118
   


半導体は国家支援対象へ

韓国は財政難に阻まれる

台湾と水が開き日本急迫 

韓国半導体は、静かに危険ゾーンへ向かっている。韓国半導体の市場シェアは、世界2位であるものの総合競争力が世界5位で不安定であるからだ。韓国産業研究院(KIET)が、ランキングを付したものである。総合競争力1位以下は、次の順序になっている。米国、台湾、日本、中国、韓国、EU(欧州連合)だ。 

韓国半導体産業は、端的に言えば「加工技術」だけである。半導体設計能力、半導体製造設備、半導体素材など全てが海外依存である。2019年に日本が半導体主要3素材の輸出手続きを強化しただけで、「輸出規制」と誤解し、挙げ句の果てが「反日不買運動」にまで発展した。これこそ、韓国半導体の基盤がいかに脆弱であるかを証明した。

 

韓国半導体の抱える脆弱性を解決するには、韓国政府の支援が最も必要な時代に転換した。世界は、米中対立やロシアのウクライナ侵攻という「きな臭い」時代へ突入し、安全保障を取り巻く状況が大きく変わった。グローバル経済という状況は消えて、経済安全保障が第一に検討される環境なのだ。半導体は、経済安全保障の切り札である。何の躊躇もなく、国家が半導体を後押しする時代へと激変したのである。 

半導体は国家支援対象へ

グローバル経済では、御法度であった産業の国家支援が、現在では堂々と認められ奨励されるという時代へ急変したきっかけは、中国が2015年に作成した「中国製造2025」である。米国トランプ政権(当時)は、この保護政策に強く反対し、グローバル経済の維持を主張した。だが、中国が受入れず産業保護主義を継続するとしたので、米国も対抗上で保護主義へ回帰することになった。 

その後、中国で起こった新型コロナウイルス感染で「都市封鎖」によってサプライチェーンが大混乱し、一つの国へ生産を依存するリスクの大きさを認識させた。ここに、経済安全保障という視点が強調されて、グローバル経済が色あせる結果になった。1991年以降のグローバル経済は、2020年のパンデミックを以て終わったのである。

 

日本が、1990年代まで世界半導体のトップでありながら、前記の国際ランキングで3位に甘んじる結果になった。これは、グローバル経済という認識が先行して、資金面で半導体企業への国家支援が断ち切られた影響によるものだ。高い技術を持ちながら、資金面が続かず泣き泣き国際競争から脱落する事態に陥った。この状況が今や一変して、経済安全保障というベクトルで、国家が支援することが当然という認識に変わってきた。まさに、「コペルニクス的転回」という状況だ。天地がひっくり返るほどの変化である。 

韓国半導体が発展したのは、グローバル経済という「神風」が吹いた結果である。サムスンなど財閥企業は、大株主=経営者主導であるから経営リスクをいくらでも取れる体制にある。日本の経営者は、長期経営でなく数年で交代するので大規模投資を行えなかった。これが、日本半導体をして韓国にその座を譲らざるを得なかった最大理由である。

 

現在は、経済安全保障という「新次元」になった。国家支援によって、安全保障を確かなものにする理念の登場で、状況は180度の転換である。日本政府が、半導体産業支援で手を差し伸べることは、世界共通の現象になったのである。 

韓国は財政難に阻まれる

韓国半導体も、政府が支援体制を組んで当然だが、実は「財政難」という大きな障害によって税制面での優遇措置が微々たる結果になった。今後の半導体産業は、国力の消長を反映する時代になる。その面で、韓国半導体は厳しい局面を迎えた。韓国経済の長期停滞が予想されるからだ。 

韓国国会は12月23日、半導体やバッテリーなど国家先端戦略産業分野で、大企業が設備投資を行なえば、投資額の8%分を税額控除する「Kチップス法」を可決した。税額控除は、所得控除と異なって、納税額から設備投資の8%分を差し引きされるが、他国の例から見ても著しく少額である。 

半導体設備投資は、巨額資金を投入しなければならない典型的な「装置産業」である。好不況の景気循環の大きな波が訪れる特性を持っているだけに、不況時に耐えられる「身軽さ」が求められる。そこで、政府が設備投資に対する税額控除によって、早期の減価償却を行なうメリットを与えるのだ。 

韓国与党は当初、2030年まで大企業の設備投資に対して20%の税額控除を検討していた。一方の野党「共に民主党」は、反企業主義が根強いので10%と半分にしたが、実際に国会で議決されたのは、野党案の10%も下回る8%に値切られたのである。つまり、与野党の提案すら下回る線で決着を見たのは、奇怪な事態と言うほかない。

 

これには、政府の企画財政部(日本の財務省)が、財源難を理由に減税率を8%に値切ってしまったという裏話が報じられている。与党の減免案20%が可決された場合、23年の法人税税収が2兆7000億ウォン(約2827億円)ほど減るという。企画財政部は、これを懸念して「8%」に切下げたとされる。この内情暴露は、韓国メディアが一斉に報じた。

(つづく) 

次の記事もご参考に。

2022-12-15

メルマガ421号 韓国「低い変革能力」、これから迎える経済厳冬期を超えられるか「大

2022-12-08

メルマガ419号 韓国「ふらつく財閥」、高い輸出依存度が仇 25年に超高齢社会「備