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韓国銀行は、24日に政策金利を0.5%引上げ年3.25%とした。金融不安が増大している中での利上げである。韓国経済は、最も厳しい局面を迎えている。都市銀行の変動型住宅担保貸付金利は年5.70~7.83%で上限が8%台に迫っている。

 

『日本経済新聞 電子版』(1124日付)は、「韓国経済、景気と通貨防衛の板挟み 減速下で高速利上げ」と題する記事を掲載した。

 

韓国経済が景気と通貨防衛の板挟みになっている。経済成長が鈍化するのに、韓国銀行(中央銀行)は24日、政策金利を0.25%引き上げた。米国との金利差拡大で資本流出圧力がくすぶり、ウォン安が加速しかねないからだ。半導体市況の低迷で主力の輸出が振るわず、消費減退も重なって成長のけん引役が見当たらない。

 

(1)「利上げは6会合連続で政策金利を年3.25%にした。2021年8月以降の利上げ幅は累計2.75ポイントに及び、異例の速いペースといえる。問題はこの「高速利上げ」を景気減速下で実施していることだ。韓銀は24日、23年の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを1.%と発表した。22年の成長率見通し2.%からさらに落ち込む。23年の輸出は0.%増で低迷し、消費も2.%増にとどまる見通し。設備投資は3.%減との厳しい見方を示した。24年の成長率は2.%まで回復するとした。民間の見通しはさらに厳しい。韓国大信証券の23年成長率予測は1.%にとどまる」

 

ウォン安がもたらす物価上昇を食止めるには、金利の引上げしか道はない。このため、債券市場では金融不安が起こっているが、敢えてこれに目を瞑っての利上げである。韓国経済の苦衷を示している。

 

(2)「減速の主因は屋台骨である輸出の鈍化だ。24日記者会見した韓銀の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「23年は輸出と投資が想定を下回り、消費回復傾向も鈍化する」と説明した。8月時点の見通し(2.%)から0.4ポイント下方修正したことについて「主要国の成長率低下に伴う輸出低迷が要因の9割を占める」とした。21年の輸出総額の2割を占めた半導体は市況悪化が続き、底打ちの兆しは見えない」

 

韓国の対GDP輸出依存度は、36.14%(2021年)である。主要国では、ドイツの38.25%(同)に次いで高い比率だ。韓国経済は、世界経済の停滞に大きく揺さぶられる特質を持っている。構造的な脆弱性と言ってもいい。

 

(3)「輸出低迷は投資意欲も冷やす。半導体大手のSKハイニックスは23年の設備投資を22年比で50%超減らすと表明した。半導体メーカーの投資抑制が国全体の設備投資の減少につながり、経済成長を押し下げる。資源高・原材料高にウォン安・ドル高が重なり、輸入物価は高水準が続く。足元の貿易収支はアジア通貨危機だった1997年以来、25年ぶりに7カ月連続の赤字だ。貿易赤字がウォン安につながり、ウォン安による輸入物価上昇が赤字拡大を招く悪循環に陥っている。頼みの消費も振るわない。新型コロナウイルスに伴う行動制限は解除されたものの、金利上昇が足かせとなる」

 

韓国の輸出依存度の大きさ→貿易赤字→ウォン安→輸入物価上昇という悪循環構造を作り上げている。国内市場が狭隘ゆえにもたらす構造的な問題である。

 

(4)「韓国は家計負債が大きく、金利上昇が利子負担拡大に直結する。住宅ローンの8割超が変動金利で、9月末時点の平均貸出金利は4.79%1年間で1.78ポイントも上昇した。23年も金利上昇は続きそうで、利払い拡大が可処分所得を減らす構図だ。それでも利上げするのは足元で米国との金利差が拡大しており、ウォン安と資本流出が連鎖する懸念を拭えないからだ。米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げによってウォン相場は10月に対ドルで年初比2割超下落し、1ドル=1444ウォンと13年ぶりの安値をつけた。足元ではややウォン高に戻したが、ウォン安の懸念は消えていない」

 

ウォン安対策で、日本との通貨スワップ協定が今も話題に上がっている。日本は、全く関心を示していない。

 

(5)「韓国北東部に5月オープンした「レゴランド・コリア」が足元の金融不安の発端となった。韓国では思わぬ形で金融不安も表面化した。発端は韓国北東部に5月に開業したテーマパーク「レゴランド・コリア」を巡る債務不履行問題だ。9月に償還期限を迎えた2050億ウォン(約210億円)のレゴランド開発公社のコマーシャルペーパー(CP)を巡り、地元自治体の江原道が支払い保証を撤回する方針を示した。野党系の元知事らの過去の債務保証判断について、与党系の現知事が「不当」と判断したためだ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、金融市場へ50兆ウォン以上の緊急支援金の投入を表明した。それでも市場の動揺は収まらない」

 

「レゴランド・コリア」を巡る債務不履行問題は、完全に政争がらみで始まったもの。現在の江原道知事は、債務保証の打切りが金融不安問題を引き起こすという認識がなかったようだ。その後、発言を取消して保証債務を実行するとしている。韓国の政争は、これほど酷い物である。