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中国経済は、最大の危機に直面している。それにも関わらず、次期首相候補の李強(リー・チャン)氏は経済政策の素養ゼロという「ハチャメチャ」人事が発令されよう。李氏は、最高指導部では、2位にランクされている。当然、首相ポストに就任だ。

 

李氏は、習近平氏に忠勤を励んだことで取り立てられた人物とされている。上海市トップとして2ヶ月も「ゼロコロナ政策」を行なって、市民から大変な批判を浴びた経緯がある。習氏の意向には100%従うことで、首相のポストを得ただけという酷評も聞かれる。

 

『日本経済新聞 電子版』(10月31日付)は、「李強氏、経済手腕は未知数 首相候補」と題する記事を掲載した。

 

中国共産党序列2位の李強氏が、2023年3月の首相就任に向けて急ピッチで準備を進める。近く副首相に就くとみられる。「ハイテク研究に熱心」との評価がある一方、中央政府での勤務経験がない。マクロ経済運営の手腕は未知数だ。

 

(1)「李強氏は上海市に近い浙江省生まれ。地元の農業大学の分校で学んだ。浙江省政府で農民の救済事業などを担当し、浙江省温州市のトップに就いた。転機は2002年に浙江省トップとして赴任した習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)との出会いだ。党委員会の秘書長として支え、信頼を得るようになった。習氏が党トップに就いてから江蘇省や上海市のトップを任され、今年10月に最高指導部である政治局常務委員のメンバーに選ばれた」

 

中国経済は、不動産バブル崩壊後の過剰債務によって押し潰される状況になっている。本来ならば、改革開放政策の継続をすべきだが、習氏の「反企業主義」によって企業管理を強める逆コースを選択する。習氏は、政敵が民営企業の株主として利益を得るのを警戒している結果だ。要するに、習氏の利益優先で「反企業主義」になっている。

 

こういう状況下では、李氏が手腕を発揮できる余地はない。それでも、李氏に経済知識やマクロ経済政策の素養があればまだしも、それもないとすれば、完全な「イエスマン」になるほかない。歴代中国の首相では、最悪ケースとなろう。周恩来とは比較すべきもない。

 

(2)「李氏を知る共産党員は、「口数が少なく、だれに対しても腰が低い」と語る。上海市トップとして今春、新型コロナウイルス対応のロックダウン(都市封鎖)に踏み切った。短期間のはずだった封鎖が2カ月に及んだ不手際は国民の反発を呼んだ。インターネット上では封鎖中の視察先で住民の抗議を受ける動画も拡散された。都市封鎖で猛烈な批判を浴びた李氏だが、別の党員は「米テスラを上海に誘致できたのは紛れもなく李氏の手柄だ」と弁護する。李氏が、地元当局にテスラの税制優遇や安価な土地の貸与などを指示したのが決め手になった。ハイテク分野の研究に余念がないとの指摘もある」

 

李氏の手腕は、米国テスラ(EV)を誘致したことという。「土地本位制」のメリットを与えた側である。それだけに、今後の不動産バブル解決にメスを振るえるかどうかだ。

 

(3)「スピード出世を遂げた李氏だが、中央政府である国務院での勤務経験はない。現首相の李克強(リー・クォーチャン)氏や前首相の温家宝氏は、5年の副首相経験を経て首相に就いた。副首相経験者を首相候補への登竜門と位置づけてきたのは、それだけ首相の所掌範囲が多岐にわたり、重責であることを物語っている。李氏は首相登板まで準備期間が5カ月足らずしかなく、今から副首相に就いても経験をどこまで積みあげられるのか不安を残す」

 

李氏は、副首相経験者がゼロというハンディも背負っている。こういう人物を首相に任命する習氏の腹は、操縦し易いということだけにあるのだろう。現首相とは、しばしば意見対立があったというから、今度は「イエスマン」を据えるのだ。

 

(4)「中国経済は、新型コロナの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で停滞局面が長引いている。バブルを抑え込むための規制強化が住宅不況を招き、不動産経済からの脱却も見通せていない。地方では急速な少子高齢化や人口流出で経済が疲弊している。農村系金融機関の破綻など金融不安のマグマもたまっている。輸入資源などの価格を押し上げる人民元安も歯止めがかかっていない」

 

中国経済の現状が、李氏にとって重荷であることは確実である。国務院の専門家から見れば、「頼りない首相が来た」と早くも侮られていることは確実だろう。

 

(5)「首相就任後は習氏の意向をくみ取って、格差縮小をめざす「共同富裕(共に豊かになる)」政策の具体化などに着手するとみられる。山積する課題への対応も待ったなしだが、危機対応への不安はくすぶる」

 

「共同富裕論」は、税制が解決する問題である。「金持ち優遇」の現行税制では、永遠に解決不能である。富裕階級には、固定資産税を課して負担させるべきである。新首相に、その勇気があれば天晴れだ。