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ロシア軍が、ウクライナで苦戦している。ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者、プリゴジン氏は、プーチン大統領に「軍の幹部が戦争を誤らせていると直言した」と米紙『ワシントンポスト』が伝えた。それによると、ロシア軍が「ワグネル」の傭兵に頼る一方で、十分な資金と物資を与えていないと不満を口にしたとのことだ。

 

こうした戦況不利の中で、欧州ではロシアに政変が起こる場合、どのような形になるかを語られ始めている。クーデターか民衆蜂起か。いろいろ形が想像されるが、結果は誰にも分からないのも事実。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月27日付)は、「追い込まれたプーチン氏 欧州が占う政変4つのシナリオ」と題する記事を掲載した。

 

なりふり構わぬやり方でウクライナの攻勢を押しとどめようとするロシア。核の脅しというカードまで振りかざすが、プーチン政権はいずれ行き詰まるとの見方が欧州政界で強まってきた。取材をすると4つのシナリオが浮かぶ。

 

(1)「ウクライナを支える欧米諸国を核兵器でけん制するロシア。「ロシア軍の位置に大きな変化はない」(北大西洋条約機構=NATO=のストルテンベルグ事務総長)、「プーチン氏は(核保有国としての)責任をわかっている」(マクロン仏大統領)。欧州の要人から「核を使う可能性は低い」とのコメントがここにきて相次いでいる」

 

欧州は最初、プーチン氏の「核発言」に驚かされたがその後、落ち着きを取り戻して対抗策を練るゆとりを持ち始めた。

 

(2)「もっとも、最悪の事態に備えた検討はしているようだ。仮に核兵器が使われたらどうなるのか。米国が巡航ミサイルなどでウクライナ領内のロシア軍を攻撃。独仏英なども加わり、ロシアの黒海艦隊と戦車群を壊滅させる――。表向きは沈黙を守る欧州の外交・安保関係者に話を聞くと、そんな展開が想定される。核では反撃せず、あくまでも通常兵器でウクライナ軍を支援するのがポイントだという」

 

下線のような対抗策が、取られそうだ。通常兵器で、ロシア軍を殲滅させるというもの。ここまで対抗策が明らかになると、ロシア軍も迂闊に動けまい。ウクライナ軍は、ウクライナ全土に広く布陣しており、一カ所に集中しているのではない。

 

(3)「第3次世界大戦につながりかねない恐ろしい想定だが、「核を使用してしまえば『核を使うぞ』という脅しも効果がなくなり、いよいよロシアは追い詰められる」と政治評論家セルゲイ・スムレニー氏(元ロシア反体制派ジャーナリスト)は言う。プーチン政権が崩壊するとしたら、どんな道筋が考えられるのか。欧州の当局者は、大きくわけて4つのシナリオを想定する」

 

ロシアが、核を使えば国際世論は完全に「反ロシア」に向かう。これは、ロシアにとって致命的な打撃になる。建前上、「核使用賛成国」はいないはずだ。

 


(4)「1つ目はクーデター。プーチン体制を支える治安・軍要員(シロビキ)の一部が離反し、政権中枢部を拘束するという展開だ。「反乱を起こすとしたら悲惨な前線を知る佐官など現場指揮官クラスではないか」(スムレニー氏)」

 

常に話題となるのがクーデターである。これは、ロシアが国家として浮沈の瀬戸際にまで追込まれるときだ。

 

(5)「2つ目は民衆蜂起。モスクワなど大都市で大規模な抗議デモが連日のように続き、最終的には軍の一部が市民側に合流して武装蜂起のような形になる。1989年、ルーマニアで独裁者チャウシェスクを倒したような「革命」のロシア版だ。

3つ目は国民の大量亡命だ。東ドイツは1989年、市民の西ドイツへの大量流出と、政権への抗議デモのダブルパンチで共産独裁政権を放棄せざるを得なかった。

4つ目は地方の離反。広範な自治権がある共和国などが「独立」あるいは「ウクライナ戦争からの離脱」を一方的に宣言するケースだ。いまウクライナ戦線で手いっぱいのロシア軍は地方の反乱を鎮圧する余裕はない、とされる」

 

民衆蜂起、国民の大量亡命、ロシアの地方離脱のうち、もっとも可能性があるのは地方の離脱であろう。戦死者が地方に集中している現実や、経済的に補助を受けられなくなれば、反旗を翻す可能性もある。

 

(6)「ロシア国民のあいだで際立った経済的な困窮があるわけではなく、ルーマニアのように軍と市民が一体になって武装蜂起する気配はない。徴兵などから逃れるため、数百万人がカザフスタンやジョージアに出国したとされるが、これは人口1億4000万人の数%にすぎない。冷戦期に国民の5人に1人が西側に亡命した東ドイツの水準を大きく下回る。プーチン政権が倒れるまでウクライナの苦しみは続く」

 

ロシアの地方は、プーチン氏が核を使えば「核反対」の動きを強めて、離脱する可能性がありそうだ。核は、「禁断の木の実」である。使ったら、その後にどんな事態が起こるか。ロシアにとって有利なことはゼロである。