a1320_000159_m
   

大きい中国依存の反動

潜在能力を使い果たす

掠め取る「労働貴族」

 

IMF(国際通貨基金)は、23年の世界経済成長率を2%以下と予測している。3%を割れば「世界不況」とされるのだ。輸出依存度の高い韓国は、来年の自国の経済成長率に大きな影響が出ると覚悟を決めなければならない。

 

韓国の輸出依存度は36.14%(2021年)とドイツに次ぐ高さである。ドイツは、EU(欧州連合)という強力な地盤を持つ。韓国の場合は、多くが新興国向け。この差が大きいのだ。韓国が、世界経済の波に大きく揺さぶられる理由である。

 

困ったことに、韓国の政策金利が3.25%へと引上げられている。米国の利上げに伴う「追随利上げ」だ。米韓の金利差が拡大することで、外貨流出が起こればウォン安を招き、消費者物価にはね返る。こういう悪循環を回避するには、韓国の政策金利引上げが不可避だ。政策金利は、昨年7月の0.5%の低金利から、その引上げ幅は2.75%ポイントにもなった。資金の借入れ側は、金利負担増がきついのだ。

 

来年の韓国経済は、以上のように世界経済成長率の低下と高金利に挟撃されて停滞が予想されている。韓国銀行(中央銀行)は、1.7%を予測しているが、これは楽観的な予測となっている。11月末基準で世界の主要投資銀行が予想した来年の韓国経済の成長見通し平均は1.1%である。銀行別では、バークレイズが1.3%、シティーが1.0%など。ノムラはマイナス1.3%と厳しい予測だ。

 

韓国経済が過去、1%を下回る成長率を記録したのはこれまでに4回ある。

1)2020年 マイナス0.7%(新型コロナウイルスが拡散)

2)2009年 0.8%(金融危機当時)

3)1998年 マイナス5.1%(通貨危機当時)

4)1980年 マイナス1.6%(第2次オイルショック当時)

大きい中国依存の反動

23年の経済成長率は、前記のいずれかと近似したものになるのではと危惧されている。仮に、韓国銀行が予測するように1%台の成長率を実現したとしても、その後は過去のような高目の成長率に戻れる可能性が低くなっている。その要因には、次の2つが上げられる。

 

1)韓国の輸出依存度でトップの中国経済が、これから停滞局面に入る恐れが強まっていることである。習氏が、国家主席3期目に入るとともに、改革開放政策を放棄して、「共同富裕論」という分配政策に重点を置く政策に舵を切ることだ。米中対立の激化もマイナス要因である。

 

2)韓国の高齢化が急ピッチで進んでいる。2025年には「超高齢社会」(65歳以上人口が21%以上を占める)入りである。だが、高齢者対策はゼロ同然である。「反日」には異常な熱を入れたが、肝心の国内対策ではスッポリ抜けていたのだ。歴代政権は、年金問題の解決を避けて先送りした。その咎めが今、噴出しているのである。

 

これら2点は、韓国の抱える構造的な問題として横たわっている。私のコメントを付したい。

 

1)韓国の対中輸出比率は、香港を含めた3割を上回る。輸出市場の3分の1が中国関連であるだけに、習氏の改革開放政策の放棄が、韓国にとっては切実な問題になるのだ。習氏はなぜ、改革開放政策を放棄するのか。これは、習氏個人の事情にある。

 

習氏は、永久国家主席を目指している。ロシアのプーチン大統領と同じ発想法だ。個人の権威を確立するには、政敵の存在が目障りである。習氏は、反対派を抹殺するために民営企業の成長にタガをはめた。すなわち、「資本の無制限な発展を規制する」という大義名分である。資本である民間企業側には、故人となった江沢民元国家主席の一派(上海閥)が結集している。上海閥を叩くには、民営企業の発展を抑制すれば可能になる。これが、改革開放政策を放棄した理由である。

 

習氏は、共産党革命で戦った元老の子弟である。「紅二代」とされているグループだ。中国共産党では、「本家筋」に当る。この本家が、「分家」の上海閥を排除するのは共産党の権力確立から見て「当然」と考えているにちがいない。習氏は、この本家意識によって中国の政策を毛沢東路線に戻そうとしている。習氏の権力掌握は、これによって終身にできるのである。

 

改革開放政策は、毛沢東論理から言えば邪道と見られている。資本の跋扈は許しがたいという感情論でもある。習氏や毛沢東派は、賄賂・汚職が改革開放政策を行なった過程で増殖したと見ている。毛沢東の指揮した革命戦争中は、農民を苦しめないという規律が徹底していた。そういう「清廉」な時代を取り戻すには、改革開放政策を放棄するしかない。この心情が、「共同富裕論」にはあるのだ。

 

習氏は、折りに触れて「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」と漏らしている。経済成長を第一義としていないというポーズである。これが、「本意」と思えない節があるのだ。習氏の在任10年間、不動産バブルを放置したのである。土地売却収入を軍事費拡大に投入してきたと見られる。バブルという「あぶく銭」をたっぷり吸収した後で、「共同富裕論」という大義を持出し、自らの失政を隠そうとしている。私には、こう映るのである。習氏は、政治家に多い便宜主義者(オポチュニスト)なのだ。(つづく)