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にわか成金になった中国は、およそ金融常識とかけ離れた融資で、世界中に「一帯一路」プロジェクトを進めた。その結果、6000億ドルもの焦げ付け債権を発生させている。

 

たった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトに融資などを通じて約1兆ドル(約145兆円)を拠出。これにより、中国は初めて、世界最大の債権国に浮上した。だが、その6割が返済困難に陥っている。笑うに笑えない話だ。愚かというか、無鉄砲というか。不動産バブルの生んだ余波であろう。

 


米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(9月27日付)は、「中国に一帯一路『2.0構想』 問題噴出で方向転換」と題する記事を掲載した。

 

中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の見直しに着手した。影響力の拡大を狙い、アジアやアフリカ、中南米諸国に多額の資金を投じてきたが、ここにきて債務国の返済が行き詰まっており、軌道修正を余儀なくされている。政策運営に関与している複数の関係者が明らかにした。中国の銀行はすでに、低所得国の新規案件に対する融資を大きく減らし、既存融資の対応に注力している。

 

(1)「中国の対外融資のうち、借り手が返済困難な状況にあるとされる割合は60%に迫っており、2010年の5%から急上昇している。対外債務について数多く執筆しているセバスチャン・ホーン、カーメン・ラインハート、クリストフ・トレベシュ各氏が分析した。途上国の債務問題解決のため、中国は先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」といった多国間制度についても、長年の拒否姿勢を撤回する方向にかじを切った。足元では途上国の債務負担軽減に向けて20カ国・地域(G20)と協力している。中国は長年、債務元本の減免ではなく、返済期限を延長することで融資の焦げ付きに対応してきた」

 


中国は、「一帯一路」融資で焦げ付け債権多発し立ち往生している。これまで、G20と協力せずにこの問題に対処してきたが、余りの数の多さに音を上げ他国と返済問題を協議するようになった。

 

(2)「習氏は2012年に実権を握ると、中国の影響力を拡大するとともに、国産品を販売する市場を構築するため、自身の看板政策として一帯一路を推進し始めた。15年に中国株急落で内需が低迷すると、中国は一帯一路を使って、鉄鋼や繊維など国内で過剰供給にあった製品の輸出拡大にまい進。中国輸出入銀行や国家開発銀行(CDB)は往々にして、中国サプライヤーからの調達を途上国向け融資の条件としていた」

 

一帯一路は、習氏の「専売特許」である。国内の過剰生産問題解決に利用したので、「融資・工事」すべて中国が担当した。当初の「一帯一路」構想では、他国へも恩恵が及ぶことになっていた。それが、反古になったのだ。

 


(3)「中国外務省によると、中国はたった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトに融資などを通じて約1兆ドル(約145兆円)を拠出。これにより、中国は初めて、世界最大の債権国に浮上した。ウィリアム・アンド・メアリー大学傘下の研究所エイドデータが分析した

 

このパラグラフは、中国の無計画性を如実に表している。たった10年で、エクアドルやアンゴラなど約150カ国の開発プロジェクトへ約1兆ドル(約145兆円)を融資した。今この6割が焦げ付いている。中国は青ざめているのだ。

 

(4)「エイドデータの責任者、ブラッド・パークス氏は、対外融資のほぼすべてを支援として実施する米国とは対照的に、中国は「銀行」のように振る舞う傾向があると指摘する。例えば、エイドデータの分析によると、中低所得国に対する支援1ドルにつき、中国は9ドルを融資として提供している。米国はそのまさに反対で、少なくとも支援9ドルに対して融資1ドルの割合だという。17年頃までには、中国銀行業界の幹部の間で、回収の見込みがない案件への融資を強要されているとして政府への不満が高まっていた。内情を知る業界幹部らが明らかにした」

 

下線部は、中国が融資先国を「食い物」にした証拠だ。相手国をわずかな支援金で釣り、「支援1ドル:融資9ドル」を押し付けた。米国は真反対で「支援9ドル:融資1ドル」である。

 


(5)「問題の多い一帯一路だが、過去10年に多数の国々を中国の勢力圏に引き入れたことも事実だ。国連の採決では、借り手の多くが中国の意向に合わせて票を投じるようになった。中国が融資への消極姿勢を強めれば、一部の国にとっては中国マネーの魅力が薄れ、国際社会の意志決定において中国の影響力が後退することもあり得る。ただ、代替策も練っているという。融資ではなく、助成金などの支援を拡大するといった措置が挙げられる。内情に詳しい関係筋によると、中国当局者はリスク軽減に向けた官民パートナーシップの構築、市場水準を下回る優遇金利での融資といった手段を通じて、一帯一路を持続可能な軌道に乗せる方策も探っている」

 

中国は、一帯一路によって低開発国を味方につけてきたが、焦げ付け債権化でこの状況は一変する。返済方針を巡って対立しかねないのだ。一帯一路は完全に破綻したが、これに代わる負担の少ない方法として「助成金」などを模索している。中国は、貸付残高1兆ドルの6割が回収困難では、人民元相場に影響して当然だろう。