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韓国社会の特色は、「陣営の論理」と言われるごとく、エゴ貫徹主義である。相手の立場とか全体の利益という視点はゼロである。ひたすら、自己の利益実現だけを求めて行動する。24日から韓国「名物」であるストライキが始まる。労働組織率11%だけの「貴族労組」が、全国民の利益侵害へ行動を起すのだ。

 

現在の韓国経済は、近づく大嵐(不況風)を前にして企業倒産続出など緊張している。新規採用もほとんどの企業が抑制しようとしている中で、労組だけが自己の利益に向けてゼネストを打つのだ。

 

『東亜日報』(11月23日付)は、「経済専門家の97%が『危機』…にもかかわらず、相次いでストに突入するという労働界」と題する記事を掲載した。

 

韓国開発研究院(KDI)のアンケートで、絶対多数の韓国国内経済専門家が韓国経済は現在危機に瀕していると答えた。一般国民の認識も同じだった。このように韓国経済の未来に対する心配と低成長に対する懸念が大きくなる状況で、数年間見られなかった労働界の冬闘がまもなく始まる予定だ。今週、民主労総貨物連帯の運送拒否を皮切りに、地下鉄や鉄道、学校非正規職労組のストライキが相次いで予告されている。

 

(1)「KDIが、専門家と一般国民を分けて行った調査で、専門家の97%、一般国民の96%は韓国経済の現状を危機状況と診断した。また、専門家の93%、一般国民の87%は、「危機克服のために、中長期戦略・計画の樹立が必要だ」と答えた。韓国は過去に社会・経済的に高い成果を出したが、今は壁にぶつかっただけに、未来のための成長戦略を用意しなければならないという要求だ」

 

専門家の97%や一般国民の96%は、韓国経済の現状について危機的状況と診断している。そういう中で、敢えてストライキを打つというのだ。労組には、ストライキ権が付与されているが、のべつ幕なしにストを打つのは「権利の濫用」である。韓国国民が、「貴族労組」と批判する理由である。

 

(2)「韓国経済が、低成長の泥沼に深く陥っているという兆候は、すでにあちこちで現れている。輸出は先月から減少傾向が目立っている。一方、高い国際原油価格と原材料価格のため、今年の貿易収支は8ヵ月連続の赤字が確実とみられる。KDIが予測した来年の成長率は1.8%だ。オイルショックや通貨危機、グローバル金融危機の時を除いて経験したことのない低い成長率だ」

 

韓国は、来年のGDP成長率が2%以下と予測されている。雇用不安が高まっている中で、貴族労組は終身雇用と年功序列賃金に守られている。失う物は何もない恵まれた労組が、殿様ストを打つのだ。ストライキによって、大きな迷惑を受ける国民の痛みを考えるべき時だ。

 

(3)「さらに、外部から始まったこれまでの脅威要因とは異なり、押さえつけられていた韓国内の脅威要因が溢れ始めている。貨物連帯は、「貨物業界の最低賃金」と呼ばれる安全運賃制の常設化を要求して、24日から全国の主要事業所を封鎖するという。物流を麻痺させ、膨大な被害を与えてからわずか5ヵ月ぶりのことだ。ソウル交通公社の労組は、30日から地下鉄運行を半分にまで減らす予定だ。不法ストをした場合、企業の損害賠償請求権を制限する黄色い封筒法などの民主労総の要求は、違憲的内容のため経営界と政府は受け入れることもできない

 

ストライキの目的が、違法ストを行なった際の損害賠償請求権を制限するという、労組側の身勝手な要求である。貴族労組のやることに文句を言うなという、要求を掲げたストライキなのだ。どこまで、傍若無人な労組かと驚くほかない。まさに、「陣営の論理」を振りかざしたゼネストである。

 

(4)「今回のグローバル複合危機は、対象を問わず衝撃を与えるのが特徴だ。労働者と自営業者は物価高や金利高に苦しめられているが、大企業は収益性の墜落と資金難に苦しんでいる。どちらか一方が自己主張だけを掲げて激しい闘争を繰り広げるのは、韓国社会が危機を乗り越えるのには役に立たない。今は皆、一歩ずつ退いて苦痛を分かち合わなければならない。政府と政界も政治的利害関係を離れ、極端に突き進む対立の仲裁に積極的に乗り出さなければならない」

 

日本は、1975年に8日間に渡る「国鉄スト」で、日本中の国鉄が止まり大混乱に陥った。これを契機に、労組への国民の支持は急速に衰えたのである。革新野党の政治力が、退潮に向かうきっかけになった。韓国国民の96%が、経済危機と認識している状態で行なう今回のストは、決して労組に有利なものとはなるまい。自重すべきである。