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ロシアは、ウクライナの戦況悪化が注目の的であるが、国内経済も予断を許さない状況になっている。3万人動員令のほかに、徴兵を嫌って大量の青壮年が国外脱出しているからだ。脱出組は、高度の技術者とされており、ロシア経済は年末にかけて「経済危機第2波」が襲いそうな状況になった。

 

『ロイター』(10月14日付け)は、「ロシア経済、部分動員で回復腰折れか 生産性や需要に打撃」と題する記事を掲載した。

 

ロシア経済は、すでに西側諸国による経済制裁のために既に打撃を受けている。今度は、国内的な要因でさらに痛めつけられる展開になってきた。プーチン大統領が9月21日に出した部分動員令が生産性に打撃を与え、需要と景気回復の足を引っ張る恐れが強まっているからだ。

 


(1)「これまでに何十万人もの男性が、徴兵されるか国外に逃亡した。西側の制裁にもかかわらず当初の想定より底堅く推移してきたロシア経済には、投資活動をまひさせてしまう不確実性という厄介な問題がのしかかりつつある。セントロクレジットバンクのエコノミスト、エフゲニー・スボーロフ氏は「部分動員令や地政学的リスクと制裁リスクの高まりによって、経済危機の第2波が始まろうとしている」と語り、ロシア経済は年末にかけて一段と縮小すると予想した

 

部分動員令は、ロシア社会へ衝撃を与えた。それまで、ウクライナ侵攻は「よその戦争」という意識で暢気に構えていた。動員令で、それが身近な戦争になったのだ。多くの青壮年が、徴兵という恐怖に怯えて脱出した。これによる労働力不足が、年末にかけてロシア経済を襲うと見られるにいたった。

 


(2)「ロシア経済発展省が、今年の国内総生産(GDP)成長率について、12%を超えるマイナスになるとの見通しを発表したのが4月。それ以降は、原油高と経常収支の黒字拡大を追い風に、政府の経済見通しは着実に上向いてきた。9月終盤にロイターが実施したアナリスト調査では、今年のロシアのGDP成長率の予想はマイナス3.2%で、経済発展省の予想は同2.9%。来年はアナリストの予想がマイナス2.5%なのに対して、経済発展省は同0.8%とはるかに楽観的だ。だが、ロシアがウクライナでの軍事作戦強化を進めているのに伴って、ある程度姿を見せてきた景気回復は腰折れしかねない

 

原油高と経常収支の黒字拡大を追い風に、政府の経済見通しは着実に上向いてきた。ただ、8月から財政赤字に転落している。軍事費が、嵩んでいるためだ。そこへ、今回の動員令と国外脱出による労働力不足が加わる。事態は容易ではなくなってきた。

 


(3)「ベテランのエコノミスト、ナタリア・ズバレビッチ氏は、「部分動員が主としてもたらす結末は、人的資本の喪失だ」と述べ、いつトンネルの出口の明かりが見えるのか分からない以上、最大限の恐怖と何もかもが不確実という状況が、急激に広がってくると説明した。実際、部分動員の期間や最終的な規模はなお判然としない。こうした中でロシアのメディアは、
推定で70万人が部分動員令の発表以来、国外に逃げ出したと伝えているロクコ・インベストの投資責任者、ドミトリー・ポレボイ氏の見積もりでは、ロシアの労働力人口の0.4~1.4%が既に逃亡したか、戦場に投入されようとしている招集兵になっているという」

 

動員令発表後に推定では、実に70万の人が国外に逃げ出したと伝えている。いずれも、高技能者である。外国へ出ても生きていける技能を身に付けている人たちだ。ロシア経済には、大きな痛手になる。

 


(4)「ポレボイ氏は、折しもロシアが先進的な機器や技術を手に入れにくくなっている局面にあるだけに、部分動員はロシアの人口動態、労働市場、投資環境という観点で痛手になると分析。「人的資本だけが経済をけん引する力として計算できたのに、生産年齢人口の一部は徴兵され、別の一部は逃げ出している」と嘆いた」

 

部分動員も労働力不足に拍車を掛ける。前線へ借り出されれば、何割かが死傷の身になる。労働力不足になることは間違いない。

 

(5)「動員令では、中小企業が最大の被害者になろうとしている。ズバレビッチ氏は、「最悪の事態が訪れるのは、中小企業だろう。徴兵猶予を働きかける政治的手段はなく、2人か3人の要となる従業員を失えば、事業が成り立たなくなる」と話す。間の悪いことに物価が再び上昇する気配を見せ、中銀の利下げサイクルは幕切れを迎えそうで、部分動員が経済にショックをもたらせば、政策担当者にとって新たな頭痛の種になってもおかしくない」

 

動員令で、最大の被害は従業員2~3人の零細企業であろう。この中から従業員を1人でも失えば事業が成り立たなくなる。こういう事態になれば、ロシア経済は目詰まりを起そう。