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ウクライナ軍は、北東部で迅速な反転攻勢を進め、ロシア軍に占領された全域の解放を目指している。ウクライナのゼレンスキー大統領は演説で、これまでに約8000平方キロメートルが解放され、その全てが北東部のハリコフ地域に集中していると述べた。

 

今回見せたウクライナ軍の作戦は、ロシア軍をウクライナ南部へ誘導し、手薄となった東部の防御ラインを一気に突破する「奇襲作戦」で、これがまんまと成功したものだ。約3ヶ月掛けて編み出した戦術だという。米軍は、こうしたウクライナ軍の優秀さを再評価しており、ロシアによる侵攻開始直後と打って変わり高い評価を与えている。

 


ロシア軍は、約3旅団分(約1万の兵士)の武器弾薬を放棄して逃走したという。ロシア軍が、どれだけ慌てていたかが分る。私服に着替え、自転車に乗って逃げたという。中には、森林に逃げ込んだとも言われ、掃討作戦に乗り出している。旧「赤軍」のイメージとかけ離れた不甲斐ない負け方だ。

 

そこで、米軍はロシア軍に占領された全域の解放後、5年程度を見据えたウクライナ防衛計画の検討に着手した。米国は、中国の台湾侵攻作戦をも見据えており、ウクライナを「モデル・ケース」にするのであろう。

 


米『CNN』(9月15日付)は、「
ウクライナ軍を長期支援の検討開始、終戦以降も見据え 米国防総省」と題する記事を掲載した。

 

米国防総省がウクライナ軍に関する詳細な分析を準備し、同軍をロシアとの軍事衝突の終了以降も含め中長期的に支える方途をまとめていることが15日までにわかった。

同省当局者の3人が明らかにした。まだ初期段階にあるとする作成作業などは米軍の制服組トップのミリー統合参謀本部議長が仕切っている。

 

(1)「中長期的な支援の財源は、ロシアによる今年2月の侵攻開始以降、米国がウクライナに供与してきた数十億ドル規模の軍事援助をあてにしている。国防総省高官は、今回の作成作業は「ウクライナ軍の将来の姿を見据えている」とし、軍事支援の側面で道理にかない、中長期的に米国がウクライナに取り組んで欲しい課題に関する重要な問題点への回答を見出すことを狙っているとした」

 

ウクライナが、ロシア軍と対峙して戦える体制づくりが求められている。これは、ロシアへの経済制裁が長期にわたることを前提にした話だ。ロシアは経済制裁で、技術的出遅れがさらに拡大されるであろう。

 


(2)「
中長期との位置づけについては、ロシア軍との軍事衝突が長期化しそうなことを踏まえ、戦争が終わった後の少なくとも5年間を念頭に置いているとした。分析は、ウクライナ側と協力して進めており、バイデン米大統領が承認すれば、将来的に複数年の兵器売却や米国が提供する長期の軍事訓練計画に結実する可能性があるとした。中長期的な軍事支援の道筋がまとまれば、ウクライナ側に示して評価を求めるとした。ただ、ウクライナ軍のあるべき姿と米側が判断した将来像に関する明確なロードマップ(行程表)の提供になるだろうともした」

 

ロシア軍にとっては、ただならぬ「強敵ウクライナ軍」が現れるかもしれない。ウクライナ侵攻が、プーチン氏の個人プレーなのかどうか。その辺も今後、見定めなければならない。ロシアの受ける経済制裁の損害は、時間が経てば立つほど明らかになろう。

 


(3)「米国防総省高官は、分析作業が今後1~2カ月でまとまるとの見通しを示した。ただ、ウクライナ側の見解が最終的な骨格にとって最重要との考えも表明。「彼らの戦略や要望は何なのか」を知る必要があると強調。この調整作業は、ウクライナ戦争での戦局の推移や同国軍が得る戦果の度合いをにらみながら今後数カ月間、継続するだろうとも予測した」

 

ウクライナは、NATO(北大西洋条約機構)軍への加盟が最終的な安全保障となろう。それまでの繋ぎが、必要不可欠である。ロシア軍との戦いで、NATO軍加盟資格は立証済である。

 

(4)「その上でこれら作業の初期段階での成果は、ウクライナ側の承認次第としながらも兵器供与や訓練提供の勧告につながる可能性があると指摘。最終的に、長期かつ複数年にわたるウクライナに対する兵器提供の契約を通じて、米国と同盟国によるウクライナへの関与が拡大する可能性にも言及した。この種の最初の契約はバイデン大統領が1期目を終える前に実現するかもしれないとした」

 

下線部分が、ウクライナのNATO軍加盟問題を示唆しているように見える。

 


(5)「米ホワイトハウスは15日までに、ウクライナに対する新たな軍事援助を近く発表する方針を明らかにした。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官が述べたもの。新規援助の内容についての説明は避けたが、ウクライナ軍が必要とする装備品については同国側と同時進行の形で話し合っていると説明。米国が過去数週間あるいは過去2カ月の間にウクライナへ引き渡してきた装備が攻勢を仕掛ける上で役に立ち、その有効性を立証したと指摘。ウクライナの防御面でも、過去数日間あるいは数週間において非常な効果を示したと述べた」

 

下線部分は、ロシア軍を最終的にウクライナ領土から追い払うことを意味する。クリミア半島への奪回作戦が含められるのだ。プーチン氏は、苦しい選択を迫られる。安易に始めた戦争は、予想外の結末になりそうである。