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EV(電気自動車)普及では、バッテリー価格の引下げが鍵を握っている。世は、EV信仰で突き進んでいるだけに、バッテリー素材として使われる鉱物の価格が大幅に上昇している。昨年初めと比べてリチウムの価格は10倍に、ニッケル価格も75%も上昇。コバルト価格は2020年の平均価格の2倍以上になっている。

 

トヨタ自動車はこれまで、バッテリー価格の急激な下落は相当先のことと予測してきたが、現実もこうした動きになっている。トヨタは、バッテリー核心原料のリチウムとニッケルの供給が今後5~10年間は円滑でないと予想してきた。1997年からハイブリッド車を量産してきたトヨタは、バッテリーとモーターに関する技術も蓄積し、原料不足による価格上昇の懸念を誰よりも強調している。世界4位のステランティスも5月、2024~25年に電気自動車用バッテリー、27~28年には電気自動車専用原材料がそれぞれ不足すると予想しているほどだ。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(12月6日付)は、「リチウムイオン電池の価格上昇、EV普及にハードル」と題する記事を掲載した。

 

リチウムイオン電池の価格が2022年、ここ10年超で初めて上昇した。原材料価格の急騰が、電気自動車(EV)を大衆市場向け商品にしようとする自動車産業の取り組みを難しくしそうだ。

 

(1)「電池に使われるリチウム、コバルト、ニッケルなどの金属や電池部品の価格上昇により、電池パックの価格は1キロワット時(kWh)あたり151ドル(約2万1000円)まで押し上げられた。1年前から7%の上昇で、値上がりは米調査会社のブルームバーグNEF(BNEF)が年次調査を開始した10年以降で初めてだ。同社は23年には1kWhあたり152ドルに上昇すると予測している。10年は平均1160ドルだった」

 

EVが、ガソリン車と対抗して競争力を持つには、バッテリーで1kWh100ドルを割込むのを前提としている。22年は151ドル、23年は152ドルと値上りが予想されている。この状態では、EV普及は足踏みすると見られる。

 

(2)「自動車産業は、電池パックの価格で1kWあたり100ドルになることがEVとエンジン車が同等の競争力を持つようになる水準と長期的に考えてきた。だが、リチウムの価格は21年初比で10倍に高騰しているほか、ニッケルも75%上昇している。22年のコバルトの価格も20年平均の2倍超になっている。この結果、BNEFの見通しでは1kWhあたり100ドルまで下がる時期を26年までの期間として、以前の予測から2年遅らせた。「自動車メーカーにとって、補助金のない地域での大衆向けEVの製造と販売に悪影響を及ぼす」と指摘した」

 

BNEFは、バッテリーが1kWh当り100ドルまで下がるのは2026年としている。トヨタは、実務経験に基づきずっと以前から厳しい見方をしてきた。ビジネス経験が貴重なのだ。

 

(3)「22年のリチウムイオン電池の需要は603ギガワット時となり、21年の約2倍に増加した。サプライチェーン(供給網)は需要に追いつくのに苦労している。リチウムイオン電池の価格は地域ごとに大きく異なる。中国では1kWhあたり平均127ドルだが、米国ではそれより24%、欧州では33%高い。欧米は市場が発展していないことに伴って生産コストが高いことや、走行距離がより長いニッケルやコバルトを使った電池が好まれることが理由に挙げられる」

 

中国では、1kWhあたり平均127ドルという。国を挙げてEVに取り組んでいるので、バッテリーも量産化が進んでいる。中国のEV普及の裏には、トヨタがEV特許を無料公開したことが寄与している。

 

(4)「BNEFのエネルギー貯蔵担当者、エベリナ・ストイコウ氏によれば、原材料と部品の価格上昇が自動車メーカーに資源確保とコスト削減の対応を迫っている。「電池に使う金属の価格が上昇するなか、大手の電池メーカーや自動車メーカーは採掘・精錬プロジェクトへの直接投資を含め、価格変動に対するより積極的な戦略を立て始めている」と同氏は解説した。電池の原材料となる金属の価格が、いつ落ち着くかは非常に不透明だ。欧米などが中国への依存度低下に取り組むなか、リチウム生産の世界大手は急増する需要に対応するための増産は困難だと警鐘を鳴らしている

 

下線のように、リチウム生産の世界大手は増産が困難としている。この点も、トヨタの予測通りである。リチウム電池に代わる電池として全固体電池の開発が、日本中心に進んでいる。これは、夢の電池で生活環境が一変するとされている。リチウム電池も日本発技術だが、全固体電池も日本発技術である。トヨタが、研究の最先端を走っている。