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中国は、台湾侵攻目標に向かって着々と動き始めている。中国は、ロシアがウクライナ侵攻で外貨準備高を凍結された事態を回避すべく、米国債の保有高を減らして金保有にシフトし始めているからだ。だが、こういう動きが活発化すると、米国は直ぐに気付くはずで、警戒心をさらに強めよう。中国が今後、米国債の保有を減らしても、万一の場合はドル決済網から除外される。このリスクは事前回避できないのだ。

 

『日本経済新聞』(9月22日付)は、「中国、米国債保有1割減 上期1000億ドル分 資産凍結を警戒か 租税回避地に移管も」と題する記事を掲載した。

 

中国が保有資産を入れ替えている。7月の米国債保有額は2021年末から9%減り、8月の金輸入額は過去最大だった。米欧日によるロシア中央銀行の海外資産凍結に衝撃をうけ、ドル依存への警戒を強めている。ただ急速な運用先の多様化も難しい。タックスヘイブン(租税回避地)などで米国債の一部を「隠れ保有」している可能性もある。

 

(1)「米財務省によると、中国の米国債保有額は7月末時点で9700億ドル(約139兆円)だった。前月をわずかに上回ったが、6月までは7カ月連続で前月比減である。米中貿易戦争が始まった18年から減少傾向だが、22年上期だけで1割近い1000億ドルを減らした。半期でみると16年7~12月以来5年半ぶりの圧縮額だ。対照的に、代表的な租税回避地のケイマン諸島保有の米国債は同期間に385億ドル増加した。バミューダ諸島も同70億ドル増えた。中国が削減した一部を移管し「隠れ保有」を増やした可能性もある」

 

中国は、米国の制裁を受けて米国債の売却が難しくなっても、「隠れ保有」なら制裁の目をかいくぐりやすいと見ている。米国債は、安全で金利が付きいつでも売却できる点で、最も流動性が高い資産である。魅力があるから、「隠れ保有」する動機になっている。

 


(2)「直接的な保有額の削減をめぐり、中国の金融当局関係者は「米金利上昇に伴う損失を避けるためだ」と語る。ただ市場動向に照らした運用のほか、ロシア中銀の海外資産凍結も契機になったとみられる。中国政府関係者は対ロ制裁が固まった3月、「国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除よりはるかに打撃が大きい」と驚いた。習近平指導部は台湾の武力統一も辞さない構えだ。台湾有事で米欧日が金融制裁に動けば、3兆ドルを超す外貨準備の多くが凍結され、経済への打撃は計り知れない」

 

中国は、米国と戦争する気構えであるが、その意図を100%隠しきれるものではない。必ず「尻尾」を表す筈で、米国を100%出し抜くことは不可能である。その意味で、米国債保有を減らしても無意味に思える。愚策だ。

 


(3)「中国の外貨準備は16年時点で59%がドル資産だった。ドル資産の代表といえる米国債を減らすのは、貿易決済などで以前ほどドルに依存しなくなったこともある。ロシアは中国との貿易を中心に人民元決済を拡大している。ロシア国営ガスプロムは6日、中国への天然ガス輸出における決済通貨を従来のドルなどからルーブルと人民元に切り替えると表明。ロシア最大手銀ズベルバンクは人民元建て融資を始めた。SWIFTが調べた中国大陸以外での人民元の決済比率をみると、ロシアは7月時点で香港と英国に次ぐ第3位に浮上。中国にとってドルを介さずロシアから化石燃料を調達する利点は大きい」

 

SWIFTは、ドル決済の本流である。ここから人民元が締め出されれば、対先進国貿易は完全にストップする。中国経済は、それに耐えられるかという問題があるのだ。安易に考えていては、拙いだろう。

 

(4)「ドル資産からの代替候補の一つが金だ。中国税関総署によると、8月の金輸入額は103億5800万ドルと前年同月の2.3倍だった。中国の統計で遡れる17年以降で最大だ。どんな通貨とも交換できる金は「無国籍通貨」といえ、換金しやすい利点もある。ロシアやトルコなど米国と距離を置く国も米国債を減らし、金保有を増やした。中国の外貨準備資産に含む金保有量は19年9月末から今年8月末まで約1950トンで変わらない。国有銀行などが保有しつづけ、外貨準備以外の形で「安全資産」を増やしている可能性がある」

 

世界の中央銀行は、これまで政治リスクやドル通貨の価値下落リスクを回避するため、外貨準備で金(ゴールド)保有を増やす傾向を強めてきた。中国が最近、金保有を増やしている背景はこれだ。だが、国際基軸通貨のドル価値は、下がるどころか上がる一方だ。中国が敢えて金保有を増やす意図は、米国との対立という政治リスク回避であろう。

 

中国のこういう過剰なまでの自己意識を見ていると、吹き出すほどおかしく思える。中国が、まともに米国と戦争して勝てると思っているところに、大きな錯覚を感じるからだ。戦前の日本も、現在の中国と同じで「勝てる」と思って開戦した。その挙げ句に、原爆を2発落とされる「報復」を受けた。中国も同様に、痛い報復を受けるであろう。国家としての「基礎力」が余りにも違い過ぎるのだ。中国は、それに全く気付いていない。日本は、敗戦によって、それが余りにも大きいことを気付かされたのである。後の祭りであった。