a0070_000030_m
   

米国投資家は、インフレピークを待ち望んでいる。少しでもその兆候が見えると、直ぐに買いを入れて市場の反応を見ている。だが、この期待は直ぐに実現しそうもないと、IMF(国際通貨基金)の幹部が見通しを語った。

 

世界が低物価基調に転じたのは、中国が2001年にWTO(世界貿易機関)へ加盟して、グローバル経済が始まってからだ。それから約20年間、中国の低賃金による生産物が世界中へ輸出され、「低物価基調」をつくり出した。現在は、中国の軍事的台頭による国際情勢急変によって、「脱グローバル時代」へと逆戻りである。サプライチェーンの再編成によって、「脱中国」への動きが鮮明になっている。こうして、低物価時代は終わったと見るべきだろう。

 

英紙『フィナンシャル・タイムズ』(1月5日付)は、「米国インフレ『ピークアウトはまだ先』 IMF幹部」と題する記事を掲載した。

 

国際通貨基金(IMF)の幹部が米国のインフレは「まだ最悪期を脱していない」として、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ退治で勝利宣言するのは時期尚早だと発言した。

 

(1)「IMFのゴピナート筆頭副専務理事 が『フィナンシャル・タイムズ』(FT)のインタビューで語った。FRBが史上最も積極的とも言える引き締め策を進めた結果、総合インフレ率は低下傾向にあるが、IMFのナンバーツーである同氏はFRBに2023年も利上げを推進するよう求めた。同氏は「労働市場の指標や、サービス部門のインフレなどの非常に粘着性の高いインフレ要素を見る限り、まだインフレの最悪期を脱していないことは明らかだろう」と述べ、IMFがFRBにアドバイスするとすれば「やり抜くことだ」と語った」

 

IMFは、FRBに対して23年も利上げを推進すべきとしている。これは、IMFとFRBが完全に意見の一致を見ているほど、インフレ基調が強いことだ。世界最古の経済誌である英誌『エコノミスト』(12月10号)は、これから世界的な高金利時代へ入ると警告している。同誌としては珍しく投資方針を示し、値上がり益よりも利回り重視という「古い投資法」への回帰を強調しているほど。時代は、大きく変わろうとしているのだ。

 

(2)「同氏がこう発言したのは、欧米諸国などでインフレがピークアウトした可能性を示唆する指標が相次ぐなかだった。エネルギー価格は直近の高値から下がり、家電製品や中古車などのモノの価格は下落に転じている。ゴピナート氏が懸念しているのは主として、米国労働市場が底堅さを維持していることだ。直近のデータによると、22年は雇用者数が毎月平均40万人前後増えた。失業率は今も過去最低近辺で推移し、FRBのインフレ目標である2%達成が遠のくほど賃金水準が深刻な人手不足によって押し上げられている。FRBにとって「重要」なのは、「きわめて明確で持続的なインフレ低下」が食品・エネルギー以外の分野や賃金でも鮮明になるまで「引き締め的な金融政策を維持する」ことだとゴピナート氏は言う」

 

下線部のように、米国は利上げにも関わらず労働市場が堅調である。12月の失業率は3.5%で完全雇用状態だ。米国経済の復活の証でもあろう。「脱グローバル」時代への回帰で、米国企業が海外生産から国内生産へ戻るほか、外資系が米国へ立地してきた結果だ。米国にとっては、「うれしい悲鳴」である。その反面、中国は大事な外資系企業を「脱中国」で失っている。

 

(3)「一部エコノミストや左派の政治家の間では、利上げがすでに行き過ぎたのではないかという不安が広がっているが、ゴピナート氏は引き締め過ぎと主張するのは「難しい」と述べた。同氏はFRBが政策金利の誘導目標を5%前後まで引き上げ、23年いっぱいはその水準を維持することを支持した。1月4日に公表された12月のFOMC議事要旨では、米経済が引き締めインフレを鎮圧するために手綱を緩めるべきではないとの見解が示された。インフレは制御されていると政策当局が確信するには、インフレ圧力の緩和を示す「証拠をもっと大量に」確認することが必要だと議事要旨にはある」

 

米国は23年一杯、政策金利を5%前後まで引上げるとしている。インフレ抑圧には悲観的な見方が増えているのだ。ウクライナ侵攻も、ロシアの出方いかんで長期化のリスクを抱えている。インフレが簡単に下火になりにくい多くの要因がある。脱グローバル下でのインフレ抑制である以上、20年前の古典的金融政策へ戻ることを覚悟すべきかも知れない。

 

(4)「IMFは1月、最新の世界経済見通しを公表する。ゴピナート氏は見通しの(下方)修正についてコメントするのは時期尚早としたうえで、米経済が23年に景気後退を免れる道は「極めて狭くなっている」と述べた」

 

1月下旬、スイス・ローザンヌでの世界的な会合の席で、IMFは23年の世界経済見通しを発表予定である。これまでは2%台を予測してきたが、2%割れというショッキングな数字になりそうだ。3%割れは、世界経済の不況ラインである。それが2%割れとなれば、さらに深刻化する。脱グローバル化時代において、「米国一強」を予想させる構図になってきた。