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ゼロコロナ対策続行は、習氏の経済軽視の典型的な表れである。計画経済論者の習氏にとって見れば、経済はインフラ投資を増やせば、いかようにも動かせると見ているはずだ。現実は、そのような「上意下達」ではない。個々人の積極性が経済を動かす原点である。その原点が、ゼロコロナですっかり萎縮してしまった。再び、「エンジン」がスムーズにかかる保証はないのだ。

 

『ロイター』(11月22日付)は、「中国経済の全面再開、企業に『手遅れ』になる可能性」と題する記事を掲載した。

 

主要国で唯一、まだ新型コロナウイルスを通常の風土病として扱っていない中国は今月、厳しい感染対策を緩める20項目の措置を発表。これを受けて中国の株式、債券は買い一色となり、人民元は上昇、つられてアジアから欧州、中南米まで幅広い資産が値上がりした。もし本当に来年、中国と世界がつながりを取り戻せば、中国経済は数十年ぶりの急激な減速から立ち直り、それに伴って世界経済も景気後退(リセッション)に陥る事態を免れるかもしれない。

 

(1)「市場の熱狂と裏腹に、中国経済の実態は非常に暗たんとしている。対面サービスを中心とする多くの企業は、そもそも来年まで生き残れないのではないかと戦々恐々の状態にある。政府は依然としてこれまでで最大規模の感染拡大と悪戦苦闘中だし、厳格な規制で生活をかき乱され、すっかり萎縮した消費者は財布のひもを固く結んだままだ。上海でカフェやバー、イベント会社などを所有する米国人起業家カムデン・ハウゲさんは、今年に入って2カ月も家に閉じ込められ、生活必需品を手に入れることさえできかったというつらい経験をした2500万人の市民は、今後規制がどうなろうとも、混雑した繁華街を出歩くのをずっと避け続ける、と予想。人々が以前の生活に戻ることはないと断言した」

 

人混みの中へ出ることが、危険であるという「トラウマ」は、中国社会へ大きな影響を与えるという指摘が出てきた。開放的な中国人が、内に籠る生活を選ぶように習慣づけられると、中国経済は回らなくなる。こういうリスクの存在を認識すべきとしている。

 

(2)「中国の今年の成長率は3%前後と、政府が目標とする約5.5%に届かない見通し。これまでに発表された10月の経済指標は、既に低調だった予想をさらに下回っている。輸出は落ち込み、物価は下振れた上に、銀行の新規融資は急減。不動産市場は一段と冷え込み、小売売上高は上海でロックダウンが実施された4-5月以降で初めて減少した。また新規感染は拡大が続いており、中国経済が近く上向きに転じる公算は乏しい。JPモルガンが今月推計したところでは、新規感染者が10人以上の都市が抱える人口総数は7億8000万人で国内総生産(GDP)の62.2%に達し、9月末から約3倍に跳ね上がった」

 

わずかな人数の感染者で大騒ぎしている構図は、端から見ていて滑稽ですらある。もはや、風土病という認識にならなければ、中国経済は立ちゆかぬ事態に陥ろう。こういう認識がゼロというのも困った政府である。

 

(3)「中国全土でのワクチンの1回目接種や追加接種の比率は引き続き低めで、特に重症化しやすい高齢者層でその傾向があるため、当局は国民の準備が整う前に規制を緩めることには慎重になっている。その結果、新たな感染対策ルールは国内で一律に実行されていない。幾つかの都市では当局が規制を緩めた一方、別の地域では逆に厳しくなった。地方政府によっては、わざわざ当局がルール修正は感染防止態勢を弱めるという意味ではないと説明し、住民を安心させなければならないケースもある」

 

すべてを権力で押し切る中国政府が、ワクチン接種では腰が引けている。副作用が強い結果であろう。ならば、欧米のワクチンを導入すれば済むこと。それも、習氏のメンツを潰すという政治的配慮でできないのだ。この国は、誰のために存在しているのか。習近平氏一人の名誉維持のために、14億の国民が泣かされているのだ。

 

(4)「不安に駆られた家庭の中には自衛策を講じる動きも出てきている。ソーシャルメディアに寄せられた親たちの投稿を見ると、子どもが感染するのを懸念して歯痛や中耳炎などを口実にして学校に行かせないようにしているもようだ。エコノミストは、これらの家庭は当然しばらく外食や買い物には出かけないだろう、と警鐘を鳴らす。ガベカル・ドラゴノミクスのアナリストチームは、新型コロナウイルスの封じ込めを「最適化」するための新たな措置は、各地方政府が独自の解釈を加えていることで、一般市民の間に混乱を生み出していると指摘。これは経済の不透明感につながり、短期的に消費と不動産取引をさらに抑制しそうだと付け加えた」

 

親は、仮病を使って子どもに学校を休ませている。親も、外出しないことになるので、個人消費はスパイラル的な落込みになる。愚かな連鎖が起こっているのだ。

 

(5)「根本的には、当局が消費者の利益を優先する政策を実施していない点に問題がある。例えば中国の交通データを挙げると、第3・四半期の貨物輸送量は陸運、鉄道、水運の合計でコロナ禍前の2019年第3・四半期とほぼ同じ水準になった。ところが陸海空の交通機関の旅客輸送量は19年の半分か3分の1にとどまっており、産業の物流に比べて人々の生活の面ではるかに混乱が大きい様子が読み取れる。これは対面サービス事業にとって望ましい兆候とは言えない

 

物流に比べて、人流は大きく落込んでいる。対面サービス事業は、不振になって当然であろう。ゼロコロナは、歴史に残る愚策である。