
習近平氏は、先の共産党大会で2049年に「中国世界一」宣言をしたことで、市場は仰け反るほどの衝撃を受けた。実現の可能性がゼロであるからだ。本欄は、こうした習氏の野望について、繰り返しその「可能性ゼロ」を強調してきた。市場は改めて、習氏の「自立自強」戦略と、「世界一論」が完全に矛楯していることに驚愕して、株式と人民元を売り込んだのであろう。
『ブルームバーグ』(10月27日付)は、「中国習主席の2049年目標、世界支配を意味と専門家 経済犠牲いとわず」と題する記事を掲載した。
中国の習近平国家主席は少なくともあと10年、場合によっては終身にわたり統治を続ける体制を整えた。そこで問題となるのは、その権力を使って習氏が何をするのかだ。
(1)「習氏は、自らが目指す中国の方向を明確にしている。先週の共産党大会の開幕式では、中国を2035年までに近代的な社会主義大国とし、1人当たり所得を引き上げ、軍を近代化させる目標をあらためて唱えた。そして中華人民共和国の建国100年を迎える49年までには、「総合的な国力と国際影響力という点で、世界をリードする」国にしたい考えだ」
中国が、経済面での裏づけなしに「世界一」になることは不可能だ。習氏の経済政策は、市場主義に背を向けて計画経済に固執している。これでは、中国経済が世界一になる機会を失う。習氏は、「下放」で中学と高校の系統だった教育を受けていない。この空白が基本的な思考力を歪めているとしか思えない。大学は理系である。いわゆる「一般教養」科目の知識が欠落しているに違いない。こういう人物が、中国の最高権力を握っている。危険極まりないのだ。
(2)「市場が不安視しているのは、どのようにして習氏がそれを実現しようとするのかだ。5年に一度の指導部交代では自身の側近で最高指導部を固め、とりわけ上海市トップの李強党委員会書記を中央政府での経験がないにもかかわらず首相に抜てきした。この人事が明らかになった今週前半、中国資産は売り浴びせに見舞われた。習氏は優先課題の軸足を経済発展から安全保障に移す考えも示唆。ライバルを完全に排除した習氏がどのように中国を動かしていくのか、投資家は懸念を強めている」
習氏は、市場暴落が中国へ「警告」したことに反感を持っているであろう。「資本が謀略を仕組んだ」程度にしか感じまい。先に英国で首相が辞任した。これは、市場が政府の経済政策へ「ノー」を突付けた結果だ。資本主義国は、市場経済システムであるから、市場の反応は大きな意味を持つ。習氏は、市場ですら「敵対的存在」に映っているに違いない。民主主義国では、市場=公正(フェア)という認識である。
(3)「英国の元外交官で王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究員、チャールズ・パートン氏は、「2049年の目標を達成したとして、自分の名前を歴史に刻みたいのだろう」と、指摘する。「共産党用語を解釈するなら、米国をたたき落として中国が一番になり、世界を中国の利益と価値観に沿うような体制とすることだ」と、習氏の目標を説明した」
習氏が、客観的な立場を重視する人物であれば、自己の名前を歴史へ意図的に残そうとは考えまい。この前近代的な習氏の思考が、結果として中国を不幸な道へ追込むであろう。
(4)「習氏の指針には矛盾も多い。経済成長の押し上げを掲げる一方で、「ゼロコロナ」政策継続でロックダウン(都市封鎖)を実施。テクノロジーの自給自足を目指しつつも、テクノロジー業界の利益は無視。開放を進めるとしつつ、言論の自由と資本の移動は制限。何よりも、「歴史的任務」完了と「中華民族国家の復興実現」のためだとして台湾を巡る破滅的な戦争に突入すれば、壮大なビジョンの実現には恐らく最大の問題となる」
中国が世界一になるには、経済が世界一にならなければ、軍事力も世界一になれないのだ。習氏は、軍事力で世界一を目指しながら、経済では逆走している。ここに矛楯を感じないとすれば、正気の沙汰ではない。狂気と言うほかないのだ。
(5)「香港大学の劉冬舒助教は、「習氏は歴史上の要人として名前を残すことを目指している。過去には経済発展と矛盾する方針が掲げられれば、中国はそれを実行しないと考える人が多かった。だが今は、経済発展と市場の信頼を犠牲にすることをいとわない度合いがはるかに高まったように見える」と語った」
中国が、狂気の集団と化していることは間違いない。マルクス主義によれば、資本主義が最終的に共産主義になるとしている。中国は、まだ資本主義を「マスター」していないのだ。よって、「社会主義の現代化」は不可能である。中国は、狂信集団になったようである。

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