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9月16日の上海協力機構(SCO)会議で、プーチン氏と習氏との会談を映像で見ると異様な雰囲気を感じさせるものだった。殺気立ったプーチン氏と、困惑する習氏の表情が対照的であったのだ。習氏は、SCOの夕食会に出席せず北京へ帰ったのである。

 

中ロ枢軸と言われる両国の関係は今や、今年2月4日に見せた「限りない友情」という華やかなムードを醸していないのだ。中国は、ロシアに対して不信感を持ち始めたようである。インドのモディ氏は、プーチン氏へ「今は戦争をしているときでない」と明確に批判する事態となった。プーチン氏は、中印から揃って「ウクライナ侵攻」への批判を受ける側に立たされている。

 


英紙『フィナンシャル・タイムズ 電子版』(9月19日付)は、「モディ氏と習氏 プーチン氏と距離を置く発言」と題する記事を掲載した。

 

ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、中国とインドがプーチン大統領に対して懸念を表明したことで、この戦争に対する世界の見方が変りつつあるとの観測が欧米当局者の間で広がっている。ウクライナ侵攻後、非西側諸国との間で結束を高めようとしているプーチン氏にとって国際的影響力の低下は打撃となる。

 

(1)「ある欧州高官は、こうした中国やインドの発言を「不快感を純粋、明確に示唆している」と受け止めており、インドと中国が今後、ロシア及び西側諸国への対応を変える可能性があると語った。ある大臣は、発言をロシアに対する「実質的な批判」と理解しているとフィナンシャル・タイムズ紙に対し語った。「特にモディ氏の発言だ。彼は今の事態に不満を持っていると思う」と述べた。モディ氏はプーチン氏に「今は戦争の時ではない」と苦言を呈した。プーチン氏は同氏に「現状が一刻も早く終わるよう全力を尽くす」と約束し、インド側から「これまで継続的に表明されてきた懸念」に言及した。その前には、プーチン氏は公の発言で、習氏が戦争を「懸念」していることを認めた」

 

習氏とモディ氏によるプーチン氏への発言は今後、プーチン氏の行動へ一定の影響を与えることが考えられる。とくに、ロシアがウクライナで戦略核を使用した場合、ロシアは「仲間内」から外される恐れも出るだろう。その意味で、レッドラインを越させない効果はあるように思う。

 


(2)「こうして、中ロ主導の地域協力組織「上海協力機構(SCO)」の会議における首脳同氏のやり取りは、対ロシア制裁に加わっていない2大経済大国がウクライナ侵攻に対する懸念を最も公の形で表明する場となった。米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は16日、今回の発言はプーチン氏が「国際社会からさらに孤立している」ことを明確に示したと述べた。「これまでプーチン氏に対する反感を声高に表明していなかった国々も、同氏がウクライナでやっていることに疑問を抱き始めている」 中国とインドが明らかに懸念を表明したことは、プーチン氏が目指している「非西側諸国間の結束」に対する障害となり得る

 

下線のように中国とインドが、ウクライナ侵攻へ懸念を示したことは、「非西側諸国間の結束」にひび割れを起こす要因となろう。ロシアへ逆風が吹いていることは明らかである。

 

(3)「中国は国際市場で割安になったロシアの1次産品を安値で購入している。だが、制裁でロシアの防衛や技術分野で不足が生じても、中国企業は米国からの二次的制裁のリスクを恐れ、それを穴埋めすることには慎重な姿勢を取っている。モスクワに駐在する別の西側の外交官は「ロシアは中国にもっと期待していたはずだ」という。「中国企業は、積極的に行動しないように指示されているか、あるいは取引に高官の許可が必要になっているかのいずれかだ」と指摘する」

 

中国は、ファーウェイがイラン制裁への「二次制裁」で副会長がカナダで逮捕(その後保釈)された一件が身に応えている。ロシアでも「二次制裁」はあり得るからだ。現に、米国はそれを強く警告している。

 


(4)「ニューデリーのシンクタンク、政策研究センター(CPR)上級研究員のスシャント・シン氏は「モディ氏の発言は、同氏が意図した通り、プーチン氏を支持してはいないというメッセージを西側諸国に伝える役割を果たした」と語った。モディ氏はウクライナの主権や領土に関する「議論の割れる問題」には触れず、食糧安全保障や燃料・肥料の供給といった戦争の影響に関する点に絞って発言した、とシン氏はいう」

 

モディ氏は、西側諸国へプーチン支持でないことをアピールした。モディ氏は、米国へ「クアッド」(日米豪印)で接近しているからだ。インドの武器国産化問題で、米国から支援を受ける約束を受け取っている。その「領収書」代わりの発言とも読めるのだ。

 


(5)「西側諸国の高官は、モディ氏らが懸念を表明したことは、プーチン氏の主張に対する挑戦と受け止めている。戦争による経済的打撃が悪化したのは、西側の対ロシア制裁が原因だと主張するプーチン氏の持論に異議を表明したという見方だ。欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は18日、仏週刊紙『ジュルナル・デュ・ディマンシュ』への寄稿文で、ウクライナ軍による占領地の奪回は、ロシア軍の弱さと士気の低さを如実に示した、とした。最近の出来事を見れば、「ウクライナ軍はまだ戦争に勝利こそしていないが、ロシア軍が負けつつあるのは間違いない」と主張した。ボレル氏は、まだ戦争は続く、とした上で、和平のプロセスについて考える時期が来ているとした」

 

中国やインドが、ロシアへ苦言を呈するようになったのは、ロシア軍の劣勢とも深く絡んでいる。ロシア軍の無様な戦い方を見ると、とても「軍事大国」と呼べない幼稚さを見せつけているのだ。プーチン氏もロシアも苦境に立たされてきた。