あじさいのたまご
   

習近平氏は2021年の新年演説で、新型コロナウイルス感染を徹底して封じ込める中国の「ゼロコロナ」政策の成功ぶりを誇らしげに語った。先の党大会でも、ゼロコロナ政策の成果を宣伝したものだ。それも束の間で、国内で感染患者が続出しており、ロックダウンが強化される始末である。 

中国は、これまでコロナも封じ込め、市民の不満も封じ込めと、すべて「臭いものに蓋をする」という便宜的手段で対応してきた。それも、ついに限界に達した。若者が、一斉に街頭へ出た「ゼロコロナ反対」を叫んでいるのだ。21年の新年演説と全く逆の事態が引き起こされている。

 

『日本経済新聞 電子版』(12月2日付)は、「中国『ゼロコロナ』出口、手探り 浮かぶ段階的緩和」と題する記事を掲載した。 

中国政府が新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策の「出口」を模索している。全面解除なら、感染爆発で200万人以上が死亡するとの試算もあるが、長引く行動制限と経済停滞で市民の不満は強い。習近平指導部の威信を傷つけぬよう、段階的な緩和に動くシナリオが指摘されている。 

(1)「11月26日以降に、ロックダウンなどへの不満を示す抗議活動が全国に広がり、一部は習近平国家主席の退陣や政治的自由の拡大まで求めた。抗議活動が政権の安定を揺るがしかねず、習指導部はゼロコロナの軌道修正を探らざるを得ない状況にある。だが、全面解除には国産ワクチンの有効性と接種率の低さという壁が立ちはだかる。世界保健機関(WHO)の専門家らは7月、各ワクチンの有効性を比較した論文を発表した。2回接種した香港の60歳以上の患者で重症・死亡を防ぐのに、米ファイザー・独ビオンテック製の有効性は約89%、中国のシノバック製は約70%と差が出た」

 

ゼロコロナという非科学的な封じ込め策は、中国製ワクチンの効果が、欧米製に比べて劣ることと、医療施設の不足という中国の後進性が招いた事態である。世界の笑い者になったことに気づくべきであろう。英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月29日付)は、「ゼロコロナの失策で、これまで周到につくり上げてきた習氏の知能と力を備えた人物というイメージはもはや維持できないだろう」と辛辣な批判を加えている。 

(2)「中国国家衛生健康委員会によると、ワクチンを2回接種した人は60歳以上で約86%、80歳以上で約66%にとどまり、日米よりも低水準だ。英医療調査会社エアフィニティは11月28日の報告書で「中国がゼロコロナを解除すると130~210万人が死亡するリスクがある」との推計を示した。中国政府も4月、ゼロコロナを緩和した場合に「200万人の死者が出る」との試算値を公表した。習指導部がゼロコロナに固執してきたのは、徹底的な隔離で感染や死亡を抑え込み、プラス成長を維持した初期の成功体験があったためだ。ゼロコロナの是非は習氏個人の威信や政治手腕への評価と直結、柔軟な軌道修正が困難になった」 

中国では、高齢者のワクチン接種率が日米よりも低水準である。これは、農村のお年寄りが「漢方薬」になれきっており、「注射」を嫌うという前時代的な感覚による面が大きい。また、中国製ワクチンの副作用が知れ渡っており、農村では忌避されている。まさに、中国は「身から出た錆」と言える。

 

(3)「目算が狂ったのは感染力の強いオミクロン型の流行だ。感染者数の急増で今春、最大の経済都市上海を約2カ月にわたって封鎖した。いったんは収束したが、10月以降に再拡大し、野村ホールディングス傘下の野村国際(香港)の推計で、68都市の約5億3000万人(11月28日時点)が封鎖や行動制限の対象となっている。中国では失業率が高止まりし、個人消費も冷え込む。国際通貨基金(IMF)は10月、2022年の中国の実質経済成長率の見通しを3.%と下方修正し「下振れリスクが残る」と注記した」 

11月28日現在で、約5億3000万人がゼロコロナで行動制限を受けている。全人口の38%にも及ぶ。これでは、中国経済に大きなダメージを与えて当然である。IMFが今年のGDP成長率に下振れリスクがあると警告するほどだ。中国国家統計局が11月30日に発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.0と、前月の49.2から低下し、7カ月ぶりの低水準となった。世界的な需要低迷や新型コロナウイルス対策の規制が影響したのだ。このように、中国経済は沈滞の底を這っている感じである。

 

(4)「今後の出口戦略について三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、22年末、23年3月末と2段階の緩和を予想する。高齢者のワクチン接種と地方での医療整備を加速しつつ、隔離期間を2段階で短くし、春先にゼロにする流れだ。SMBC日興証券は「政策変更は威信に関わる問題で、目先で劇的な変化が起こると期待すべきではない」と指摘する。ゼロコロナの看板は下ろさずに徐々に緩和を探るとの見方だ。経済停滞が長引けば市民の不満は解消しない。感染爆発で死者の急増を許せば、遺族らの悲しみの矛先は習指導部に向かう。求心力の維持へ難しいかじ取りが続く」 

ゼロコロナを行なわざるを得ない条件が、全く変わっていない中で、「22年末、23年3月末と2段階の緩和を予想する」のは、無責任という感じである。欧米製ワクチンを導入するなどの施策がない限り、さらなる混乱を招くだけであろう。