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西側から警戒される中国

中ロ枢軸は解体の運命へ

破綻した中国の一帯一路

 

ロシア大統領のウラジーミル・プーチン氏は、10月7日に70歳になった。中国国家主席習近平氏は、6月15日生まれで69歳である。この両氏は、年代が接近していることや世界観が重なっていることで、対米国へ強烈な反発心を強めている。いわゆる「中ロ枢軸」と言われる関係を築くにいたった。

 

だが、プーチン氏はウクライナ侵攻を始めて、習氏は外交的に極めて困難な立場に立たされている。今年2月4日の中ロ首脳会談の共同声明では、「限りない友情」を謳い挙げるほどであった。この文言は、中国側の要請で挿入されたとされる。2月の冬季五輪北京大会で、西側首脳は一人も出席しなかったので、その反動で「中ロ密着」を演出したかったに相違ない。

 


この中ロ首脳会談から20日後に、ロシアはウクライナ侵攻を始めた。プーチン氏は当然、中国の支援を期待していたに違いない。これを見越した米国は、中国へ強烈な圧力を掛けることになった。ロシアへの経済制裁と同様の「二次制裁」をちらつかせたのだ。中国は、ファーウェイがイラン経済制裁への違反で「二次制裁」を科され、副会長がカナダで長期拘留という「痛い目」に遭遇した。こういう実例が身近にあるので、経済界はロシアとの取引を大幅に制限した。

 

板挟みあった習氏は、ロシアのウクライナ侵攻の正統性を支援するという、とんでもない事態に発展した。いかなる理由があっても、主権国家を侵略することは国連精神からも許されることでないのだ。中国は、この重要な一点からはみ出てしまったのだ。これが、西側諸国から、ロシア同様に中国も安全保障上において「危険な存在」と位置づけられることになった。

 


中国は、台湾統一問題を抱えている。最終的には「武力統一」を掲げており、8月には台湾を包囲する形の軍事演習までして見せた。これが一層、中国への警戒観を高めている。中国が、ロシアのウクライナ侵攻に合わせる形で、台湾侵攻を企てるのでないかという危機感だ。欧米は、ウクライナ侵攻からの連想で中国の地政学的リスクを計算し始めているのだ。

 

西側から警戒される中国

中国は、今やロシアと同じ範疇の「危険な権威主義国家」として括られている。価値観を同じくする西側国家が、他国への侵攻は自由と民主主義への重大な挑戦という認識の下に、ロシアを支援する中国へ警戒観を強めているものだ。

 

現在、ウクライナへは40ヶ国が、米国のリーダーシップの下で軍事支援体制を組んでいる。ウクライナは、EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)に加盟していない。ただ、ロシアの侵攻後にEUとNATOへの加盟を申請したところである。このように、ウクライナはまだ欧州の代表的な機関へ加盟していなくても、EUやNATOは同じ価値観である自由と民主主義を守るという視点から馳せ参じているほど、世界は変化している。従来にないパターンだ。

 


中国は、こういう新たな世界の潮流を見逃している。中ロが団結すれば、西側諸国の価値観に対抗して、権威主義的な世界秩序へ塗りかられるという野望を持っている。現実に、ウクライナ戦争で、ロシア軍は劣勢に立たされている。唯一のロシアの「相棒」中国は、米国の経済制裁が恐ろしくてロシアを支援できない状態だ。米国を中心とする西側の実力は、依然として大きな影響力を持っているのだ。

 

中国は、ロシアを「見殺し」にせざるを得ない状況下に置かれている。ロシアは、こうして最後の「地獄の選択」として、戦略核の使用が噂されるほどだ。ロシアは、仮に投下して勝利への展望が開けるのかと言えば、それは不可能である。西側からの「報復攻撃」がある。その報復戦術は、核を使わない通常兵器による壊滅的戦術という。

 

ロシアが、こういう危ない橋を渡ることは、「中ロ枢軸」の中国へも逆風として伝播するリスクを高めるのだ。中国は、この高リスクに身をさらすことのデメリットが、いかに大きいかを計算に入れているだろうか。中国への「火の粉」を払いのけるには、ロシアへ核を使わせない圧力を掛けることだ。その前に、ロシアへ停戦させる努力も求められる。この際、中国はウクライナ侵攻と無縁でないことをはっきりと認識すべき段階に来ている。

 


中国が、ロシアに「核不使用」を説得する動きを見せれば、中国へ抱く西側の危機感も少しは和らぐ可能性もあろう。その動きも見せないとすれば、ますます中国への警戒観を高めることになろう。

 

中国を対象とする海外投資家は、中国の抱える広範は地政学的リスクに敏感になっている。すでに、中国の有価証券は大幅な売越しが続いている。中国の金融市場からの海外マネーの流出が止まらないのだ。外国人投資家は8月まで7カ月連続で中国債券の保有を減らし、その間に12兆円が流出したほどである。英調査会社ウィズ・インテリジェンスによると、中華圏投資に特化するヘッジファンドからの資金流出額は、17月で計36億ドル(約5200億円)と08年以降で最大規模になった。(つづく)

 

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