ロシアのショイグ国防相は23日、30万人の「部分動員」が終了したと述べた。動員された新兵8万2000人が紛争地域に派遣され、そのうち4万1000人が部隊に配属されたことを明らかにした。21万8000人は訓練中という。ショイグ氏は「これ以上の措置は予定されていない」とした。今後は、ロシア国内の数百万人の予備兵を動員するのではなく、原則として志願兵や職業軍人を派遣する方針である。
ロシアが、200万人とされる予備役兵の動員を諦めた理由は何か。国民の動員忌避の動きが活発化していることだ。動員令の掛る可能性がある人々は、一斉に姿を隠しており、海外逃亡者が増えている。モスクワ市役所では、3分の1が逃亡したという情報が出て来た。
『ニューズウィーク 日本語版』(10月29日付)は、「モスクワ市職員の3分の1が『国外逃亡』情報 動員後の劣悪すぎる状況を恐れて」と題する記事を掲載した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。ロシアでは、徴兵を逃れようとする国民の「大量脱出」が起きている。
(1)「地元メディア「Nestka」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家らが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている」
多くの専門職の人々が、職場を逃げ出している。職場に私物を残したままの状態であり、いかに切迫していたかを示している。戦争への強い拒絶感を物語る。
(2)「プーチンは9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなどの近隣国に逃れた。10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。ロシア人ジャーナリストのロマン・スーペルは10月14日、ロシア政府の情報筋の話として、モスクワ市政府の部局長だったアレクセイ・マルティノフ(28)の死を受け、市職員が相次ぎ辞表を提出していると、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。マルティノフは戦闘経験がないにもかかわらず、9月23日に徴兵され、10月10日にウクライナでの戦闘中に死亡したという」
10月中旬、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことが判明。これが引き金になって、モスクワ市職員の「大量逃亡」が始まった。戦死したこの職員は、9月23日に徴兵されて10月10日に死亡である。モスクワ市職員が、この悲劇に恐れをなすのは当然であろう。招集=戦死では、余りにも残酷である。
(3)「政府筋はスーペルに、「大量脱出が起きている。職員がメモを残して去っている。IT技術者、広告やマーケティング、広報の担当者や、一般の公務員もだ。まさに大量脱出だ」と話している。スーペルは「動員されたモスクワ市政府職員のアレクセイ・マルティノフが死亡したことが、昨日明らかになっている」と指摘した」
ロシア政府筋すら、大量脱出を認めているほど。招集されて間もない戦死では、誰でも逃亡するだろう。ましてや、大義のない戦争である。この戦いで命を落とすことは、「犬死」に
なる。
(4)「ロシアの国営メディア放送局RTの副編集長ナターリャ・ロセバは、マルティノフは軍に入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと、自身のテレグラムのチャンネルで伝えた。「彼は若い頃、セミョノフスキー連隊に所属していた」とロセバは指摘。「彼には戦闘経験がなかった。(入隊から)数日後に前線に送られ、10月10日に英雄として死亡した」と述べた。ラトビアに拠点を置くロシア語の独立系ニュースメディア「Meduza」によると、セミョノフスキー連隊は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当しているという」
国営メディア関係者すら、モスクワ市職員が入隊したわずか数日後にウクライナで死亡したと認めている。この戦死した職員は、ロシア大統領とクレムリンの警備を担当し戦争経験はゼロであった。
(5)「著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、ロシアからリトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。ロシア国営通信社タス通信は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている」
元大統領候補者も国外逃亡している。大統領選挙に立候補したほどだから、プーチン氏の政敵に当る。こういう事情から、プーチン氏が再び立候補できないように「招集する」ことを恐れたのであろう。生命の危険を感じれば、誰でも逃亡して当然であろう。
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