テイカカズラ
   

習近平国家主席から承認を受けた中国の対米「親善チーム」が、米中首脳会談前に米国へ派遣されていたことが分かった。米中関係のさらなる悪化を防ぐ目的である。中国が、米民間グループへ出した条件は、ウクライナ侵攻解決に向けて努力するので、米国が台湾問題に干渉しないことや、半導体規制の解除を示唆したという。

 

中国の要求は、余りにも「自国本位」である。米国側から見れば、台湾を犠牲にしてウクライナ侵攻を解決するという片手落ちの話だ。さらに、半導体規制の解除は米国の安全保障にとって重大なリスクをもたらすもので、とうてい飲める話であるまい。中国には、こういう「バカバカしい」話を平気で持ってくる非常識さがあるのだ。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(11月22日付)は、「中国が頼る裏ルート外交、対米関係の改善図る」と題する記事を掲載した。

 

中国の習近平国家主席は米国との競争激化に備えつつも両国関係の安定化を図ろうとしている。米国とのコミュニケーション強化を狙い、中国がいま頼っているのは米産業界の旧友たちだ。事情に詳しい関係者によると、先週開かれた習主席とジョー・バイデン米大統領の首脳会談の数日前、中国は上級政策顧問や企業幹部から成る代表団をニューヨークに派遣し、同等の地位や職に就いている米側のグループと会談した。このグループは、中国で最も成功した米国人ビジネスマンの1人で、保険会社幹部のモーリス・ハンク・グリーンバーグ氏(97)が設立したものだ。

 

(1)「関係者によると、習主席は10月の共産党大会で3期目入りを果たした直後、中国外務省と連携するシンクタンクが計画した訪米を承認した。一方、米側は国家安全保障会議(NSC)やその他の機関に事前に通知したという。NSCはコメントを控えた。米中両国は少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐよう努める意欲を示している。バイデン大統領と習主席は先週のインドネシアでの首脳会談で、気候変動問題での協力やその他の高官レベルでの接触再開を約束した」

 

中国は、米国との対決を望まないという方針を民間グループに託して米国へ伝えた。

 

(2)「オバマ政権時代に中国政策を担当し、現在はシンクタンクのアジア・ソサエティ政策研究所でバイスプレジデントを務めるダニエル・ラッセル氏は、「習氏は米国との競争激化への準備の一環として、ある程度の安定を求めている」と話す。「どのレベルにおいても両国間のエンゲージメントが不足しているだけに、直接的な対話は何であれ貴重だ」と指摘する」

 

米中間では、いくつかの非公式ルートを持つことが必要である。外交ルートは、「お仕着せ」のものだけに、本音で語れるルートは不可欠だ。これが、偶発的な衝突を防ぐからだ。

 

(3)「中国と米国のグループは11月10、11の両日、双方から13人ずつが出席し、ニューヨークのパーク街にあるC.V.スター本社で話し合いを行った。同会合に参加した元米海軍大将のマイク・マレン氏は、米側グループの他のメンバーと同様に同氏も、米中関係の「悪化の流れ」に懸念を抱いていたと語った。中国側も同じ懸念を共有していたという。マレン氏は、こうした両国共通の懸念について「われわれは危険な時期にある」と指摘。「現在の2つの超大国としてわれわれは、この状況の改善に努める必要がある」と語った」

 

中国は、自分で蒔いた種が大きくなって手に負えなくなっている。米国に譲歩を求めているのだろうが、それはもはや手遅れである。中国が、覇権争いの座から降りることが先決条件である。

 

(4)「会合参加者らによれば、1日半に及んだ会合で両国の代表らは、中国が自国の一部だと主張する民主主義統治の台湾をめぐる米中対立や、協力可能な分野などについて話し合ったという。参加者らによると、米側代表団が台湾海峡の平和維持の必要性を強調したのに対し、中国側代表団は、最終的に台湾を中国本土に統合することの重要性を強く主張したという

 

中国は、香港で「一国二制度」を破棄してしまった。この貴重なルートが失われた今、台湾問題解決の道はない。武力統一は、最も忌避すべき手段であり、西側諸国が受入れるはずがない。

 

(5)「参加者らによれば、中国側は、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮情勢などの地政学的問題について、中国政府が米政府と協力することが望ましいかもしれないとの考えを示唆した。しかし、中国側代表団は、米政府が中国の核心的利益を尊重することが、こうした協力の条件になると考えているようだったとい。中国の核心的利益には、台湾の中国への統一や、中国企業に対するハイテク機器輸出規制の緩和などが含まれる。元外務次官の王超氏(現在は中国人民外交学会会長)率いる中国側代表団は、対話の締めくくりとして、次回会合を中国で来年開くことを提案した」

 

下線部は、中国のエゴ丸出しの要求である。中国が、ウクライナ侵攻を早期段階で止めていれば、世界の中国への視線は変わっていたはず。今頃になって、台湾と半導体の問題と引き替えにして、ウクライナ問題解決を臭わせても効果はないであろう。