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中国共産党は、汚職追放で大キャンペーを張っている。習近平氏は、これによって政権の基礎を固めた。政敵潰しには、賄賂の嫌疑をかければ簡単に相手をワナに落とし込めるからだ。

 

贈収賄は、中国の文化といって良いほど、生活に密着している。西欧では、市場ルールによって経済行為が営まれるが、中国では賄賂がその役目を果たしてきた。つまり、多額の賄賂を贈れるのは、それだけ重要であることを意味してきたのだ。

 

賄賂は、日常経済の潤滑油であった。古来、過剰な賄賂は取り締られたが、日常的な賄賂は「挨拶代わり」として見逃されてきた社会である。習氏は、これを逆手に取って「粛清手段」に使ったのだ。習氏の「生け贄」にされた元政府高官は、獄窓でどのような生活を送っているのか。興味深いニュースを紹介したい。

 

『大紀元』(11月22日付)は、「『党への最後のご奉公』失脚した中国共産党幹部の知られざる獄中生活」と題する記事を掲載した。

 

中国共産党内の権力闘争で失脚し、収監された高官らの獄中生活の実態が明らかになった。国家転覆罪の容疑で拘束され、今年4月に釈放された台湾の人権活動家・李明哲氏はこのほど、米『ラジオ・フリー・アジア』(RFA)の取材で自身の見聞を語った。

 

(1)「李明哲氏は2017年3月、マカオから広東省に入った直後に拘束され、国家転覆罪の容疑で5年間収監された。中国の反体制派の家族と連絡をとっていたことが原因だとされる。同年11月、李氏は湖南省の赤山刑務所に収監され、翌18年に司法部(法務省に相当)直轄の北京・燕城監獄に移送された。同監獄には国務院(内閣に相当)局長クラスの幹部が多数収容されている」

 

反体制派の家族と連絡をとったことで、5年間の刑務所暮らしを余儀なくされた。中国共産党は、いかに反体制派を恐れているかがよく分かる。

 

(2)「燕城監獄で接触した数々の幹部受刑者のなかでも、李氏にとって最も印象深かったのは、中国鉄道部副総技師長の張曙光だった。高速鉄道の開発を主導し、在任中に建設した鉄道は1.8万キロに及ぶ。13年、収賄容疑で執行猶予付きの死刑判決を言い渡され、後に無期懲役に減刑された。獄中の張曙光に「高速鉄道の第一人者」としての面影はなかった。お腹を満たすため、張曙光がインスタントラーメンの空袋にご飯を詰め込み、袖の中に隠して持ち出す様子を何度か目にした。「現職時代に権勢をふるっていた高官でも、刑務所に入ればお腹を満たすことで精一杯なのだ」と李氏は感慨にふける」

 

張曙光事件は当時、大きく取り上げられた。中国鉄道の「ドン」として絶対的な権力を持っていた。張被告は鉄道部運輸局長に在任中の2000~11年にかけて、高速鉄道網の整備事業などに絡んで便宜を図る見返りに、複数の民営企業から合計13回にわたり、総額4755万人民元(当時、約8億2164万円)の賄賂を受け取ったとされる。

 

(3)「李氏によると、司法部直轄の燕城監獄は設備が整っており、最大3人一部屋で強制労働はない。いっぽう、湖南省の赤山刑務所は10平米の部屋に16人が押し込まれ、長時間の労働を課されている。囚人の一部は、中南海(党上層部、中央省庁)の高官のために外国のニュースを翻訳するほか、書籍の校正作業も行っていた。「燕城監獄は中国の他の刑務所より、はるかに待遇が良い。それでも受刑者の一番の関心事は食事だ。少しでも良い物を食べたいと皆が思っている」と李氏は語った」

 

元高官の刑務所での仕事は、翻訳や校正であったという。元エリートとして矜恃は保っていた。

 

(4)「李明哲氏が、初めて元幹部の受刑者らと接触したのは湖南省留置所だった。収監されていた元幹部らは自身の犯した罪を語るとき、みな「投獄されたことは党への最後のご奉公だ」と主張していた。ある幹部はこう語ったという。「共産党は政権を維持するため、市民に汚職撲滅の姿勢を示そうとする。我々はその見せしめになったのだ」。中国共産党幹部にとって、汚職は一種の「掟(おきて)」だと李氏は指摘した。拘束された多くの幹部は「汚職をしなければ無能力人物だとみなされ、職場で干されてしまう」と話していた。みな汚職しているが、自分が逮捕されたのは権力闘争に負けたためだと彼らは考えているという」

 

下線部分は、かなり真実を語っていると見られる。誰でも「叩けば埃が出る」ほど、金品の受領をしてきた。それが、中国古来の文化であるからだ。名刺代わりに現金を渡す。これはつい最近までの慣わしでもあったのである。習氏が、政敵から恨まれているのは、こういう事情があるからだ。

 

日本でも、田中角栄・元首相が来客に「のし袋」(現金入り)を渡していたことは有名な話だ。これによって、利益を得ようという目的でなく、相手に好意を示す意味があったとされている。中国では、利益誘導目的で現金が渡されていたのだ。田中とは意味合いが異なる。