あじさいのたまご
   


原油価格は、ロシアのウクライナ侵攻時に1バレル=90ドル見当であった。それが、一時は120ドルを超えるまで暴騰した。現在は、80ドル台まで沈静化している。すでに、ウクライナ侵攻前の状態だ。原油先物相場で見る限り、ウクライナ侵攻は「終息」という見立てになっているようだ。

 

ここで、慌てているのが産油国のOPECである。1バレル=80ドルが産油国の財政収支均衡価格という。OPEC(OPECプラス)は5日、ウィーンで閣僚級会合を開き、11月から日量200万バレル減産することで合意した。世界的な金融引き締めで景気が後退し、原油需要が減るとの見方が強まるなか、産油国の財政圧迫を招く原油相場の下落に歯止めをかけようというものだ。

 


『日本経済新聞 電子版』(10月5日付)は、
産油国 防衛ライン『80ドル』原油下落歯止めに大幅減産」と題する記事を掲載した。

 

石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」が日量200万バレルの大幅減産を決めたのは、産油国にとって財政収支の悪化を招く原油価格の下落に歯止めをかけるためだ。会合前の原油価格は収支が均衡する「防衛ライン」の1バレル80ドル前後で推移していた。このまま放置すれば、一段の財政悪化を招くと危機感を強めていた。

 

(1)「米欧の中央銀行がインフレ退治へ金融引き締めを加速し、世界では景気減速懸念が強まっている。原油需要も落ち込むとの見方から、国際指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は9月26日、一時1バレル76ドル台前半まで下落し、1月上旬以来の安値を付けた。産油国にとって看過できない水準に下がっていた」

 

かねてから、1バレル=80ドル割れになると産油国に深刻な財政欠陥が起こると指摘されていた。日量200万バレルの大幅減産は、価格立て直しに必要としている。

 

(2)「中東産油国は国家の歳入の大部分を原油に依存し、原油価格の下落は財政収支を悪化させる。国際通貨基金(IMF)の推計によると、産油量首位のサウジアラビアの財政収支が均衡する原油価格は1バレル79.2ドル。足元の原油価格がこの水準を下回ると、財政赤字になることを意味する。財政収支が均衡する価格は国によってばらつきがあるが、産油量2位のイラク(75.9ドル)など70ドル台後半に集中する。80ドルが主要産油国に共通する「防衛ライン」といえる」

 

産油量首位のサウジアラビアは、財政収支均衡の原油価格は1バレル79.2ドルという。80ドルを防衛ラインとする背景はこれだ。

 


(3)「各国では脱炭素投資などで財政支出が増え、均衡価格が上昇傾向にある。産油量3位のアラブ首長国連邦(UAE)の均衡価格は2000年~18年平均で約50ドルだったが、足元で76.1ドルに上昇している。再生可能エネルギーなどへの投資拡大方針を掲げるなど、各国は積極財政を打ち出す。サウジは新型コロナで石油収入が急減した20年は財政状況が厳しかったが、経済再開やロシアのウクライナ侵攻後の原油高が追い風になった」

 

産油国も、脱炭素投資などで財政支出が増えている。このため原油の財政収支均衡価格が上昇している。UAEの場合、かつては50ドルの均衡価格が現在、76ドルまで上がっている。「脱炭素投資」で原油の均衡価格が上がっているのだ。

 


(4)「OPECプラスの主要メンバーであるロシアにとっても、原油価格の下落は悩みの種だ。ロシアはウクライナへの侵攻で膨らむ戦費を原油価格の高騰で賄っている。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの石油輸出による月間収益は推計177億ドル(約2兆5500億円)で、6月以降の原油価格の下落で12億ドルほど収入を減らしたとみられている。エネルギー調査機関などの推計では、西側諸国の禁輸などでロシアの生産量が落ちた分、ロシアの財政均衡に必要な原油価格は80ドル前後と以前の60ドル台から上昇したとみられている。会合前には、大幅減産の検討を求めていたのはロシアだったとの見方も出ていた」

 

ロシアは、ウクライナ侵攻ですでに8月単月で財政赤字になっている。自業自得であるが、ロシアの場合は経済制裁により1バレル20ドル程度の値引きを販売している。ロシアは、国際市況通りの価格販売でないのだ。EU(欧州連合)側は、ロシア産原油購入打切り目標を今年年末としている。ロシアは、ますます値引き販売を余儀なくされるよう。