テイカカズラ
   


韓国は、米国が主導する半導体の「チップ4」(米国・日本・韓国・台湾)へ参加するかどうかで苦悩している。中国が、韓国を引留めているからだ。中国にとって韓国は、半導体製品供給で最後の「頼み綱」である。

 

中国のケイ海明・駐韓大使が9月20日、韓国与党・国民の力で半導体特別委員長を務め、現在は無所属の梁香子(ヤン・ヒャンジャ)国会議員を訪ねて、「中国も参加するチップ5に拡大してはどうか」などと発言したとされる。率直な口調で、チップ4に不快感を表明したものだ。このように、中国は韓国引留めに必死である。

 


『日本経済新聞 電子版』(9月23日付)は、「韓国半導体に『踏み絵』、米国が供給網連合に参加要請」と題する記事を掲載した。

 

韓国政府と企業が半導体を巡る米中対立に苦悩を深めている。米国は新たな半導体供給網の枠組みに韓国を引き入れようとし、中国は韓国の米国傾斜を強くけん制する。韓国は半導体輸出の6割を中国向けが占め、サムスン電子は中国に半導体工場を持つ。米中双方に配慮しバランス外交を続けてきた韓国に米国が踏み絵を迫る構図だ。

 

(1)「米政府は半導体のサプライチェーン(供給網)を安定させる枠組みづくりのため準備会合を調整している。招かれるのは製造装置や材料技術で蓄積のある日本と、最先端品の生産でリードする台湾、そして台湾に次ぐ生産能力を持つ韓国だ。4つの国・地域の枠組みで、韓国では「チップ4」と呼ばれる。新たな連合体の詳細は決まっていないが、半導体技術の確立を急ぐ中国を供給網から排除しようとする意図は明確だ。米国はトランプ前政権時代から中国のハイテク企業への規制を続けてきた」

 

半導体は、戦略物資である。ロシアが現在、ウクライナ侵攻で戦局不利になっている最大の理由は、半導体不足にある。中国が、ロシアの二の舞いならぬように、深刻になっている背景はこれだ。

 


(2)「米政府は8月に計527億ドル(約7.5兆円)の補助金を投じ半導体の国内生産を立て直す新法を成立させた。自国企業だけでなく、当面は半導体技術を持つ台湾や韓国、日本と連携し米国内に生産基盤を築く考えだ。アジア勢とともに中国への技術流出の抜け道をふさぐ狙いもある。この呼びかけに戸惑うのが韓国だ。長く経済面で中国との関係を重視し、安全保障面では米国に頼る「経中安米」を基本方針としてきた。米韓同盟を重視する尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が参加意欲を示すなか、中国が揺さぶりをかける。8月の中韓外相会談で中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は韓国の朴振(パク・ジン)外相に「中韓両国は独立自主を堅持し、外部の障害と影響を受けてはならない」とクギを刺した」

 

中国は、なり振り構わずに韓国へ圧力を掛けているのだろう。だからこそ、中国を振り切るべきだ。中国が半導体で弱体化すれば、それだけアジアは平和が続くことを意味する。台湾侵攻を遅らせることが可能だ。

 


(3)「韓国にとって中国は2021年の輸出入の24%を占める最大の貿易相手国で、稼ぎ頭の半導体の輸出の60%に当たる768億ドルが中国向けだ。化学品や機械など主要産業の輸出先としても中国が高いシェアを持つ。仮に中国が関税引き上げなどの制裁を科した場合、韓国の基幹産業がダメージを受ける可能性が高い」

 

韓国は、恒常的に対中輸出で黒字を出していたが、この5月から連続赤字に陥っている。中国経済の急減速が理由である。中国は、不動産バブル崩壊の後遺症とゼロコロナによって窒息状態である。回復には、かなりの時間がかかるだろう。

 


(4)「企業も口をつぐむ。サムスン電子は半導体メモリーの生産量の2割を西安工場(陝西省)が担う。SKハイニックスは無錫工場(江蘇省)に加え、21年には米インテルの大連工場(遼寧省)を買収。今や半導体生産の4割を中国工場が占める。韓国財界からは「もはや企業が対処できる問題ではない」との声も漏れる。SKの崔泰源(チェ・テウォン)会長は7月に米ワシントンを訪問してバイデン米大統領に現状を説明。韓国企業は米韓政府に企業活動への影響を軽減するよう要望を繰り返している」

 

将来、米中戦争が起こって韓国が米国側につけば、韓国の中国工場は接収される運命だ。半導体高級品製造はリスクを伴うから、接収されてもいい程度の投資に抑えておくべきだろう。

 


(5)「尹大統領の米国重視の姿勢は揺らぐ。8月には訪韓したペロシ米下院議長との対面会談を休暇中との理由で断った。ソウル市内にいた尹氏が電話会談にとどめたのは中国に配慮したためと受け止められている。韓国政府は保守・革新問わず、米中双方の顔色をうかがう外交姿勢を徹底してきた。文在寅(ムン・ジェイン)前政権は北朝鮮との融和を重視するため中国寄りの姿勢を強めたが、米国への配慮も欠かさなかった。米中対立の先鋭化で韓国の「米中バランス外交」は大きな転換点を迎えた。半導体を巡る米主導の新たな枠組みに飛び込むかどうか。尹政権は韓国経済の未来を左右する決断を迫られている」

 

韓国は、現実化する米中冷戦のリスクを避ける工夫が不可欠である。もはや、二股外交は不可能である。甘い夢を捨てて、厳しい現実に向かい合うべきである。米韓同盟の精神に従うことだ。