ムシトリナデシコ
   

先の習近平氏とプーチン氏の首脳会談後、ロシアのパトルシェフ連邦安全保障会議書記が19日、中国外交担当トップの楊潔チ共産党政治局員と会談した。パトルシェフ氏は、戦略的提携を深化して防衛協力を拡大し、主要な地政学的問題で両国が連携を強化するよう要請したと、『ロイター』(9月19日付)が伝えた。

 

中ロ首脳会談では、双方が意見を述べ合っただけで深い詰めがなかった。習氏は、夕食もとらず帰国するという「隙間風」が吹いていたので、ロシア側がプーチン氏の側近を中国へ派遣したものだ。中ロは、今後とも「共同演習やパトロールを中心に、さらなる軍事協力と参謀本部間の連絡強化で合意した」という。

 


中ロは、ウクライナで軍事行動を共にすることはなくても、軍事協力と参謀本部間の連絡強化を申し合わせた。ただ、中ロの協力関係強化が、中国軍にマイナスになるという調査報告が米国防大学から発表された。ロシア軍の脆弱性が、そのまま中国軍の弱点になるという注目すべき報告である。

 

米『CNN』(9月17日付)は、「中国軍、ロシア軍と同じ潜在的な弱点 米国防大の新報告書」と題する記事を掲載した。

 

中国軍はウクライナで苦戦するロシア軍と同じ潜在的な弱点を抱えており、同様の戦争を遂行する能力の妨げになる可能性がある――。米国防大学がそんな報告書を公表した。

報告書では、軍種を超えた訓練の不足が人民解放軍(PLA)のアキレス腱になる可能性があると指摘している。ただ、専門家は中国の能力を過小評価することには依然慎重で、ロシアとの比較には注意を促している。

 


(1)「報告書では2021年までの6年間、PLAの陸海空軍とロケット軍、戦略支援部隊の5軍種に所属する幹部将校300人以上の経歴を調査した。その結果、どの軍種においても、幹部はキャリアを開始した軍種以外で作戦経験を積む機会に乏しいことが判明した。別の言い方をすれば、
PLAの陸軍兵は陸軍兵のまま、海軍兵は海軍兵のまま、空軍兵は空軍兵のままキャリアを過ごす。報告書では、PLAの要員がそうした狭い組織の外に出ることはまれだと述べ、軍種をまたいだ訓練が1986年から法律で義務付けられている米軍とは対照的だと指摘している」

 

人民解放軍(PLA)の幹部将校は、下線のように陸軍は陸軍、海軍は海軍と生涯に他の軍務を経験することがない。米国は1986年以降にこの垣根を取り払い、あらゆる軍務を経験させている。この経験が、陸・海・空の一体化作戦に不可欠という。

 


(2)「報告書はさらに、こうした「硬直性が将来の紛争で中国の有効性を低下させる可能性がある」とし、特に軍種をまたいだ高レベルの統合行動が求められる紛争では問題になると指摘。PLAは「軍全体のまとまりに欠ける」ウクライナでのロシア軍と同様の問題に見舞われる可能性があると示唆した。7カ月前のウクライナ侵攻開始以降、ロシア軍の組織構造の欠陥は外部から見て明らかになっている。専門家によれば、ウクライナ軍の反転攻勢で最近敗走した際、ロシアの地上部隊は航空支援を欠いていた。開戦当初には兵たん面の問題で補給能力がそがれ、ロシア軍のトラックは地形に適したタイヤもなく、整備不足による故障が相次いだ

 

ウクライナ侵攻で見せたロシア軍の欠陥は、地上部隊が航空支援できなかった点にあるという。他軍務を経験していないので、硬直的な戦い方になるという。ウクライナ侵攻でロシア軍は、開戦3日間で空挺部隊の大半を失った。

 


(3)「報告書の著者であるジョエル・ウズノー氏によると、PLAの幹部は軍種をまたいだ訓練の不足から、これと同様の問題に直面している。「例えば、作戦指揮官が後方支援部門でキャリアを広げる機会はほとんどない。その逆もしかりだ」(ウズノー氏)。同氏は米国防大学中国軍事研究センターの上級研究員を務める。報告書によると、21年に四つ星司令官(米軍の統合参謀本部議長やインド太平洋軍司令官、あるいは中国の中央軍事委員会幹部や戦区司令官など)を比較したところ、米軍の40人全員が統合軍の経験があったのに対し、中国軍では31人中77%しか統合軍の経験がなかった。米国では四つ星司令官のほぼ全員が作戦経験を持つが、中国では半数近くが「プロの政治将校」だという」

 

PLAは、ロシア軍が見せたウクライナ戦争での欠陥を、そのまま受け継いでいる可能性が強い。台湾軍は、米軍による訓練を受けているので、他軍務を経験させているだろう。驚くべきは、中国の四つ星司令官の約半数が「政治将校」上がりだ。つまり、実戦指揮の経験がない「アマチュア」である。これは、中国最大の弱点であろう。

 


(4)「ハワイにある米太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター氏は、今回の報告書は「中国の現状や今後について私が見た中で最良の分析だ」と語る。一方で、この報告書を基にウクライナと似た戦争でのPLAの戦いぶりを予想するのには慎重になった方がいいとも指摘した。中国軍にはロシア軍より優れた点が他に数多くあるからだ。中国は新兵訓練の質がより高く、現在はもう徴集兵に依存していないが、ロシア軍は下士官の「80~85%を入隊7カ月の徴集兵に頼っている」(シュスター氏)。ロシアとは異なり、中国にはプロの下士官も存在するという」

 

中国軍が、ロシア軍並の弱さという結論を出すべきでない、としている。当然だろう。敵を見くびって負けた例は多い。今回のロシア軍がそれだ。