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ロシアは、30万人の動員令募集を終了したが、いつ再び動員令が出るか分からないことからジョージアへ出国した人たちは帰国しないという。ロシア国内の殺伐とした雰囲気を伝えている話だ。

 

『ロイター』(12月4日付)は、「ジョージア避難のロシア人、動員完了後も帰国急がず」と題する記事を掲載した。

 

ロシアがウクライナ侵攻部隊の増強策として実施した部分動員の完了を発表してから1カ月が経過した。だが、招集から逃れようと隣国ジョージアへと脱出した多くのロシア人男性は、全く帰国を急いでいないという。

 

(1)「ロシアのプーチン大統領は9月21日、ウクライナの一部でのロシア軍撤退を受けて部分動員令を発表。前線へ送られる懸念から、対象年齢にある数万人の男性がジョージアやアルメニア、カザフスタンなどの国へ向かった。ジョージア政府が発表した統計によれば、2022年に11万人以上のロシア人がジョージアへ避難した。こうした動きはジョージアに好景気をもたらす一方、反ロシア感情の強い同国内での反発も招いている」

 

人口370万人のジョージアへ、ロシア人が11万人以上も緊急避難してきた。お陰で、ジョウージア経済は潤っている。ただ、ジョージアでは反ロシア感情が強いので、必ずしも「安住の地」とは言えないが、兵隊に取られる心配はないので、その点で天国である。

 

(2)「ロシアのプーチン大統領やショイグ国防相が招集完了を発表して1カ月が経ったが、避難したロシア人の多くは、すぐに国へ戻ることはないと口をそろえる。「何よりもまず、紛争を終わらせなければならない」と、ゲーム開発者のエミールさん(26)。ロシアから出国するために国境の行列に並び、2日を費やしたという。トビリシで行われた取材に対し、こう訴えた。「男性をはじめ、誰もがリスクに直面している状況だ。私は自分自身の安全を第一に考えている。警察の前を歩いて通り過ぎただけで逮捕される可能性がある国には、もちろん戻りたくない。自由と安心が欲しい」。ロシア政府は動員令そのものは撤回しておらず、事前通告なく追加動員が発令されるのではないかとの憶測も広がっている」

 

ジョージアへ移ってきたロシア人は、職業を持っているので生活に困らない。ロシアへ戻れば、いつ動員令が掛かるかも知れないのだ。先の動員令では、勤務先でそのまま徴兵され、家族が後から探しに来たという例も珍しくない。こういう非人道的な徴兵だけに、「逃げるが勝ち」である。祖国愛とはかけ離れた暴力的な徴兵だ。

 

(3)「モバイルゲーム業界で働くスラバさん(28)は、「何がどうなればロシアに戻りたいと思うか、漠然と考えてはいる。ただ、今は、トビリシにあるアパートを6カ月借りて、営業登録もしている。あと6カ月はここにいるだろう」と語る。「ロシアで何が起きているか、注視するつもりだ。一部のことを除けば、進んで帰国したいとは思っている。ロシアで暮らすことは気に入っているし、ロシアが大好きだから」という」

 

ロシアが大好きなロシア人でも、動員令を逃れてきたケースもある。巷間伝えられる、徴集兵の待遇の悪さを考えれば、逃げ出すのも致し方ない。

 

(4)「人口わずか370万人、ロシアに比べて経済力の弱い国に比較的裕福なロシア人が大勢流入したことで、緊張も生まれている。ジョージアで野党議員を務めるサロメ・サマダシビリ氏は、自身のオフィスにあるウクライナ国旗の前で「事態は収拾できない状態にあるという見方もある」と指摘する」

 

ジョージアへ突然、人口の3%に当るロシア人が移住してきたので摩擦があるのは当然だ。いざこざを起せば、ロシア介入の良いきっかけを与えることになる。それだけに、ジョージア人は、我慢している面もあるのだろう。

 

(5)「ジョージアのアブハジア地方、南オセチア地方は、ロシアを後ろ盾とした分離独立主義者が実効支配している。2008年、ロシアは、両地方がジョージア政府の脅威にさらされているとして、ジョージアの他の地域へも短期間の軍事介入を行った。サマダシビリ氏は、プーチン氏がウクライナ侵攻時と同様、ジョージア国内のロシア人を「保護するため」との口実をジョージアへの侵攻拡大に利用しかねないと懸念を示す。ジョージア人の多くは、国の5分の1がロシアの占領下にあると考えており、抗議活動の際などにはそうした訴えの声も上がる」

 

ジョージア人の反ロシア感情が強いのは、国土の5分の1がロシアに支配されている結果である。ロシアは、他国領でも「ロシア人保護」という名目で侵略するどう猛性を見せている。ウクライナ侵攻と全く同じケースだ。

 

(6)「戦争やロシア国内でのプーチン氏による強権政治に反発してやって来た大勢のロシア人は、こうしたメッセージに共感している。中にはジョージアに定住を決めた人もいる。3月にトビリシに引っ越した起業家のデニス・シェベンコフさんは、「移住を決意したのは、もっと自由を感じるためだ」と話す。シェベンコフさんは6月、トビリシでコーヒーの事業を開始。先月にはロシアのサンクトペテルブルクで元々開いていたコーヒー店を畳んだ。「サンクトペテルブルクにいた警察の態度や、自治体政府や当局がしていたことを思い返すと、全く戻りたいと思わない」と指摘」

 

ジョージアで永住を決めたロシア人もいる。ロシア当局の強圧的姿勢を思い出すだけで、怒りが込み上げるのであろう。日本人には理解できないことかも知れない。