西側諸国にとって、ロシアのウクライナ侵攻が中国の台湾侵攻リスクを高めている。こうして、中国警戒論が強まると共に、ドイツでも中国との関係見直しが強まってきた。ドイツ・ショルツ政権では、連立を組む「緑の党」などが中国との関係見直しを主張している。時代は、大きく転換した。
英紙『フィナンシャル・タイムズ』(10月27日付)は、「ドイツ産業界と中国企業の蜜月関係に亀裂」と題する記事を掲載した。
長年にわたって中国向けの売り上げを急増させてきたドイツの中小企業の多くが、中国でのビジネスの見直しを迫られている。「ミッテルシュタント」と呼ばれるドイツの中小企業が、かつてのように中国事業による利益に頼れなくなってきている、と在中国欧州連合(EU)商工会議所のイェルク・ヴットケ会頭は指摘する。「(中国との)蜜月関係は終わった」
(1)「ドイツと中国は、世界で最も互恵的な貿易関係の一つを築いたが、今やそれが崩れ去ろうとしている。ドイツ企業は中国の輸出企業に機械を供給することで利益を上げ、中国メーカーはドイツ製の機械を使ってグローバル・サプライチェーンのなかで重要な地位を占めるようになった。21世紀初め以来の20年余りで、中国はドイツにとって主要な海外市場になった。この間、ドイツの輸出全体に占める中国のシェアは、1%強から7.5%まで増えた。ドイツの対中国輸出は、2021年に1000億ユーロ(約14.7兆円)を超え、米国に次ぐ第2の輸出市場になった」
ドイツの前首相メルケル氏は、中国と蜜月関係を結び、ドイツ企業の中国進出をバックアップした。中国企業は、ドイツ製機械を輸入して製品輸出を促進した。ドイツ・中国は、ウイン・ウインの関係であったのだ。
(2)「ベルリンにあるグローバル公共政策研究所のトルステン・ベナー所長は、中国との互恵的な経済関係は、16年続いたメルケル前政権の後期にみられた「ドイツ経済モデルの黄金時代」を形成した重要な要素だったと分析する。ブリュッセルに本拠を置くシンクタンク、ブリューゲルのシニアエコノミスト、アリシア・ガルシア=ヘレロ氏は、ともに輸出大国であるドイツと中国の関係にあった高揚感は、ドイツの対中輸出が減少し始めたことで、落胆ムードに変わりつつある、という。「中国の製造業が、付加価値の高い事業へと急速にシフトしたことで、ドイツでは貿易黒字が縮小し、産業競争力の一部が失われつつある」のだ」
中国は、輸入代替を進めて国内で機械の生産を始めている。これは、経済成長過程では通常、起こる現象である。日本も「一号機」を輸入して、後は国産化することで輸入を減らすことに成功してきた。ドイツにとっては、中国での輸入代替はデメリットになる。こうして、蜜月関係も終焉へ向かうのだ。
(3)「現在、両国関係全般には、微妙な影が差し始めている。ロシアによるウクライナ侵攻は、ドイツ国内の対中批判派をさらに勢いづけている。彼らは、ドイツの対中経済関係が外交目標を圧倒しており、将来、地政学面で敵対すると予想される国を手助けするかたちになっている、と主張している」
ドイツにとって、ウイン・ウインの関係終了と同時に、中国の地政学的なリスクが持ち上がってきた。中国の台湾侵攻は、既定事実化されており、ドイツの中国離れは決定的になってきた。
(4)「ウクライナでの戦争は、中国が台湾に侵攻した場合に中国に科せられる国際的な経済制裁のリスクを浮き彫りにした。米中のデカップリング(分断)によって、多くの企業は中国企業に代わるサプライヤーを探し始めている。ドイツ機械工業連盟(VDMA)が21年に実施した調査では、3分の1強の加盟企業が、デカップリングが原因で取引関係を見直していると答えた。ヘッセンに本拠を置く電子部品メーカー、マグネテック社は中国で13年間工場を操業してきたが、制裁リスクを考慮して2つ目の工場を建設する計画を中止した」
ドイツ機械工業連盟では、3分の1が中国との取引見直しに入っている。手早い対応である。この裏には、中国との取引で利益が出ないという事実もあろう。
(5)「米調査会社ロジウム・グループのノア・バーキン編集長バーキン氏は、中国がドイツ企業にとって「確実な勝ち勝負」だった時代は終わったと語る。「まだ完全撤退しているわけではないが、企業は、地政学的な逆風から事業を守る方法を模索している」と同氏はいう。「なかには中国から去らなければならなくなる時に備えている企業もある」と指摘する」
中国は、台湾侵攻の御旗を高く上げたがゆえに、これを嫌うドイツ企業が脱出の動きを始めている。習氏は、経済的デメリットを自ら生む「オウンゴール」をもたらしている。習氏の近眼が、招いた損失である。


コメント
コメントする