安庁(FSB)職員、ロシア軍部隊の司令官たちは、ひそかに家を売り、親族を半島から緊急避難させようとしている」という」

 

クリミア半島に駐在するロシア行政機関や連邦保安庁、ロシア軍部隊司令官などの家族はいち早く、逃げ出す準備を始めている。旧満州でも、日本軍は邦人を放置して自分たちだけ脱出を図ったという。ロシア軍も同じようなことをやっているのだ。ロシア軍部の家族脱出は、もはやロシア軍に勝機が薄いと見た結果であろう。これは、ロシア敗北の重大前兆である。

 


(3)「報告書によると、クリミア自治政府は、民間人が家を売ったり、地域外に旅行したりすることを禁止しようとしている。また、ウクライナ軍の反転攻勢に関する情報も厳しく規制されているという。「またウクライナを占領する当局は、住宅の売買に関する契約の締結を禁止し、ロシア本土とクリミアを結ぶクリミア大橋の通過に制限を設け、ウクライナ軍の反撃に関する情報へのアクセスをあらゆる手段で遮断しようとしている」と報告書は締めくくる。「ウクライナの民間人に対して戦争犯罪をした者はみな捕らえられ、訴追されると、ウクライナ軍は脅している」と指摘」。

 

下線部を読むと、クリミア半島内部の雰囲気が手に取るように分る。すでに、クリミア半島内部は浮き足立っている。住宅売買の話が、持ちきりになっていることで分るのだ。

 


(4)「7日に報じられた記事で、ウクライナ軍のバレリー・ザルジニー総司令官とウクライナ国会のミハイロ・ザブロツキー議員は、クリミアはウクライナ軍による2023年の反撃の主要ターゲットになるだろうと述べた。「2023年の作戦を転機と考えるなら、ロシア連邦がこの戦争で最重視するものは何かという原点に立ち返って検討する必要がある」と、ザルジニーとザブロツキーは書いている。「ロシアにとって最も重要なのがクリミア半島の支配と定義されるならば、2023年に半島の支配を奪還することは、理にかなっている」と指摘する」

 

ウクライナ軍は明年、クリミア半島奪回作戦を展開するという。ウクライナにとっては、屈辱の半島である。ここを取り戻して国家の体面守るというのだろうが、プーチン氏はどう出てくるか。最大のヤマ場になろう。