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ロシアは、30万人の動員令を出したが、徴兵した新兵にまともな訓練を受けさせることなく、ウクライナ前線へ送る無謀な戦い方をしている。当初から危惧されていた通りのパターンだ。ロシア軍の混乱ぶりが窺える。

 

『ニューズウィーク 日本語版』(9月29日付)は、「プーチンが部分動員したロシア兵、もうウクライナに投降か」と題する記事を掲載した。

 

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が9月21日に出したばかりの「部分動員令」で5日前に招集された兵士が、早くもウクライナ軍に投降したらしいことが分かった。

 


(1)「ウクライナ内務省のアントン・ゲラシチェンコ顧問は、27日にメッセージアプリ「テレグラム」に動画を投稿した。5日前に、ウクライナと国境を接するロシア西部のロストフから動員されたロシア兵とされる人物の動画で、部分動員令によって招集された兵士がウクライナで投降した初めての例だと説明している。「(ウクライナ東部の)クプヤンシク近郊の森で、ウクライナ軍の第92旅団が凍えて怯え切った『動員兵』を捕らえた。所属部隊から脱走し、ロシアに戻ろうとしたが道に迷った兵士だ」と説明している」

 

27日にメッセージアプリ「テレグラム」で5日前としているので22日だ。21日に動員令が出た翌日に、前線へ送られたことになる。訓練もせずに、兵士を前線に立たせたのだ。ロシア軍の疲弊ぶりを覗かせている。

 


(2)「ロシアの脱走兵とされる男は動画の中で、自分は部分動員令でロシア軍に徴兵されたと語った。またウクライナとの戦闘ではロシア側に多くの犠牲者が出ていると述べ、ロシア政府のプロパガンダに耳を傾けてはならない、ウクライナとの戦闘に参加してはならないと呼びかけた。この脱走兵は、自分は戦場に派遣されて3日目にウクライナ軍に捕らえられたと述べ、所属部隊の司令官には一度しか会っていないとも語った」

 

招集された新兵は、補充兵として欠員の出ている部隊へ配属されている。最悪の事態である。これでは、何らの戦力強化にもならず、犠牲者を増やすだけである。

 


(3)「ウクライナ軍参謀本部は先日、フェイスブックのページに行った投稿の中で、ロシア軍の犠牲者が増え続けるなか、適切な訓練を受けていないロシア兵が戦場に派遣されていると指摘していた。「部分動員令の一環として招集された兵士たちが、ロシア軍の各部隊に配備され始めている」と同省は投稿の中で述べ、新たにウクライナに配備される兵士たちは、事前の訓練を受けていないと指摘した。さらに投稿は「ロシアの軍と政府の指導部は、部分動員令に加えて(各地方の首長が自主的に動員を行う)『自主動員』の呼びかけを続けている」と述べた。「罪を犯して有罪評決を受けた者も動員され、既にウクライナでの戦闘に加わっている」と指摘」

 

ロシア軍は、悲惨な戦い方を余儀なくされている。これでは、100万人の新兵を集めても、一片の戦力にもならず消耗品となるだけだろう。

 


(4)「国外追放されたロシアの人権派弁護士、イワン・パブロフが最近結成した法律組織「PervyOtdel」も、動員されたロシア兵たちは、訓練も健康状態のチェックもなしに前線に派遣されていると報告。27日に投稿した動画の中では、ロシアのある動員兵が「自分が所属する部隊は訓練なしで前線に派遣されることになると言われた」と証言している。この動員兵はこう言っている。「みなさん、こんにちは。我々第1装甲連隊は、9月29日に(ウクライナ南部の)ヘルソンに向かう。射撃訓練もなく、基礎理論の説明もない。何もないまま、戦場に送られるのだ」と述べている」

 

訓練も健康状態のチェックもないという。ロシア軍は、この戦争をどのように終結させるのか、青写真がないことを物語っている。完全な「敗戦モード」である。

 


(5)「この前日には、ロシア語の独立系ニュースメディア「メディアゾナ」が、ロシア西部リペツクから戦場に派遣された動員兵の妻に話を聞いている。妻は取材に対して、夫が所属する連隊は1日だけ訓練を受けた後、ドンバス地方の「前線」に派遣されたと語った」

 

ロシア軍が、これだけ急いで派兵していることは、ウクライナ軍の攻撃に「弾よけ」が必要という最悪局面にある証拠である。