テイカカズラ
   


ウクライナは、ロシア軍によるミサイルで民間施設を攻撃され、多大の被害を被っている。だが、「やられっぱなし」ではロシア軍を増長させると、ミサイルを発射しているロシア国内の3カ所の空軍基地をドローンで攻撃し「戦果」を上げた。

 

このウクライナの「越境攻撃」は、ロシア軍にもはや安全地帯がなくなったことを知らしめる効果があると指摘されている。ウクライナ軍は、ロシア軍による傍若無人のウクライナ民間施設攻撃へ報復できる可能性を示したことで、ロシア国内に和平を求める声を煽る効果を期待している。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(12月7日付)は、「『ロシアに安全地帯なし』ウクライナが無人機攻撃」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナは今週、国内で作ったドローンを飛ばし、ロシア領内に深く入った3つの軍事基地を攻撃することで、欧米の機材がなくても長距離攻撃ができることを示した。攻撃された基地の1つは首都モスクワから160キロメートルしか離れていなかった。

 

(1)「ロシア政府は攻撃で3人が死亡し、航空機2機が「軽微な損傷」を受けたことを認めた。ウクライナの国防当局者やアナリストは、今回の攻撃は、安全な場所はどこにもないと示すことにより、ロシアの軍事計画を混乱させ、ロシア世論を揺るがすことを目指す新たな戦術の一環だと話している。「攻撃は繰り返し可能だ。我々には距離の限界はなく、まもなくシベリアを含め、ロシア国内のすべての標的に到達できるようになる」。匿名を条件に取材に応じたウクライナ政府の国防顧問は話す。「ウクライナは、こうした類いの空襲から身を守ることがいかに難しいかを知っている。もうすぐロシアにも安全地帯がなくなる」と指摘する」

 

ウクライナ軍は、これまで難攻不落と考えられてきた、戦略的なロシア国内の軍事基地に被害を与えることができた。ロシアも、ウクライナ同様にドローン攻撃から身を守ることの困難性を知ることになったのだ。

 

(2)「ウクライナ軍から攻撃された基地1つは、ウクライナ国境から600キロほど離れたロシア南部サラトフ州のエンゲリス空軍基地で、核兵器を搭載できるロシア軍長距離爆撃機の拠点だ。ウクライナ政府高官によると、同基地はウクライナのインフラを攻撃する巡航ミサイルの発射場所でもある。首都キーウ(キエフ)のシンクタンク「ウクライナ安全保障協力センター」のセルヒー・クザン氏は、「これらの空軍基地では戦略爆撃機が発着している。ウクライナの民間施設を攻撃するためだけでなく、世界全体を脅すためにロシアが使ってきたものだ」と話す」

 

ウクライナの攻撃は、強固なロシア軍のイメージをぶち壊した。戦略爆撃機が発着する施設でさえ、防御が甘かったことを世界に印象づけたのである。

 

(3)「ウクライナ侵攻以来、ウクライナからの砲撃とドローン攻撃に見舞われてきたロシアの国境地域では、今回の攻撃が不安感を強めた。その繰り返しと激しさから、攻撃を「大きな衝撃音」として片付けようとしたロシアの当初の試みは失敗し、戦争の遂行努力のために自分の役目を果たすよう市民に呼びかける説得に代わった。ウクライナ国境に近いロシア西部ベルゴロド州では、当局者がSNS(交流サイト)で対空防衛をよびかけるキャンペーンを立ち上げ、国境沿いに塹壕を掘り、地元の民間人による「防衛隊」を立ち上げた」

 

ウクライナ国境に近いロシア西部ベルゴロド州では、国境沿いに塹壕を掘るなど緊張している。これが、ロシア国内の反戦運動を引き起こせばいいが、現状ではそこまで進んでいない。

 

(4)「国防当局者やアナリストは、ドローン攻撃がもたらす効果でロシアが国内で部隊を分散させることかもしれないと指摘する。「こうした(ウクライナの)攻撃は間違いなく、ロシアに自信を失わせるだろう。ロシア側は軍事資産をどのように割り振り、安全に保管するか考えなければならない」と欧米のある国防当局者は語る。「ロシア人は(国内で)戦略的資産を守る自分たちの能力を疑うようになる」と推測する。ウクライナは、十分な規模でこうした攻撃を繰り返すことで、ロシアの世論を揺さぶり、戦争反対に傾けることも期待している」

 

戦略爆撃機の発着する重要な空港が、ドローンで攻撃されたことはロシアに自信を失わせたと見ている。ロシアは、改めて泥沼に入っていることを自覚したであろう。