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ウクライナは、IT関連の請負産業が盛んで、ハッカーも多いとされるお国柄だ。この「特技」を生かしたウクライナ軍は、圧倒的な物量作戦のロシア軍に対して、IT活用の「小技」を繰り出して勝利を収めている。米軍特殊部隊も舌を巻く力量とされる。このウクライナ軍のデジタル化戦術を研究して今後の戦術に生かす計画だ。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(1月3日付)は、「ウ軍の善戦支えるデジタル化、西側の手本に」と題する記事を掲載した。

 

ウクライナはロシアとの戦いで、米国防総省が巨額の資金と数十年の歳月を費やして目指している戦略を、わずかな予算で実現している。兵士と情報・兵器をネットでつなぐ戦力のデジタル化だ。

 

(1)「ウクライナ軍は通信衛星やソフトウエア経由でドローンや兵士、兵器を結ぶことで、当初の兵力で圧倒的に勝っていたロシア軍を相手に、戦況を有利に運ぶだけの機密や連携、精密さを確保してきた。市販品を中心に構築されたウクライナの雑多なシステムはなお、米軍の巨大かつ極めて野心的なデジタル化の取り組みの足元にも及ばない。米軍が進めるデジタル化は技術の発展とともに拡大し、「ネットワーク中心の戦い」とも呼ばれている。米国防総省が目指すのは、ウクライナの目標をはるかに超えたネットワークの規模、セキュリティーと性能だ

 

ロシア侵攻以来10ヶ月で、ウクライナ軍は簡便方式でドローン戦術を有効に行なう方式を編み出した。塹壕にこもるロシア兵をめがけて、ドローンから小型爆弾を投下する映像も公開されているなど自信を持っている。

 

(2)「それでも、米国や同盟国のデジタル化戦略に詳しい関係者は、ウクライナが即席で仮想の指揮管理系統を構築できたことは、とりわけ国防以外の専門家を含めて実験する必要性など、貴重な教訓を西側に提供すると話している。「学ぶべきはイノベーション(技術革新)を起こす必要があるという点だが、われわれはそれができていない」。軍のデジタル化に詳しい英軍の退役中佐、グレン・グラント氏はこう指摘する。西側の軍の「遅々として小回りの利かない」官僚体質では、戦場での問題に対して新たな技術を迅速に投入できないという」

軍事支援する西側は、ウクライナ軍が即席による仮想の指揮管理系統を構築できたことに驚きを見せている。「必要は発明の母」とされるが、ロシア軍の攻撃の前に、ウクライナ軍が自衛手段で編み出した苦肉のソフトだ。

 

(3)「これに対し、IT(情報技術)に精通するウクライナの世代は、デジタル時代に見合ったゲリラ戦のスキルを磨いた。反乱軍は常に、竹やりから手りゅう弾まで、身の回りのものを使って簡易兵器を生み出してきた。IT関連の請負産業が盛んで、法の目をかいくぐって暗躍するハッカーが多いウクライナでは、勢力に加わった人にソフトウエアエンジニアが多い。彼らは暗号化技術を使った対話アプリ「シグナル」やイーロン・マスク氏が率いるスペースXといったデジタルサービスを駆使してロシアとの戦いを支えており、携帯アプリや3D(3次元)プリンター、一般向けのドローンが武器になっている

 

下線部分は、情報最新技術を駆使しての戦い方を示している。米軍特殊部隊が、研究対処にしているのは、この分野かも知れない。

 

(4)「ウクライナのデジタル変革(DX)相を務めるミハイロ・フェドロフ氏は先頃、ツイッターで「敵は本格的な(テクノロジー)戦争に20年も備えてきた。われわれは10カ月で技術的な飛躍を遂げた」と述べている。ウクライナ軍では、遠隔操作で敵の拠点に手りゅう弾を落下できるよう、市販のドローンを改造。義勇兵は法人向けリソース管理ソフトウエアを構築した民間での経験を前線に応用している。あるウクライナの企業は、重機関銃やその他の貨物を搭載できる遠隔操作の電気自動車(EV)を開発中だ。事情を知る筋によると、米特殊作戦軍関連の「Sofwerx」などを中心にした拠点で、ウクライナの事例を分析する作業が行われる見通しだ」

 

下線部の「自動装甲車」が完成すれば、前線突破で威力を発揮するだろう。米特殊部隊がウクライナ部隊のIT戦術を研究して、米軍に取り入れるのであろう。

 

(5)「ウクライナのプログラマーらは、ドローンやロシア占領地のスポッター(観測手)から受け取ったリアルタイムの機密を現地の司令官に送信する「デルタ」と呼ばれるシステムの更新に当たっている。ウクライナ軍の旅団内で新たな軍事技術の開発を担う部隊を率いるロマン・ペリモフ氏は「これはつながる戦争と呼ばれる。実戦での経験があることを踏まえると、ウクライナ軍が最先端を行くことになるだろう」と述べる。同氏のチームは自家製のドローン妨害装置を製造しているほか、前線の兵士を常時ネットに接続させるための安価な高容量電池を量産している」

 

前線の兵士が常時、ネットに接続して敵の情報などを入手できれば、人命犠牲もそれだけ減らせる。この面で、ウクライナ軍が最先端を行くと、言われるのは当然かも知れない。