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中国の輸出先(2020年)では、日本が3位と上位にある。この日本企業が、中国からの調達(輸入)を見直すとするのが9割にも達した。代わって、日本での調達は5割という高率である。もともと、日本で供給されていたが、コストの関係で中国輸入に切り変えたもの。だが、経済安全保障を考えると、日本からの調達に戻した方が安全ということだ。コスト面でも採算が合うようになってきたのであろう。 

米中デカップリングは、日本企業の調達先変更まで波及している。中国にとっては、輸出3位の日本が「母国回帰」だけに文句の言いようもない。「桐一葉落ちて天下の秋を知る」という心境だろうか。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月1日付)は、「中国調達『下げる』5割、代替先9割日本 100社に聞く」と題する記事を掲載した。 

米中対立の激化などを受けて企業が部品などの調達で中国に頼らないサプライチェーン(供給網)の構築を急ぎ始めた。日本経済新聞の主要製造業100社への調査で、5割の企業が中国比率を下げると回答した。円安もあり代替先として9割が日本を挙げた。台湾有事や「ゼロコロナ」政策で中国リスクが高まっている。供給網の機能不全を回避するため、企業が備えを本格化しつつある。国内の製造業に中国の供給網について11月中旬にアンケートを実施した。79社から回答を得た」 

(1)「中国から部品などを調達するうえで半年前に比べてリスクが高まったと考える企業は78%に達した。世界生産における中国からの調達比率を下げるとした企業は53%あった。業種別では機械が60%、自動車と化学が57%、電機の55%が引き下げると回答した。理由として「台湾有事への懸念」が80%(複数回答)で最多だった。新型コロナウイルスを都市封鎖など通じて封じ込める「ゼロコロナ」政策への懸念も67%の企業が挙げた。OKIは2020年以降、ATMやプリンターの生産を中国からベトナムなどに移した。現在も一部の部品を中国から調達しているが「将来は全て中国以外から調達する」(同社)方針だ」 

日本企業には、「台湾有事への懸念」が80%もあり、これを理由に中国での調達見直しに着手する。機械60%、自動車と化学57%、電機55%が、それぞれ中国調達を引き下げる。パンデミックで日本企業も大きな痛手を経験しているので、「台湾有事」で二の舞いを演じれば、笑い者にされることは疑いない。同情はされないのだ。

 

(2)「中国からの現在の調達比率は「5~20%未満」が最も多く34%を占めた。これが5年後には28%まで低下する。逆に「5%未満」とするのは11ポイント増えて33%まで高まる」 

中国からの調達比率は、5~20%未満が3分の1もある。最低限の「5%未満」も3分の1だ。この程度の依存率であれば、万一の際も穴を埋められるという見通しがあるのだろう。だが、「5%未満」であれば、いっそのこと「ゼロ」にすればよいと思うが、購買は「競わせる」という原則を生かしていると見られる。 

(3)「国連貿易開発会議によると、世界各国の中国からの輸入額の合計は21年で3.3兆ドル(460兆円)ある。日本の場合、輸入額に占める中国比率は26%に達する。内閣府によれば特定の国からの輸入額が5割を超える製品は2627品目あり、うちパソコン用電子部品や繊維など1133品目が中国からの輸入だ。調査でも中国への依存度が8割超の部品などがあると答えた企業は38%あった。座席回りなど自動車の内装部品や、クエン酸など食品の原料が8割を超えている。安定調達に向けた対策として「代替調達先の選定」(43%、複数回答)や「代替部品への設計変更」(32%)を進める企業が多い」 

中国への依存度が、8割超の企業は38%もある。これは、首を中国に預けるようなハイリスク行為であろう。理由はいろいろあるにせよ、国際情勢の急変に備えることが急務だろう。

 

(4)「中国に替わる新たな調達先では86%(複数回答)の企業が日本を挙げた。タイ(76%)などの東南アジアを上回る。円安に加え、賃金の上昇が緩やかなことから海外生産よりも相対的に国内生産の方がコストを抑えられるとみているようだ。DMG森精機は工作機械に使う鋳物部品の調達先を日本に変更した。キリンホールディングスもクエン酸についてタイなどからの購入を含め調達先の分散を検討する。パナソニックは掃除機などの生産の一部を中国から日本に切り替えた。部材の多くも国産にする」 

中国依存体制の是正は、日本の産業構造を守るという意味もある。これまでは、グローバル経済で海外立地が主流であった。それが、一変して経済安全保障という時代だ。中国が原因であり、中国の経済成長分がそれだけ消えることを意味する。

 

(5)「一方、製品の販売など中国での事業活動を今後も拡大するとした企業は30%に達した。「現状維持」も34%あり、縮小するとしたのは6%にとどまった。中国内で売る製品の部品などの調達については中国製を増やすとした企業が26%で、「現状維持」も50%あった。日米欧は、半導体などの重要物資で中国への依存を下げることを急いでいる。企業も台湾有事などが起きれば中国で事業を続けるか選択を迫られる。平時は、中国での事業を伸ばしながら、中国とそれ以外の地域で供給網を分けて整備し、有事に備える動きが鮮明になりつつある」 

中国事業を伸ばすのは、中国国内市場向けであれば当然であろう。ただ、台湾有事で日本が不幸にも中国と交戦する事態となれば、中国に没収されるリスクを計算しておくべきだ。