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今年の成長率3%割れ

経済発展が腐敗招く?

バブル負担を回避策す

 

中国のゼロコロナ政策は、世界「七不思議」の一つである。パンデミックに対して、「ゼロコロナ政策」を堅持しているからだ。WHO(世界保健機関)からも、呆れられほど頑なに都市封鎖を続けている理由は、政治的なものでしかない。

 

中国は、2020年の新型コロナの発生以来、わずかな数の感染者発生でも直ぐに都市封鎖してきた。その表向き理由は、犠牲者を極限まで減らすことにあるとしている。現実には、医療体制の不備が理由である。これを表面化させないためには、人流を減らす都市封鎖しか方法がないのだ。

 

実は、このゼロコロナ政策の中に習近平氏の思惑がすべて封印されている。都市封鎖によってもたらされる経済的犠牲よりも、人間の生命を守ることが重要というメッセージが隠されていることに気付くことだ。これは、習氏がこれから手に入れようとしている国家主席3期目において行なう政策の基本型になるはずだ。つまり、経済成長の停滞を受入れようという驚くべき覚悟がすでにある。

 


習氏は、不動産バブル崩壊の後遺症が、重く長く中国経済を圧迫することをすでに知り抜いているであろう。側近から、進講を受けている筈だ。これを打破するには経済改革が不可欠であるが、そうなると政治的に忌避すべき相手である「経済改革派」の意見を受入れざるを得ない。それは人事面でも、習氏のライバルを育成するに相応しく、習氏の政敵になり得るという大きな危険性を持つのだ。

 

こうして、習氏は自らの身を滅ぼす危険性のある「経済改革派」の台頭を認める訳にいかないのだ。ここは、是が非でも毛沢東主義の完成に向けてリーダーシップを発揮することが、習氏の身のためになる。つまり、習氏の「自己保身」が毛沢東主義の完成という美名によって遂行できる、と判断しているであろう。毛沢東は、自らの権力基盤を守るべく、文化大革命(1966~76年)のもたらす経済大混乱を放置した。その心情が、習氏にも共通していると見るべきであろう。

 


今年の成長率3%割れ

中国経済は現在、厳しい局面にある。IMF(国際通貨基金)は、中国の今年のGDP成長率予想を年初の4.4%から7月には3.3%へ下方修正した。その理由の一つが、ゼロコロナ政策だった。また、住宅価格上昇と家計の債務急増が、不動産セクターの危機を助長している点にも懸念を表明した。一方、世界銀行は9月に今年の中国経済の成長率予測を2.8%に下方修正した。5月には、5.0%と予測していたのである。

 

これまで、中国政府は経済成長率に最も敏感であった。GDPを水増ししてまでも、虚勢を張ってきたのだ。この狙いは、米国との経済格差を少しでも縮め、国威発揚につなげることにあった。こういう、過去の常套手段から見れば、中国が少しでも経済成長に勢いを失えば、テコ入れするはずだが、昨年からそういう本格的な動きがピタリと止まっている。

 


習氏は昨年7月、「共同富裕論」を唱えてセンセーショナルを巻き起こした。2020年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子ども数)が1.30に低下したことにショックを受けた結果だ。それ以前は、1.60という噓データを公表してきたが、化けの皮が剥がされたのである。21年は、OECD(経済協力開発機構)によれば、1.16へとさらに低下している。日本の1.30(2021年)を下回るのだ。

 

合計特殊出生率は、国力の動向を推し量る重要な尺度である。人口横ばいを維持するには、2.08が必要とされている。中国は、この状態から著しく乖離してきた。中国では、すでにゼロコロナ政策による民心離脱によって、結婚・出産への意欲が低下している。今後は、合計特殊出生率が1.0を割込み、世界ワースト1~2位を、韓国と競う国家になるのは時間の問題になっている。

 


習氏が、この状況に危機感を持ったのは正しいが、対応を間違えたのである。原因を、学習塾とインターネット・ゲームによる教育費の増加と見たのだ。さらに、高額の住宅ローン返済も生活を圧迫しているとして、不動産開発企業への融資を抑制する方針を打ち出した。

 

確かに前記の諸要因は、生活を圧迫して教育費用を賄いきれない家庭を生み出している。だが、習氏の狙ったのはこういうインターネット・ビジネスや不動産開発企業に、習氏の政敵が手を延ばしていないかという疑念を持ったのだ。高収益の業種には、習氏の政敵が大株主として潜り込み、高株価や高配当率の恩恵を受けて、政治資金を得ていないかと見たのである。

 

習氏は、自己の権力維持が最大の目的であるので、IT関連産業と不動産開発企業について、融資関係を徹底的に調べさせた。これが、不動産開発企業への融資を滞らせ、現在の不動産バブル崩壊への糸口になっている。調査を受けた金融機関は、1不動産開発企業について国有銀行を含めて40行以上とされる。これら金融機関は、これを契機に不動開発企業へ融資を絞り込むことになった。不動産開発企業のデフォルトが、多発している背景にはこういう政治的要因が影を落としているのだ。(つづく)