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プーチン大統領は、ウクライナ戦争解決の条件として、米国がロシアの支配地域を「新ロシア領」と認めず、妥協の可能性を妨げているとの立場を示した。ロシアのぺスコフ大統領府報道官が、明らかにしたものである。 

こういう「虫のいい」条件に対して、西側諸国は一斉に非難を浴びせている。だが、プーチン氏にとっては、前述のような条件が受入れられるまで、粘りに粘って戦争を継続することで、西側諸国の「戦争疲れ」を誘い出そうとする意図は明白である。 

ウクライナ東部バムフトの最前線では、ロシア軍兵士の奇妙な動きが頻繁に見られる。「ロシア軍が無計画に攻撃しているように見える。『装備や見た目、行動や動作から判断すると、ロシア兵は単にウクライナ軍の陣地近くへ忍び込み、走り、歩いているだけ。訓練された軍人が近くにいるわけでもなく、(ウクライナ軍への攻撃的)戦術もない』」という。 

こうしたロシア兵の行動は、ウクライナ軍の標的になることで、ウクライナ軍の所在場所を探る目的と見られる。連日、これが繰返されており犠牲者を増やしているのだ。『ロイター』(12月5日付)が伝えた。

 

『ロイター』(12月5日付)は、「プーチン大統領『和平協議に真剣でない』米国務次官」と題する記事を掲載した。 

ヌーランド米国務次官は3日、ロシアのプーチン大統領はウクライナ市民への電力供給を断つことで戦争の野蛮さの度合いを増しており、和平協議について誠実でないとの見方を示した。 

(1)「同次官は、ウクライナへの支持を示すためキーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領らと面会。「誰もが当然、外交を目標としているが、前向きな相手が必要だ」と記者団に述べ、「エネルギー(インフラへの)攻撃であれ、ロシア大統領府の発言や態度全般であれ、プーチン大統領が(外交について)誠実でなく、用意ができていないのは非常に明白だ」とした」 

プーチン氏は、和平について語るようになったが、真に和平を求めるという真剣なものではない。ただ、口先だけの「おしゃべり」に過ぎない。それは、和平交渉に値する内容でないからだ。

 

(2)「バイデン米大統領は12月1日、プーチン大統領がウクライナ戦争の終結に関心を示せば協議する用意があると述べたが、ロシア大統領府は同国が宣言したウクライナ4地域の併合を西側が承認する必要があるとの立場を示した。ヌーランド次官はこれについて、ロシアが和平協議に「いかに真剣でないか」を示していると述べた」 

ロシアは、あたかも「戦勝国のような振る舞い」で和平を口にしている。米国が、ロシアの占領した4州をロシア領と認めれば、和平交渉に応じるという、非現実的な空論を述べているに過ぎないのだ。 

プーチン氏が、このように時間稼ぎの発言をしている裏には、プーチン氏がロシア国内のメディアを支配する数十年来の旧友を持っていることだ。これによって、ロシア国内の言論を抑えられるという自信に裏づけられていると思われる。

 

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(12月5日付)は、「プーチン氏の最強兵器? 陰で支えるメディア王」と題する記事を掲載した。 

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻の決定を後押ししてきた陰の実力者がいる。戦争でロシアの国力を証明できると訴えた富豪ユーリ・コバルチュク氏(71)だ。同氏はプーチン氏とは数十年来の旧友だ。強力な軍事大国であり、米国に対する文化的な対抗軸としてロシアをとらえる点でプーチン氏と共通する。コバルチュク氏を知る複数の関係者が明かした。2月の侵攻開始以降、コバルチュク、プーチン両氏は頻繁に会っているほか、電話やビデオを通じても連絡を取っている。コバルチュク家の友人や元ロシア情報当局者が語った。


(3)「プーチン氏はかねて、信頼する側近らにロシアの重要産業の運営を任せてきた。だが、コバルチュク氏はプーチン氏との個人的な関係の深さや世論誘導で果たす役割という点において、突出した存在だ。財務情報や裁判所文書、元情報当局者や友人らへの取材で分かった。米財務省はコバルチュク氏を制裁対象に指定した2014年、プーチン氏の「お抱え銀行家」と呼んだ。また同氏はロシア屈指のメディア王で、プーチン政権のプロパガンダを拡散することの多いテレビ局や新聞、ソーシャルメディアを多数抱える」 

プーチン氏の盟友コバルチュク氏は、プーチン政権のプロパガンダを拡散することの多いテレビ局や新聞、ソーシャルメディアを多数抱えている。プーチン氏は、この「御用メディア」に援護されて、負け戦も「勝利」のように報道され守られているのだ。

 

(4)「ウクライナでの戦況が悪化すると、コバルチュク氏のメディア帝国は侵攻を絶賛するプロパガンダを大量に投下し、反政府派を弾圧。懸念を強める国民の注意をそらすなど、プーチン政権にとって一段と強力な武器になっている。シンクタンク「ストックホルム自由世界フォーラム」のシニアフェローでエコノミストのアンダース・アスルンド氏は、コバルチュク氏について「プーチン(氏)にとって二つの重要な役割を果たす」と解説する。「彼はカネとメディアを操る人物だ」と指摘する」 

プーチン氏が、ウクライナ侵攻で時間稼ぎできるのは、盟友による「御用メディア」で守られているという自信によるものだろう。ウソ情報にダマされて真実を知らされないロシア国民は、いつ真相を知ることになるのか。