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中国は、米国から先端半導体の技術・製品・製造設備のワンセットについて、事実上の意輸出禁止令を受けた。これまでの中国であれば、声高に反論して報復するはずだが、全くの音無しの構えである。報復する手段がないからだ。この一事を以てしても、米中の半導体技術の格差がいかに大きいかを物語っている。勝負は、ついているのだ。

 

米政府が半導体に続き、バイオ分野でも核心技術の中国輸出を制限する方策を検討していることが分かった。アラン・エステベス米商務次官(産業安全保障担当)は10月27日(現地時間)、バイオ技術や量子コンピューティングなどで追加輸出制限措置を発表する可能性について、「もし賭けをするなら、そこに金をかける」と話した。エステベス次官は、バイオ技術などについて「私のレーダーの中にある」とし、「毎週職員と規制措置について議論している」とも話した。『東亜日報』(10月31日付)が報じた。米国は、半導体に続いて「第二弾」「第三弾」を用意している。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月31日付)は、「米の半導体輸出規制、中国の報復は容易ならず」と題する記事を掲載した。

 

中国政府はこれまでのところ、ジョー・バイデン米政権が導入した広範におよぶ半導体の対中輸出規制に対し、報復措置を講じていない。だが、第20回党大会で習近平国家主席の3期目続投が正式に確定したことで、状況は変わるかもしれない。

 

(1)「中国にとって、報復の容易な選択肢はない。米政府は10月、半導体技術の対中輸出について厳しく広範な規制を導入。そのとき、中国指導部は5年に1度開かれる重要な共産党大会の準備に追われていた。米国による輸出規制は極めて広範囲に及ぶため、厳格に施行されれば、中国の半導体産業の発展を大幅に遅らせ、半導体製造の自給自足を目指す習氏の野望を事実上打ち砕くことになる。だからこそ、中国政府は対抗措置を考えなくてはならない。中国が依然として外国技術に大きく依存していることを踏まえると、半導体分野で報復を図るのはほぼ不可能だろう

 

下線のように、今回の米国による対中半導体輸出規制は、中国の半導体自給自足計画に破壊的な影響をもたらす。それでも、中国は報復できない。その苦衷ぶりが分かるようだ。調子に乗って「米国打倒」を叫んだゆえに陥った大穴である。米国の怖さを知らなかったのだろう。

 

(2)「クアルコムをはじめとする多くの米半導体企業は、収益の大部分を中国から得ている。こうした米企業からの半導体購入を拒否すれば、自らの首を絞めることになる。中国に大きなエクスポージャーを抱える米企業を標的にすることは、選択肢の1つかもしれない。米アップルはスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の大部分を中国で製造しており、同国での売上高が全体の5分の1近くを占める。このため、トランプ前大統領が米中貿易戦争を仕掛けていた当時をはじめ、中国政府の標的になる可能性が長らく指摘されてきた。だが、依然として実質的な措置は導入されていない」

 

中国は、目先の損得について計算が可能だ。だが、中長期による米国との対立で、中国はどのような不利益を被るかという合理的な計算ができないのだ。民族主義の怖さがここにある。かつて日本も、目先の計算だけで真珠湾攻撃を敢行し、その後に大敗を招いた。中国も、同じ誤りに陥るだろう。

 

(3)「これは、アップルやそのサプライチェーン(供給網)に組み込まれた企業が、中国で膨大な数の人々を雇用していることも一因だ。アップルへの対応が厳しすぎれば、中国の低調な労働市場が甚大な巻き添えを食うことになる。しかも結局のところ、中国政府にとって米企業は、ワシントンに存在する残り少ない擁護者だ。本格的に報復措置を講じれば、こうした米企業との関係を台無しにしかねない」

 

外資系企業は、中国の雇用安定に大変な貢献をしている。中国が、米国への報復をするとなれば、アップル追放が最適になろう。だが、中国はそれを抑えている。雇用不安が発生するからだ。

 

(4)「トランプ前政権が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に制裁を科した後、米企業が報復措置を受けることはあまりなかった。だが、中国当局はクアルコムが計画していたオランダ半導体メーカーのNXPセミコンダクターズ買収を承認しなかった。そして現在、複数の買収案件が中国当局の承認を待っている。その1つが米半導体大手インテルで、イスラエルの半導体メーカー大手タワー・セミコンダクターを60億ドル(約8800億円)で買収するために手続きを進めている。調査会社ゲイブカル・ドラゴノミクスは、インテルの取引の行方が中国当局による今後の米企業の扱いを示唆する道標になると指摘する」

 

中国のできる報復は、大型企業合併案件への承認を渋ることである。この当りに、中国の真意を掴める機会があろう。

 


(5)「
米政府による半導体の対中輸出規制は壊滅的な打撃をもたらすことから、中国政府は強硬な対応を示さなくてはならない。だが中国にとって、自国にダメージを与えない容易な選択肢はない。中国がどこまで強気に出るかは、米中関係がどれほど悪化するかを示す強力なシグナルになるだろう

 

中国が、本気になって米国へ立ち向かうのは、台湾侵攻を決断した時であろう。何もかも捨てて、米国と捨て身で闘う意思を示した時だ。それが、リトマス試験紙となる。