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米FRB(連邦準備制度理事会)は、9月21日3会合連続で「0.75%」の利上げに踏み切った。これに伴うドル高が、米国以外の国々での経済見通しを悪化させている。欧州はロシアとの経済戦争の最前線に立たされている。中国は、何十年も続いた不動産ブームの崩壊を受けて、近年で最大級の景気減速に直面している。

 

米国にとってドル高は、輸入品価格を低下させ、インフレ抑制の取り組みへの追い風になる。しかし米国以外の世界各国は、ドル高の悪影響に苦しんでいるのが事実だ。

 


『ロイター』(9月26日付)は、「ドルしか勝たない『逆通貨戦争』の結末、介入効果弱く」と題する記事を掲載した。

 

米国以外の各国が相次いで利上げや自国通貨を買い支える為替介入に乗り出しているにもかかわらず、ドルの高騰は止まらずに新たな高値をつけている。これは、各国にとってこの「逆通貨戦争」には絶望的な未来が待っていることを物語っている。つまり超タカ派的な米連邦準備理事会(FRB)に勝負を挑んだとしても、最終的な唯一の勝者はドルになる。

 

(1)「今年の9月第3週は早くも歴史的な節目になろうとしている。FRBが3会合連続の75ベーシスポイント:bp(0.75%)幅の利上げに動くとともに、さらなる引き締めを約束し、世界中の市場が足元から崩れる中で、ドルだけが上昇する構図となったからだ。残念ながら米国以外の世界にとって、ドル高は各自の経済と金融市場に大打撃を与える要素であり、そうした惨状が待っている以上、投資家はこれらの国・地域の通貨を一層敬遠してドルに向かうという悪循環が強まる。

 

米国の積極的な利上げ方針に呼応して、世界の資金が米国へ吸い寄せられている。どうにも、手の打ちようがない状況だ。強すぎる米ドルにも「困り者」だ。

 


(2)「例えば、スウェーデンを見てみよう。同国の中央銀行は1993年以降で最も大幅な100bp(1%)利上げに踏み切って市場を驚かせた。だがスウェーデンクローナは対ドルで1週間に4%余り下落し、過去最安値を更新した。欧州中央銀行(ECB)も75bp(0.75%)の利上げを実施し、追加利上げを約束したのにユーロ/ドルの下げ歩調を止められず、23日には0.97ドルと20年ぶりの安値を記録した」

 

スウェーデンは、1%もの利上げをした。だが、スウェーデンクローナは対ドルで1週間に4%余り下落し、過去最安値を更新した。利上げの効果はゼロどころか、国内経済にはマイナス要因を強めることになった。ドルは、磁石みたいな力を持ち始めている。

 


(3)「『通貨戦争』という言葉は2010年に当時ブラジル財務相だったグイド・マンテガ氏が名付けの親。世界金融危機後、先進国間で成長てこ入れとデフレ防止のために相次いで通貨安政策が採用された局面を指す。ところが今は、新型コロナウイルスのパンデミックが和らぐとともに世界中にインフレの波が押し寄せ、事態は完全に逆転。主要中銀は競うように利上げに走り、何とか自国通貨の価値を高めることでインフレを抑え込もうとしている。ただこの「逆通貨戦争」は、FRBとドルに立ち向かっても勝ち目が非常に乏しい」

 

これまでの通貨戦争とは、利下げによる為替相場の切下げを目的にした。現在は、金利引上げによる為替相場切り上げという「逆通貨戦争」に追込まれている。この逆通貨戦争でも、世界の絶対王者ドルに対しては勝ち目がないのだ。

 

(4)「ドル高の打撃は世界各国が感じているが、恐らく最も痛感しているのは日本と英国だろう。円は対ドルで24年ぶりの安値となり、日本政府と日銀は1998年以降で初めて円買い介入を実行。ポンド/ドルも37年ぶり安値まで売り込まれ、英国債が歴史的急落に見舞われたため、イングランド銀行(BOE)もこれまでで最も厳しい局面の1つに置かれた。日英がいかに脆弱な立場にあるかは事実が示している」

 

日本円と英国ポンドが、対ドル「戦争」では辛い立場に立たされている。いずれも、勝ち目がないからだ。

 


(5)「日本政府・日銀はドル/円が150円へと向かう流れをようやく食い止めたとはいえ、市場関係者は介入効果が長続きするかどうか疑問視している。日本政府の外貨準備は1兆3000億ドル相当あり、その大半がドル建て資産。しかしそれだけの規模でも限りがあることは間違いないので、円買い介入能力はいつまでも続くわけではない。また円買い介入は、日銀が長短金利をほぼゼロにする政策運営を継続し、FRBが一段の利上げに動く限り、成功しにくいだろう」

 

日本も1ドル146円台で介入して、円売りエネルギーの蓄積と止めた。だが、この介入効果はいつまで持つかだ。日米金利差は広がるばかりだけに、これがアキレス腱である。だが、介入姿勢を見せてけん制するのも一つの手法。最終的には、米国との話合いが必要な局面も近いだろう。

 

(6)「ポンド安が進んだ現状で、BOEへ何らかの対応を求める声が強まっている。ポンド/ドルは23日に3.5%も下がった。1日の下落率としてこれより大きかったケースは、50年前に変動相場制が始まってからわずか6回しかない。ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏は23日、「今の事態に必要な政策対応は誰の目にも明らかだ。すなわち早ければ次週にも大幅な緊急利上げを行って市場の信認を取り戻すことに尽きる」と記した」

 

ポンド急落は、新政権の減税政策への失望も表われている。為替相場対策で利上げに踏み切れば、減税効果を相殺しかねず難しい選択である。