ロシアのプーチン大統領9月21日、部分的動員令を発表した。即日から実施という慌ただしさだ。30万人の動員令である。翌日から召喚が行なわれている。その状況を米『CNN』(9月23日付)は、次のように報じた。
「ロシアの一部の地域、特にカフカスと極東地域で「部分的動員」の第一段階が進行している様子をとらえた動画が、ソーシャルメディアに投稿されている。極東のネリュングリ市でバスに乗り込む大勢の男性に別れを告げる家族の映像も投稿されている。女性が泣きながら夫を抱きしめて送り出し、夫がバスの窓から娘に手を伸ばす姿が映っている」
映像では、幼児の「パパ、パパ」と泣き叫ぶ情景もあり、戦時中の日本の応召姿とは全く異なるものの、悲壮感が漂っている点では同じだ。戦争は悲劇である。
ロシアは「部分的動員令」で、戦局を変えられるだろうか。その可能性は極めて少ないという指摘があるので取り上げた。
『CNN』(9月22日付)は、「ロシアの部分動員、『戦況に劇的な変化』もたらす公算小 戦争研究所」と題する記事を掲載した。
米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は21日の分析で、ロシアのプーチン大統領による部分動員の発表が戦争の流れを劇的に変化させる可能性は少ないとの結論を示した。
(1)「ISWの分析では、予備役の戦闘準備が整うには数週間から数カ月かかるほか、ロシアの予備役はそもそも練度が低いと指摘。(米)国防省が示した慎重な配備の段階をもとに判断すると、ロシア兵が突然押し寄せて戦況を劇的に変化させる事態は考えにくいと述べた。プーチン氏の命令は兵役を終えた「訓練済み」の予備役の一部を動員する内容だが、数カ月は大した戦力にならないだろうと指摘。死傷者の穴を埋めて現在の兵力を来年も維持するには十分かもしれないが、現時点ではそれすら定かではないとの見方を示した」
ロシアの兵役は1年間である。新兵が、この間に学ぶことは軍隊生活と基本的な訓練だけであろう。その1年間の兵役後に、継続したサポートを受けているわけでないという。つまり、時間が経てば忘れてしまう危険性が高いのだ。この状態で動員しても、数ヶ月の訓練がなければ、「一人前」の兵士にはなれないであろう。
(2)「さらに、「ロシアの兵役期間はわずか1年で、徴集兵が兵士としての技能を学ぶ時間はそもそもほとんどない。この最初の期間の後には追加訓練がなく、時間が経つにつれ身に着けたスキルの劣化が加速する」としている」
戦う相手のウクライナ兵は、多くが民間人であったが「祖国防衛」という強い信念に燃えている。NATO軍や米軍から合理的な戦い方を学び、ロシア兵と比較して格段の逞しさと強さを身に付けている。ウクライナ軍の長距離重火砲は、ロシア軍を圧倒しており、ロシア軍が戦線挽回の可能性は低いとみられている。
ロシア国民の多くは、ウクライナ侵攻直後は「反戦デモ」を行なったが、その後は取締り強化もあって消えてしまった。そこへ、突然の「予備役動員令」によって、ウクライナ戦争が身近になって恐怖感に襲われている。動員令から逃れるには、国を出るほかない。道は、空路か陸路しかないのだ。空路は、予約が殺到して航空券を手に入れられるか分らない。ならば、陸路での脱出である。
『CNN』(9月23日付)は、「ロシア出国を待つ長い車列、複数の隣国との国境で確認」と題する記事を掲載した。
ロシアのプーチン大統領が「部分的動員」を発表した翌22日、ロシアといくつかの隣国との国境ではロシアから出国しようとする長い車列ができ、その様子を収めた映像がソーシャルメディアに投稿された。
(3)「カザフスタン、ジョージア(グルジア)、モンゴルとの国境の検問所には行列が出来ていた。21日撮影のあるビデオでは、ジョージアとロシアの国境の検問所に一晩中何十台もの車が並んでいるのが映っている。その列は、22日にはさらに長くなっているように見える。ビデオでは長い列が国境の後ろの山まで延びており、ある男性は「5〜6キロの長さだ」とコメントしている」
動員令を逃れるには、国を出る以外に方法しかない。家族が一緒かどうかは分らない。逃亡を余儀なくされるのは、命を守るギリギリの決断であろう。
(4)「22日に投稿された別のビデオには、モンゴルとの国境の長蛇の列がうつっている。カザフスタンとの国境の町トロイツクで同日朝に撮影されたビデオでは、何十台もの車が並んでおり、ある男性が「ここはトロイツク。トラックと乗用車の列ができている。列の始まりも終わりも見えない。皆ロシアから逃れている」と話している」
車の列の始まりも終りも見えないとは、「渋滞」というイメージを超えている。予備役は、200万人いる。該当者は、逃げることで命を守るのだ。
(5)「カザフスタン議会上院議長のマウレン・アシンバエフ氏は、カザフスタンはロシア人の入国を制限することはできないと述べたと、ロシア国営RIAノーボスチ通信が22日に報じた。しかしアシンバエフ氏は、在住許可を取得するためには申請者は法律に準拠した書類一式を用意しなければならないと述べている」
カザフスタンでは、在住許可を取得するために書類一式が必要という。大慌てで家を出て来たであろうから、そのような時間はなかったはずだ。パスポート一つと預金だけであろう。こうなると、無事に在住許可を得られるか心配だ。


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